なんかのタグでツイッターで書いた140文字制限のお話なんですが、140文字じゃ全然語り切れないんで、ここで語りつくしてやろうっていうやつ。
キリスト教では洗礼の日にロケットペンダントをもらったりするそうです。ロケットペンダントでぐぐったときに偶然知ったんですけどね。本来はどういった意図をもってロケットペンダントを送っているのかは全く調べてないので知りませんが、そこだけパクッて勝手にフレバンスの教会でも同じように洗礼の日にロケットペンダントをもらっているって設定です。
ちなみに洗礼ってのは入信の日に行われるなんかの儀式?っぽいです!
「一日に一度だけでもかまいません。誰かのために祈りなさい。愛する大切な人が健やかでいられますように、と。その願いはきっと神に届きます。あなたがそう祈り続ければ、きっと」
洗礼の日に、シスターはそう言って銀色のペンダントを渡した。
ロケットペンダント。チャーム部分を開くことができ、そこに小さなものを入れられるようになっているペンダントだ。
シスターは言った。大切な人の写真をそこに入れなさい。教会に行けない日には、それを両手で包み祈りなさい、と。
友達のほとんどが、そこに家族の写真を入れた。他国では映像電伝虫が普及していないことから写真を手にしているものはそういないだろう。だが、裕福なフレバンス国では映像電伝虫を持つ者が写真撮影を職業として店を構えており、国民はそこで家族写真を撮るのが当たり前になっていた。
ラミと、父様と母様が、正装をして笑顔を向ける写真。おれだけがどこか気恥ずかしくて、そっぽを向いている。そんなおれを、その笑顔の輪に入れるように、母様はそっと肩に手を置いて、ラミは腕を掴み、父様は頭にポン、と手を置いている。
チャームに入れられるように、と小さく現像されたそれを眺めた回数は少ない。やはり自分の映る写真を見るのは気恥ずかしかった。ただ、シスターに言われる通り、チャームの中に大切にしまい、それを両手で包んで目を瞑り、明日もみんなが健やかでいられることを祈った。
って感じで、神様を本気で信じてるってわけでもないんだけど、シスターの教えを素直に受けてるロー君がいたりしたんじゃないかなーっていうお話。
私は無宗教ですが、キリスト教のお友達が、寝る前だかにお友達だか大切な人だかの為に毎日祈るんだよ~とか言ってたことがあって、それはそれで何か優しくて素敵だなぁ~と思ったりなんかしたこともあったなぁっていう体感がちらっと入ってたり。仏教でもさ、お坊さんがね、自分以外の誰かのためのことを思いやることは自分の心を穏やかにしてくれるんだよ~って教えがあって、は~~なるほどな~ちょとわかるかも~って感銘受けたりもしたことがあったりなんかしたり。宗教って胡散臭いイメージがちょっと入るんですが、まぁどこぞの勧誘の仕方が悪いのであって、宗教そのものは割とちょっといい教えがあったりして面白いですよね。
閑話休題。
まぁ、そんなピュアピュアなロー君がいたわけなんですが、フレバンスは戦争で悲惨なことになっちゃうわけです。
で、死体の山に隠れて国境を抜け出た日にね、死体の山掻い潜った拍子に、いつも首にかけて服の下に隠していたロケットペンダントが落ちるわけですよ。
息を殺し、音を殺し、そっと地面に足をつける。
ずっと人の肉を踏む感触に苛まれていた足の裏が、確かな地面を踏んだ。でも、だからといって、この地獄のような世界は変わらず続いていると感じた。
臭い。血の匂いが酷い。腐臭がする。火薬の匂いもする。人の焼けた匂いもする。焼けた死体にも触れた。銃殺された死体がほとんどだった。カサカサになった皮膚が肌に触れた。変色した皮膚の上に手をついてよじ登った。光を宿さない目玉のすぐ隣で息を殺していた。
そこから抜け出したって、やはりこの世界は地獄に変わりなかった。
地面も、建物も、草木も、全て同じに見えた。黒く固まった血に塗れ、変色しておぞましい様相となった皮膚が張り付いているような、そんな汚らしい世界にしか見えない。
この世界は、みんなの死の上に存在する。
憎悪が胸を焦がす。
こんな世界、ぶっ壊してやる。
あと何日生きられるかわからない。だが、生き残ったこの命で、可能な限り、この世界を壊してやる。
一歩、足を踏み出す。
その時、カツン、とすぐ後ろで音が鳴った。
少しだけ、襟首を引かれるような不思議な感覚がした。
後ろを振り向き、遅れて気づく。
死体の山に引かれるように、ロケットペンダントが引っかかって落ちたのだ。先の感覚も、それが原因だろう。
地面に落ちた銀色の丸いチャームは、汚れたこの世界の中でただ一つ清らかに見えた。
一瞬、魅入られるようにそれを見ていた。
しかし、ぎり、と歯を食いしばる。
それの無力さを、無意味さを、身に染みて体験してきたばかりだ。
どれだけ祈っても、毎日両手で必死に包んでも、そんなことで、何も守れやしない。銃弾はそんなことでは防げない。世の中には希望の欠片も見いだせない腐った人間が存在する。
この世界に、祈れば叶えてくれる神様なんていない。
銀色のチャームの中に入っているのは、ただの写真。本当に守りたかったものは皆、死んでいなくなってしまった。ただ空しく虚ろな幻影だけが信仰に包まれ残っている。
くだらない。あまりに、くだらない。
優しく穏やかなシスターの声が蘇る。敵である兵士の甘言を本気で信じ、子供たちのことを思って涙を流して喜び、そして子供たちとともに殺された。
全て、無意味だ。こんなもの、全て。
ローは、ロケットペンダントを拾わなかった。
っていうね。すべて燃やし尽くされちゃって、唯一持ち出せたかもしれない家族との思い出である写真の入ってるペンダントなんですが、宗教色が濃かったのと、当時ショックすぎたのもあって、あえて見捨ててしまったっていう過去があったりしたら喉が締め付けられるような苦しさを感じてとっても萌えます(SなのかMなのか)
で、時は流れて26歳ロー君。
時の流れはあまりに無情で、ふと気づいたとき、父様や母様、ラミの顔を鮮明に思い出せなくなっている自分に気づくわけです。
人間はそういう生き物だとわかっているけれど、やっぱ悲しくて。そんなときね。あの時見捨ててきたロケットペンダントの存在を思い出すわけです。
あの中には家族の写真が入っている。
あのペンダントのチャームを開けば、懐かしい家族の笑顔を再び確かな形として目にすることができる。
だというのに、自分はそれを無意味なものとして見捨ててきてしまったのだと、後悔している。そういうお話だったわけです。
しかし、そこを我らが太陽、モンキー・D・ルフィぱいせんが、今から拾いに行きゃいいじゃねぇかって言う。そういうお話だったってわけですね。はい、140文字でここまで読めた人いたら結婚してください。
その後ノースブルーへ向かった海賊同盟はルフィぱいせんのハイパー幸運力によって無事ロケットペンダント見つけ出しますから。さすがだぜルフィぱいせん!
ロー君にはすごい息をのみながら、一瞬手を震わせて、そっとロケットペンダントを開けてほしいなぁ。
開かれたそこに、消えかけていた家族の記憶が、確かにちゃんと残ってて、ぶわって一気に戻ってきて、ぽろって涙を一つ流してほしいなぁ。
「……麦わら屋」
「ん?」
「お前は、神を信じているか」
「神? 神様ってやつか?」
「あぁ」
「神様なら、おれぶん殴ってきたぞ。空島で」
「……なんだそりゃ」
くく、と少し力なくローは笑う。
「トラ男は信じてるのか?」
「いや」
でも、と……ローはロケットペンダントをそっと両手で包んだ。
「教会の教えは、嫌いじゃなくなった」
っていう感じのオチで。
やっぱさ、ずっと自分が愛し生活してきた環境の中にあった教えをさ、全否定するって悲しいことというか、故郷とその仲間たちの生き方全否定するような形になっちゃうのは、すごく悲しいことで。前にもなんかツイッターで語った気がするんですけど、ロー君ってほんと人生180度変わっちゃったから、フレバンスに居たころとの乖離が激しくて、それがすごく切ないなーって思うんですよね。
でも、これを機にね。神様はいないことを知っているけれど、シスターの教えは、まんざら全てくだらないことなんかじゃなくて、やっぱり素敵な教えだったなって肯定して、受け入れることができたりなんかしたら、ちょっとなんか、よくありませ~~~~~~ん????
って感じのことを妄想したりして悦に浸ってました。チャンチャンッ!
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