ショートストーリーにも満たないというかストーリーにならないただの妄想吐き。イタチの真相聞いて無気力状態のサスケをそのまま里に連れ戻してみる計画。
気づけばあの場所に戻っていた。崩壊し形を成さず瓦礫のみが転がる中、うちはの家紋が丸々残った大きな壁が崩れたこの場所に。イタチが死んだ場所に。
あれからどれくらい時間が過ぎたのかはわからない。今も雨が降り続けていた。血は全て雨に流されたようだ。
うちはの家紋にそっと手を触れる。優しく触れていたが不意に破壊したくなった。イタチの最後の言葉とあの笑顔が雨の音すらかき消すようにフラッシュバックしてくる。
胸の中を掻き毟られるような激情は、あまりにも激しすぎて脳を混乱させ行動にまで至れない。ただこの胸の気持ち悪さを残して立ち尽くすことしかできなかった。やがて何も考えられなくなって、雨の音だけが耳につくようになった。
「……おい、ナルト。いい加減そんな辛気臭ぇ顔してんじゃねぇよ」
キバが声をかけてくる。答える気にはとてもなれなかった。
あいつ今頃どうしてるんだ。やばいかもって言ってた。大丈夫なのか。きっと暁のやつ等に連れて行かれたんだ。何のために、何処へ
暁に連れ去られたサスケの行方が、そして何よりもイタチを殺したサスケが今どうしているのかが気になる。苦しんでいないだろうか。あいつは確かに言ったんだ。繋がりがあるからこそ苦しいと、それを失うのが辛いのだと。
「サスケ…」
「…はぁ、だめだこりゃ」
雨は今も止まない。あの場所からそう遠くない宿にて今は体を休めている。サスケがすでに連れて行かれたのをわかっても、諦めきれずに探し回った。雨のせいかキバの鼻を持ってしても探し出すことは適わなかった。今のサスケを一人にしたくないのに。誰でもない俺の隣におきたいのに。
あれから丸一日程経っている。窓の外を見る。灰色の空と森林が広がっている。ここからではあの場所は見えない。
何故か、胸が騒いだ。あのうちはの家紋だけが残った場に、雨に打たれて俯くサスケの背が見えた。自分が諦め切れていないだけなのだろうが、確かめずにはいられなくなった。
「おい、ナルト?」
そのまま窓から飛び出した。キバが額に手を当て軽く首を横に振ったのが見えた。
顔面に大きな雨の粒がぶつかってくる。真っ直ぐ、あの場所を目指して木々の間を跳んだ。
マジかよ…!
やがて感じる懐かしくも虚ろな気配。驚きと喜び、半信半疑のままその場に降り立った。
想像したものとかけ離れず、そいつは雨に打たれてびしょぬれのままその場に立ち尽くしていた。
幻術にでもかかっているのではないだろうかと自分を疑った。それくらい今のサスケはすぐに消えてしまいそうなほど儚く見えた。
「……サスケ」
声をかければ、気配に鋭そうなあのサスケがピクッと今気づき驚いたかのように体を一瞬震わせる。やがてゆっくりとこちらを振り返った。真っ黒な瞳が俺を見た。いつも強い炎のような意思を宿していた瞳が酷く虚ろだった。無理に捕まえれば壊れてしまいそうで、俺はそっと手を指し伸ばすことしかできなかった。
「サスケ、帰ろう」
黒い瞳がゆっくりと伸ばした俺の手へと焦点を変え、再び俺の瞳を見る。やがてその瞳から僅かに残っていたように思えた炎が完全に消え、コクンと頷いた。その表情の変化が気がかりだったが、俺はサスケが頷いてくれた事実に歓喜し、一歩踏み出す。
同時に、サスケの体がゆらりと傾き崩れていった。慌てて抱きとめる。よく見れば体中に包帯を巻かれている。チャクラもまだ回復していない。衰弱している。どれだけ長く此処にいたのかは知らないが、雨に打たれた体は冷たい。サスケを背負い、宿に向かって走り出す。これから先のことなんて考えられず、今はただサスケが自分の元に戻ってきたのだとこの重みをかみ締めた。
このままカカシ達がいないどっかのラブホに泊まるのもありだと思います。今ならきっとやれるぜ!ナルト!!
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