【TOD2】首都ダリルシェイド – 1 –

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どうも!お久しぶりです。
ごめんなさい。ゲームが楽しすぎてもぐりこんでました。
まだまだ続くと思います。TOXジャナイヨ!

とりあえず広告は醜いので拍手で頂いた首都ダリをUPろうかと考えたんですが、書き直しはやっぱりしんどいですね!ってことで書き直しすらブログに途中経過をぶちまけることにしましたっははー!



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どさっ
もう何度と経験した時間移動。
天地戦争時代でのバルバトスの言葉から彼を追う為、カイル達は四本の剣が刺さった神の眼の前――18年前の神の眼の騒乱最終決戦の場へと向った。

………はずだった。

時空の移動が終わり、この世界の地へと放り投げられる。
衝撃から倒れる者、膝を突く者はいても、もう気を失う者はいなかった。
そんな中、座り込んでいたリアラが辺りを見回し、唖然と一言呟いたのだ。

「………あ、間違えちゃった」
「え、えぇぇええっ!?」

リアラの言葉に倒れこんでいたカイルが飛び起き、辺りを見回す。
彼らが踏んでいる地は石畳が敷き詰められており、辺りには草木に花壇、そして大きな屋敷があった。その奥にもずらりと建物が並んでいる。
どう見ても街中だ。外殻の上ということはまずないだろう。と、いうか空は青く晴れ渡っている。外郭自体が存在していない。

「ん~なぁに~?ここ」

ハロルドが首を傾げながら周りをきょろきょろと見る。
その隣でロニが唖然と呟いた。

「ダリルシェイド……?」

その言葉にカイルとリアラが驚き、ロニへと眼を向ける。
二人は現代の崩壊したダリルシェイドしか知らない為、この賑やかな街がダリルシェイドだと聞き驚いたのだ。元は首都だということを知っているのだが、やはりあの荒れ果てたダリルシェイドを見ている以上驚きは隠せない。
そんな中、はぁ、と仮面の少年からため息が漏れる。

「………ダリルシェイドはまだしも、何故此処に出るんだ……」
「……えっと、どうしたの?ジューダス」

驚愕により硬直していたカイルは少しの間をおいてジューダスの言葉に反応する。
だが、カイルの質問に対して答えは返らず、代わりに細い腕がカイルの頭へと伸ばされた。

「伏せろ」

そのままカイルはジューダスに頭を地面へと押しつけられる
有無を言わさぬ彼の言葉には強い警戒が込められており、他の仲間も体を伏せる。
ジューダスが視線を向ける目の前に丁度綺麗に切り揃えられた小さな木があり、伏せてようやくカイル達の体が見えなくなった。草の間をじっと見つめていれば、木の葉の間から覗く色が変わっていく。誰かが走って通り過ぎたのだ。
やがてそれは止まり、同時に話し声が聞こえ始めた。

「あれ?……あの子………」

カイル達の目の前にある木から、突如現れた人物まで20メートル程距離があることから、小さくカイルは声を出す。
それでも咎めるようにジューダスはカイルを睨みつけた。
カイルは思わず口に手を当て、草の向こうとジューダスと視線交互の移す。その視線が鬱陶しいのか、ジューダスは仕方なく口を開いた。

「………何だ」
「いや、でも……だって、似てる」

そう言ってカイルはまた木の間から見える人物へと目を向けた。
丁度カイルが覗く葉の隙間からその人物の顔が見えるのだ。
横顔でも恐ろしい程に綺麗な顔。一見少女か少年なのか見分けが付かない。何とか届く声で彼が少年だということがわかった。綺麗な黒髪、そして深い紫紺の瞳をした人物。
ジューダスが仮面をしていようとも、カイルにはわかる。少々あちらの少年の方が幼いように見えるが、そっくりなのだ。あの少年とジューダスは

ジューダスは再びため息を吐いた。

「僕だからな」
「え!やっぱり?……じゃあ、此処って」
「二十年程前のダリルシェイドだろう。ちなみに此処はヒューゴ邸だ」

カイルは口に手を当てたまま目を大きく開き、再び二歳若いジューダスを見た。他の仲間たちも興味津々に見つめている姿に、ジューダスは居心地が悪そうだ。

若いジューダスことリオンは、誰かと会話をしているようだった。
木の葉の間から見える視界は狭く、彼が誰と会話しているのかカイルからは見えない。それでなくともリオンが少し動くだけで彼の顔すら見えなくなる。
それを必死になって覗きこんでいたカイルが、びくんと僅かに跳ね上がる。
一度見失った少年の顔が再び現れたとき、彼は笑っていた。

カイル達も長い付き合いから、ここ最近ジューダスが静かに笑んでいるのを稀に見ることができるようになった。今までの彼と彼の性格を知っているからこそ、少しでも心を許してくれているのだとわかる貴重な笑み。よく目を凝らしてでないと気づけないような小さな笑みも、カイルにとっては飛び上がる程嬉しいものだった。
だが、今リオンが浮かべているのは、それとは比べ物にならないものだった。心の底から信頼しているからこそ浮かべられるその笑みは、柔らかく温かい。

多大な苦労を要し、ようやく頂に達したと喜んでいたらまだ三倍の道のりがあった。そんなことに気づけば誰だって落ち込むだろう。カイルは涙声になりながら小さく彼の名を呼んだ。

「ジューダス」
「何だ」

そんなカイルの心境など知らずそっぽ向いて答えるジューダス。返事がぶっきらぼうなのは他人に見せぬ己の姿を仲間たちに見られているからに違いない。
だが、今のカイルにとってそんなことはどうだって良かった。カイルは突如ジューダスへと縋り付き、ぐらぐらとジューダスの体を揺すり始めた。

「何でっ……俺たちには笑ってくれないのにぃいい!!!」
「な、なんだ!?おい、静かにっ」

不意を付かれたジューダスは目を白黒されながらカイルを宥め様と焦る。
多少距離を置いていようが、気配に敏感なジューダスが草の向こう側にもう一人居るのだ。二年という差はあろうが、騒げばすぐばれる。
それはカイルもわかっているのか、何とか直ぐに体勢を戻した。それでも拗ねたようにぶすっとした顔でジューダスを睨み付けてはいる。
ジューダスは三度目のため息を吐くこととなった。

当然のことだが、未だ謎の多いジューダスの過去の姿に興味を持ったのはカイルだけではない。ロニもまた、木から顔を出さんかのような勢いで向こう側を見ようとする。

「誰と話してんだ?お前」

リアラ、ナナリー、ハロルドも興味津々で、ジューダスは頭を抱えた。

「わ、すごい綺麗な人」
「ほんと……」
「うわ、マジだ」

どうやらようやくリオンの話し相手の姿を見たらしく、仲間たちの目、特にロニの目が輝いた。
と、同時にジューダスの拳がロニの頬を掠めた。

「どわっ!おま、何するんだよ危ねぇな!」
「うるさい」

長い前髪と仮面によって見えないが、間違いなくジューダスのこめかみにはお怒りマークが出ている。
ロニはにやりと笑った。

「ほう……もしかして、お前……あの人のこと」
「お前の考えているような関係でなくとも、お前みたいな奴に近づけたくないと思うのは至極道理だと思うのだが」

ロニの言葉を遮り、ジューダスは無表情にさらりと言ってのける。一瞬言葉を理解するのに間を空けたが、やがてロニは声を必死に殺しながら頬を引きつらせた。

「な……ん、だ、と~~!?」
「ロニ、反論の余地はないと思うよ」

ジューダスに掴み掛からん勢いで立ち上がりかけたロニだが、カイルの言葉と残りのメンバーが一斉に頷いたのを見て怒りをそがれるどころか消沈することとなった。

そんなことをしている間に、狭い葉の間の風景が左から右へと一瞬変わった。少年がこの場から離れたようだ。その気配が小さくなったところで、ようやく皆は僅かながら体を起こした。

カイルは恐る恐る顔を出した。少年が塀の外へと走り行く姿が見える。やはり少し幼い。見えるのは後姿だというのに、カイルの脳裏に映るのは先ほど見たあの笑顔だった。

きっと俺では絶対あの笑顔は引き出せない。
カイルはやはり、少し頬を膨らませ、もう一度ジューダスの方を見た。だが、彼はカイルが見ている事に気づかず、じっと一点を見つめていた。

先ほど、リオンと話していた人だ。
長く黒い髪。メイドだと人目で分かる衣服。温かい笑みを浮かべ、リオンを見送っている。
彼女を見るジューダスの表情は、優しげで、そして寂しげだった。
その光景にカイルは胸を痛めた。

嫉妬もある。共に居るのが当たり前になっていた。彼はリオンではなくジューダス、俺たちの仲間なのだと。
だが、こうして彼が本来いるべき時代を覗けば、彼の居場所はやはり此処なのだと見せ付けられるようだった。
だが、痛む理由はそれだけじゃなかった。

ジューダスはそこへ帰ることが許されない。それが辛い。
あんなにも幸せそうにしているのに、ジューダスはあそこへは帰れないのだ。
目の前で僅かに揺れる紫紺の瞳は、果てしなく遠くにあるものを映している。目の前にあるはずなのに、二度と手の届かぬ彼方を映している。
そして、それを何とかしてあげたくても術がない。カイルは役立たずである己の手を拳に変えて必死に今の感情を飲み込もうと努めた。

そんなカイルやジューダスの心境を他所に、女性人は輪になりこそこそとお喋りを始めた。

「そんなに変わってないけど、でもちょっとだけ幼く見えたよね。可愛いじゃないかジューダス」
「うんうん」
「ふむふむ、今とどれくらい違うか、是非ともデータを取りたいわね」
「……おい、いつの間に歴史観光旅行に変わったんだ」

仮面の下からでも鋭さの落ちぬ恨み深き眼差しに、リアラとナナリーは引きつった笑みを浮かべて口を閉じた。
これにより、ようやく一行は本題へと意識を向けた。

「じゃ、えーっと、とりあえず間違えて二年早くに着ちまったわけだよな?」
「となると、また時間移動をせねばならんな」
「ごめんなさい……」
「大丈夫だよリアラ。きっと何か方法があるって!」

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