フレバンスホラーネタ続き

OP妄想書き殴り
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前にすっげーアバウトに書き散らしたフレバンスホラーネタの続き。

色んな場面の妄想が散乱してるけれど、まぁいいや。適当に書き散らしておくぅ!

 

 

突如知らない国(フレバンス)に巻き込まれて飛ばされたスモやんは怪奇現象を見せられたりして、ローに詰め寄るの。

「ロー、ここは一体どこなんだ。明らかにてめぇ関連のいざこざじゃねぇか! 何か知ってんだろう!?」

「知るかよ……てめぇんとこのがここに飛ばしたんだろうが。てめぇの仲間の能力くらい把握しておけ……!!」

って感じでここどこ話とかね。状況整理系のお話。

 

「あいつは、除霊師だ」

「・・・・・・はぁ?」

「ジョレイシ?」

「奴は神だとか霊だとか胡散臭い、一般的に見えないもんを取り扱ってる機関に所属している。その奴が、任務で“あるもの”を探していると言った。おれ達はその護衛だ。やつが何を探し、何をしたかったのかおれにはわからねぇが、こうやって実際幽霊みてぇなもんがうようよしてんだ。これらを祓う為におれたちは・・・・・・いや、てめぇが飛ばされたんじゃねぇのか。ロー」

ってスモヤンの情報聞いて、幽霊……か。と、フレバンスとまったく同じに見える国とそこで起きる怪奇現象に思考するロー。それ見てスモヤンがさらに詰め寄る。

「おい、ロー!! 本当はわかってんだろ! 一体なんなんだここは! 無関係だなんてこたぁ言わせねぇぞ! 知ってることは全部話せ!」

「・・・・・・フレバンス」

「・・・・・・あぁ?」

「多分、ここはフレバンスだ」

「ちょっと待って、トラ男君。フレバンスって……」

「なぁ、なんなんだ? フレバンスって」

「北の海にあった国だ。16年前に滅んだ」

「フレバンス……どこかで聞いたような……」

「病気が理由で滅んだ国ね。確か」

「病気……あっ! 珀鉛病か!?」

博識ロビンちゃんと医者チョッパーがフレバンス知ってましたよって話とかね。

「そうか。こいつら珀鉛病で苦しんでいたのか。……これが、珀鉛病……」

途中怪奇現象で苦しいとか痛いとか言って呻く幽霊見てたって設定。

「何なんだ? その珀鉛病って」

「体中が白くなって痛みだし、最後には死んじゃう感染病なんだ。治療法が見つからなくて、他国の人は発病元であるフレバンスを隔離するしかなかったって……」

「えげつねぇ……それで病で一人残らず死んじまったってことなのか」

「いいえ。最終的には隔離から逃れようと武器を持ったフレバンスの国民と、その反撃に出た周辺国と戦争になって滅んだわ」

「なるほどな、戦争で死んでいった国民の亡霊共が化けてでてんのか……」

 

「ロー、てめぇはフレバンスとどういう関わりだ?」

「……」

「ロー……!」

「うるせぇな……ここで生まれ育っただけだ」

「えっ」

「どうやって隔離から逃れた。何をした。何故この国の除霊に貴様を必要とされている

「知るかよ」

とかね。重大な事実をぽろりと投げ捨てるように零すローさんかわいい。

「それにしても、どうやったらこっから出られるんだ・・・・・・? どうしたらこいつら成仏するんだ」

「何かこいつらの好物でももってくりゃいいのかなぁ? 肉でも探してくっか?」

「お前じゃねーんだからよ」

「・・・・・・トラ男君、何か思い当たることは・・・・・・ある?」

「・・・・・・・・・・・・」

「ロー、話しづれぇのはわかるが、このままじゃらちがあかねぇ。何か少しでもあれば、情報をくれ」

「……わかるわけねぇだろ」

「ん?」

「恨みを消す方法なんざ」

ローもまたその恨みを心の奥底に秘めているわけで。思わずローの表情は暗くなる。聡いサンジとかロビンあたりは気づくけれど、ウソップあたりはローの顔見ずにホラータウンと化してる周囲に怯えながらぼーっとしゃべる感じ。

「……まぁ、そりゃ確かにそうだけどよ、そこをなんとかこう、少しでも・・・・・・なぁ」

「……キャプテン、しんどい?」

ローのざわめく心を機敏に察したベポが表情を曇らせる。ローはその首元をそっと撫でて宥めてやった。

「な、なぁ・・・・・・? トラ男、お前この国の人間に何か恨まれるようなことしたとか・・・・・・ないよな?」

「お前!! 船長になに言いやがる!」

「ひぃっ! すんません!!!」

「さぁ? どうかな」

「お、おいおい・・・・・・」

ローさんが飛ばされた理由、先にネタバレというか妄想設定メモしておくと、生贄って感じかなぁ。フレバンスの人たちの苦しみとか寂しさを静める為に、その国の生き残りであるローを生贄にしようって算段かなと。だから別にローが恨まれてるわけでもない感じ。ただ縋り付かれてるだけなかんじで。助けて苦しいのあなたならわかるでしょうって感じで。(ホラー雑学なんてないから適当なこと言ってる^p^)

まぁ、そうとは知らない麦わら一味は、過去に彼らに何か悪さしたからその罪滅ぼしを求められてローがつれてこられたんじゃ?っていう誤解がちょっとね。ってわけで。まぁそういう誤解とか悪ぶるのとか慣れてるローさんは思わずその一味の不安を煽ってにやにやしたりねwwwでもそうやってローさん自身も不安な心を宥めて平常を取り戻そうとしてるだけだったりね。そしてその誤解にいち早く怒るペンギンさんかっこいい大好き。怒ってくれるペンさんがいるからこそ余裕ぶれるローさんhshs

 

「そもそも、その除霊師とやらはどこへいったんだ。むしろそいつがさっさと現れてどうにかするもんじゃねぇのか」

「いないからお前に聞いている」

「てめぇんとこのだろうが・・・・・・」

「恨みかー。宴でもやりゃぱーっと気分も晴れるんじゃねぇか?あいつら。なぁ、飯ないか?」

「ねーよ。大体幽霊は飯もくえねぇだろ、多分」

「飯のお供えでなんとかなる状況でわざわざあいつが出てくるか。鍵はてめぇが持ってるはずなんだぞ、ロー」

「知らねぇつってんだろ。おれは外科医だ。精神科は専門外だ」

「そういう話をしてんじゃねぇ・・・・・・!」

「知るかよ。ピエロでも雇ってみりゃいいんじゃねぇか。恨み忘れるくらい滑稽なら成仏するかもな」

「お前言ってることルフィとそう変わんねえぞ!」

なんだかんだでやっぱりコラさんを匂わせたい。

 

 

 

場面的には後半かな?まじこんなシーンほしいなーってのが散乱しててだな……。

 

 

―― ロー、ロー、一緒に行こう。

それはまだ10歳くらいの小さな子供だった。その顔には白い痣が浮かんでいる。ひたすらに、こっちへおいでと手招きする。

親しげに名を呼ぶ姿からは、恨みなどは感じられない。だが、それはこの世のものではない。悪意は感じられないのだ。いつの間にか同い年の子供たちが増え、ローの手を引こうとする。それは仲の良い友人を遊びに誘うかのようで。

だが、ベポは本能的にそれが危険だと感じ、腕の中のローを彼らから引き剥がそうとした。でも、遅かった。

「あぁっ!」

「キャプテン!?」

ベポの腕の中でローは体を守るように抱きしめ震える。痛みに耐えるかのように強張る体。ベポがローの表情を見ようと覗き込もうとしたとき、その異常に気づいた。

「キャプテン……!! 肌が!!」

ローの首から頬にかけて、白い痣が浮かび上がっていた。

それは、あの子供たちと同じもの。……珀鉛病の痣だった。

ベポはローを抱きしめると子供たちから逃げるように走り出す。ペンギンやルフィたちがそれに続いた。

 

近くに気配を感じないところまできて、ようやくベポは座り込みローをその身にもたれかけさせながら床に下ろす。ローは浅い息を繰り返し、意識が朦朧としているようだった。

ベポはローの背中をなでながら、ローのぐったりと投げ出された足へと視線を向ける。裂かれた傷と縋り付くような指のあとが包帯のしたには隠されている。

「どうしてキャプテンばっかり・・・・・・」

思わず、そうつぶやかずにはいられなかった。明らかにこの場所にいる亡霊はローにばかり危害を加えようとする。だけれど、なぜかそこに悪意は感じられない。でも、ローをこうしてどんどん傷つけていくのだ。

「唯一生き残ったトラ男君を、一緒に連れていきたいのかしら」

「なんだよそれ!」

考え込むように顎に手をあてながらロビンが言う。それに思わずベポは怒りの声を上げた。あまりにも、理不尽だ。

そんなベポの激情に動揺することなく、ロビンは憂うように視線を空へ投げた。

「よほど無念に亡くなっていったのでしょうね。誰かを巻き込まないとすまないほど。または、何かを伝えたいのか・・・・・・トラ男君に恨みがあるというよりは、やはり寂しくて一緒に連れて行きたいかのような雰囲気を感じるけれど」

ゾロがそれに同意する。

「だな。唯一生き残ったこいつに無念をぶつけてるって感じに見える」

「えぇ! 勝手なやつらだなぁ!」

ローの隣に座り込み、その様子を覗き込んでいたルフィが不満の声を上げたが、チョッパーは視線を地面に落としながら悲壮な顔で言う。

「仕方ないよ・・・・・・病気で隔離されて殺されたなんて・・・・・・可哀想だもんな・・・・・・」

「よせ、チョッパー」

厳しく嗜めるゾロの声が響いた。

「同情はしねぇほうがいい。そういうやつから取り込まれる」

「えっ!? な、んで・・・・・・」

「気をしっかり持て。あいつらとおれたちは生死の一点で決定的に違うんだ。一緒にはいけねぇって、しっかり念じておけ。・・・・・・こいつは、それが足りてなくてこうなってんじゃねぇのか」

ゾロはこいつ、とローへ視線を向けながら言った。殆ど気を失っているローはもはや反応も返せずただ荒い息を吐くのみだ。ゾロは表情を厳しくした。このままではまずい。

「・・・・・・自分が育った国なんでしょう? ・・・・・・無理もないわ」

「早く脱出方法さがさねぇと・・・・・・こいつやべぇだろ」

「トラ男! トラ男! おまえ、しっかりしろよ!」

「キャプテン・・・・・・」

 

って感じにみんなに心配されるローさんおいしい……。

幽霊に同情は禁物ってオカ板まとめか何かで見た気がする。

 

 

病院で。

「ひっ!」

「体が・・・・・・うごかねぇ・・・・・・」

「金縛り・・・・・・!?」

「うわぁあああ! くるな! くるなぁ!」

白衣を着た血だらけの男は、ふらふらと、歩み寄ってくる。その歩みがまっすぐローに向けられていることに気づいたルフィは声を荒げた。

「いい加減にしろよ、お前ら!!!! トラ男を巻き添えにしようとすんじゃねぇ!!!! おめぇらが死んじまったのは、もうどうしようもねぇだろうが!!!! トラ男はまだ生きてんだぞ!!!!!」

だが、そんなルフィの声など一切聞こえないかのように、男は歩みを乱さない。

「トラ男!」

「ひっ!」

真っ直ぐ自分たちの下へと歩み寄っているとわかったベポは、ローを抱く腕に力を込め、怯えながらもその体を守るように金縛りの中、白衣の男に少しでも背を向け、顔だけ男に向け睨み付ける。子を守る親熊のごとく、ぐるるるると喉を鳴らして懸命に威嚇した。

だが、それもむなしく男は二人の前へと近づき、その腕を二人に伸ばす。ベポは目を瞑り、ぎゅっとローを抱きしめた。

「・・・・・・ロー」

ひしゃげた、聞き取りづらい声だった。だが、その声に今まで聞いてきた背筋が凍りつくような狂気めいたものは感じられず、ベポはそっと目を開けた。白衣の男の顔は真っ黒に爛れていて表情はまったくわからない。その手は、ローの帽子の上へと置かれていた。頭を撫でるかのように熱で苦しむローの表情が、僅かに和らいだ。

「・・・・・・?」

誰もが固唾を呑んで見守っていた中、やがてゆっくりと男の体は消える。同時に、金縛りがとけ、おのおのが力を入れすぎた体の反動にたたらを踏んだ。

ウソップはしりもちをつき、大きく呼吸をし、思わず叫ぶ。

「うわぁあああ! もう、なんだよおおおおお!!!! こええよおおおおお!!!!」

そのとき、バサ、と紙の束が地面に落ちた。その些細な音ひとつにウソップは飛び跳ねて驚く。一方、ロビンはすぐさまその元へと歩み、拾い上げた。

「・・・・・・これ」

「なんだ? それ」

歩み寄るチョッパーにロビンは屈むと文書を差し出す。

「チョッパー、あなたのほうがわかるんじゃないかしら。これ、珀鉛病の研究文書よ」

「えっ」

目の前に出された文書に目を丸くしながらチョッパーはそれを受け取った。暫く、文書に目を通すチョッパーを誰もが黙ってみていた。やがて、文書を読んでいたチョッパーの手が紙ごと震える。

「・・・・・・感染・・・・・・しない・・・・・・?」

声も同様に震わせながら、紙に書かれていた一文をチョッパーはそのまま読み上げた。その言葉に、一同は息を呑んだ。

珀鉛病は感染する病。だから、この国の人々は隔離され殺された。そう、チョッパーから聞いていたのだ。そのはずだったのに。

「珀鉛病は・・・・・・感染しないって・・・・・・!」

もう一度、チョッパーは声を荒げながら言う。

「え、そんな・・・・・・!?」

「・・・・・・確かなのか。それは」

誰よりもその言葉の疑ったのはスモーカーとたしぎだった。だが、チョッパーの持つ文書は、そんな疑いの言葉に揺さぶられるような内容ではなかった。

「こんなに詳しく・・・・・・」

びっしりと書き記されたあまたのデータ。詳しくないものにもわかりやすいようにと工夫されて作られた図や、例え。これらを作り上げるのにいったいどれだけの時間を費やしただろうか。それは医者であるチョッパーにとってあまりにも貴重な、宝のような文書であった。

「こんな情報、一切出てなかったのに・・・・・・きっと、すごく一生懸命、この町の病を、・・・・・・治そうと・・・・・・してたんだ・・・・・・っ!」

「チョッパー」

ゾロがチョッパーの名を呼ぶ。同情するな、のまれるぞ。先の忠告を思い起こさせる声色だった。だが、チョッパーは首を横に振る。

「わかってる・・・・・・! わかってるけど・・・・・・!! こんな・・・・・・っ!」

なぜ、これほどまでの文書があったというのに、悲劇は起こったのか。この文書さえあれば、この文書を書いた者の言葉に耳を傾けられる人がいたならば、悲劇は起こらなかったはずなのだ。

震えるチョッパーの手が、文書の最後の紙をめくる。

「……これ」

そこには文書を書いた者の名が記されていた。

「トラファルガー?」

「ん? トラ男が書いたのか?」

「名前が違うわよ、多分・・・・・・家族の人じゃないかしら?」

そのときだった。突如明かりが消えて周囲が真っ暗になった。

ひっ、と誰かの悲鳴が上がるが、すぐに誰も言葉を発さなくなった。いや、声が出なくなったのだ。

その代わり、ひどく切羽詰った、怒鳴り声とも言っていい声が、部屋中に響き渡る。

 

―― 珀鉛を体から取り除く術は必ずある!! 感染もしない!!!! 政府はなぜこれを報じない!?

―― 血が、血が足りないんだ……! きっと珀鉛病を体から取り除く方法はあるはずなんだ!

―― 何故だ! 何故!!!! 何故っ!!!!!! なぜ信じてくれない!!!! どうして!!!! 文書さえ読んでくれれば、わかってくれるはずなのに!!!!!

―― このままでは、この国は・・・・・・! 患者は・・・・・・、妻は・・・・・・子どもたちは・・・・・・!! 頼む、頼むから・・・・・・話を聞いてくれ・・・・・・誰か・・・・・・、頼むから!!!!

 

 

そのとき、チョッパーの手にあった書物が風に盗まれるかのようにぶわっと広がり地面に落ちる。

「あ」

真っ暗な闇の中、何故かその紙だけは光を放っているわけでもないのに闇を一切感じさせずそこにあった。真っ暗な背景の中、白い紙だけが目に痛く浮かび上がっている。

だが、その紙が突如――。

ぐしゃ、ぐしゃ、びり、びり

その文書は独りでにしわくちゃになり、破れた。何かに踏みつけられたかのように、踏まれ、踏みにじられ、引き裂かれる。

国を助けたい一身で、患者を、家族を守りたい一身で、尊い想いで、強い想いで綴られた研究文書。それが、何者かに踏みにじられていく。

同時に、また響き渡る声。先ほどの人物の声とはまったく違う、ひどく冷たく、悪意に満ちた声だった。

―― まさかここまで研究が進んでいるとはな。こんなもの残されたら殺処分を下した我々への非難の種になる。まったく、往生際の悪い。

ぐしゃ、ぐしゃ

「な、んで・・・・・・」

黒い影が、何者かが、文書を踏みつけている。尊い文書を、踏みにじっている。研究文書を踏みつける謎の男は、よく見れば、感染を防ぐためか防護服を身に着けていた。

―― ったく、それでなくても今回の件はいろんな国が煩いってのに、くそ、おちおち寝れもしねぇ

ぐしゃ、ぐしゃ、びり、びりり

踏みにじられていく。踏みにじられていく。

チョッパーには、この文書が踏みにじられるその怒りが、誰よりもわかった。

「・・・・・・や、」

不可解な現象で声を奪われていることすら怒りで忘れ、やめろよ、と、チョッパーがそう大声で叫ぼうとしたとき、その声は恐怖に喉の奥で引きつり消えた。

見ていたのだ。その文書が踏みにじられていく様を。

数多の目が、見ていた。

暗闇の中、光る目が、白めが異常に浮き上がり、その中で瞳がまっすぐ見つめている。瞬きを忘れ真っ直ぐに。その男を取り囲むように、何十、何百という目が、じっとそれを見ていた。

その気配に囲まれて、チョッパーは体を震わせる。

その中からひとつ、より強く視線を感じる目があった。チョッパーはゆっくりそっちへ目を向ける。その金色の目は、怒りを超えた狂気の目で、それをただ、じっと見ていた。

やがてその目の持ち主の顔が、ゆっくり露になる。

幼い顔、帽子で影を落とす目元、その帽子の模様は、見慣れた・・・・・・

「えっ」

チョッパーの声が異様に響いた。それと同時に、先ほどまで真っ暗だった部屋は通常の明るさを取り戻し、文書も、文書を踏み続ける男も、そしてそれを見続ける数多の目も、まるで悪い夢を見ていたかのようにすっかり消えてしまっていた。

誰もが体中に嫌な汗をかいていた。そんな中、チョッパーはごくりと固唾を呑む。

金色の目があったそこには、ベポに抱かれて虚ろながらもじっと視線を一点に……先ほど文書が落ちていた場所に向けるローの姿があった。

 

ホラー感だいすきぃ

でもこういうのはやっぱ文章より映像のがいいんだろうなぁ(´・ω・)

文でホラーって難しいね。

 

 

終盤、フレバンスの真実が一同に明るみになったあたりでローさんが闇落ちしかかるのとか見たい。

半分とりつかれてしまっているかのような、引き寄せられて過去の憎しみが思わず蘇ってしまったかのような、そんな感じの切なさを求む。で、スモヤンの正義コート見て思わず八つ当たりするの。

コラさんの腹を刺したのと同じように、その場にあったナイフでスモヤンの腹刺してほしい。でもスモヤンはね、そのままローさんをぎゅっと抱きしめるの。何もいえないんだけど、何を言ったらいいかもわからないんだけれど、ただひたすらにぎゅっとローさんを抱きしめるの。それこそコラさんと同じように、今誰よりも痛がっているのはローさんの方なのだとスモヤンもわかってね。でもどんな言葉を告げたとしてもこの悲劇の前には何もかもが陳腐にしかならなくて、ほんっと何もいえなくて、スモヤンも苦しくて、ただただローさんをぎゅっと抱きしめるの。で、ローさんはそんなスモヤンの姿にコラさん思い出して、思わずその場から一人逃げ出すっていうね。

大丈夫ですかスモーカーさん!ってかけよるたしぎに目もくれず、地面を思わず殴りつけて感情を必死に押し殺そうとするスモヤンとか熱い。

 

 

で、最後、一人になったローさんを誘うラミちゃん。

この頃にはローさんすっかり精神ボロボロ(可哀想萌える)

 

苦しい、痛い、体中が、痛いよ、苦しい、暗い、怖いよ、熱い、熱いよ、痛い

暗いよ、怖いよ、寂しい、寂しいよ、お兄様。一緒に、一緒にいて。怖いよ・・・・・・怖いよ。苦しいよ。

お兄様 お兄様 助けて 苦しいよ

どうして戻ってこないの 私はここにいるよ 言いつけどおり、ここで、大人しく

お外が怖いの 寂しいよ 怖いよ 苦しいよ 息がし辛いの 体が痛いの

お兄様、帰ってきて 一緒にいて 怖いよ 怖いよ 一緒がいい 一緒がいい 寂しいの 独りは嫌なの

 

「……あぁ……わかるよ……ラミ……」

一人になったローを探し、遠くから駆け寄ってくる一同の前で、ローはラミへと手を伸ばす。

「おれも、苦しいよ……」

地面に座り込みラミへ手を伸ばすローの背へ、ペンギンが悲鳴のように声を上げる。

「ロー!!!!!!!」

だが、今のローにその声は、届かなかった。

ローはただ、まっすぐ、ラミへと手を伸ばしていた。

「……一緒に、いこう、か」

今のローは、遠き昔の暗い絶望へと囚われていた。珀鉛病が、いつか自分の命を終わらせに来るその日を、迫りくるその日を、足掻くことなく待っていたあの日に。命の終わりに至るまで、憎しみと恨みを振りまいて、でもそれを全て出し切って、疲れ果てたその最期には、珀鉛病が、全て終わらせにくる。そうやって、迎えに来てくれる。今が、そのときなのだと。

ラミは嬉しそうに笑った。

ローの手が、ラミに触れる。それと同時に、二人を中心に何かが爆発したかのように、暴風が巻き起こり、ルフィたちを吹き飛ばさんかのごとく襲い掛かる。

砂埃が舞い、空間が歪んで見える。

「あの馬鹿……!」

死者の手をとったローに向けて、誰かが思わずそう呟いた。

「トラ男ォオオーーーーー!!!!」

「キャプテン!!!」

「ローーー!!!!!!」

ルフィが、ベポが、ペンギンが、それぞれ必死に名を呼ぶが、この暴風の中、ローの姿はどこにも見えない。近づくことも適わない。ただ、どんどんとローが遠くへ向かっていることが、本能的に理解できた。

国を包んでいた憎しみや怒り、苦しみ悲しみといった不の感情が、わずかに浮き上がり歓喜しているのが感じ取れる。彼らはローがきてくれることに喜びを抱いている。

「やめてくれ!! 連れていかないでくれ!!! おれたちの、大切な人なんだ!!!!」

ペンギンが懇願するように叫ぶ。

そのとき、荒れ狂う風の音の合間に、ひとつの呪文が唱えられたのを、ベポだけが聞いた。

「“凪”」

それと同時に、暴風は嘘のようにぴたりと止んだ。

 

 

 

ローの周りには色んな声が轟いていた。

父が電話先の医者に助けを求める怒鳴り声。母が懸命にラミにかけている声。痛みを訴えるラミの声。逃げて、生きるのだと、誓いを叫ぶ友人。絶望なんてないと祈るシスター。銃声、叫び声、断末魔。政府へ、兵士へ、隣国へ向けられる怒りの声。憎しみの声。悲しみの声。

それらは真っ黒な、どろどろの、血のような液体となって流れて、ローを飲み込んでいく。ローはただそれに飲まれ、流され、静かに目を閉じ受け入れようとしていた。

そのとき、その呪文は届いた。

「“凪”」

ルフィたちを襲っていた暴風を止めたその呪文は、ローを飲み込む声も全て消し去った。

後には、どこまでも静かな、何も聞こえない無音の世界。

黒い海に飲まれかけていたローは、地面にうつぶせに倒れていた。唖然と上半身を起こす。そのローの頬に、大きな手が添えられた。

「哀しい声は、聞こえなくなるの術、だ」

頬が、温かい。その温かさは、ローの涙腺を緩ませるには十分だった。

「コラ、さん……」

顔を上げればそこには、複雑な笑みを浮かべるコラソンがいた。昔、ローが自分はもう死ぬのだと、病院なんて意味がないのだと、諦めを口にするたびに浮かべていた表情だ。ローを励まそうとする笑みと、ローの痛みを自分の身にも受け止める苦しそうな顔と、それでもローが折れるのを決して許さない厳しさを含めた表情だ。

「来ちゃだめだ。ロー、お前は生きている。こっちは、お前のいる場所じゃねぇ。お前はこっちにきちゃいけねぇ人間だ」

ひどい話だった。今、ローはコラソンの胸に飛び込みたい気持ちでいっぱいだった。苦しくて、悲しくて、寂しくて、一緒に連れて行って欲しい気持ちでいっぱいだった。なのに、コラソンはその頬に触れるだけで、それを許してくれない。ローの体は意思に反してコラソンへと手を伸ばすことがかなわない。コラソンから、それを決して許さぬ気迫を感じ、それに押さえつけられている。

「……ロー、お前に届く声は……お前を求める声は、死んじまった人たちだけのじゃないだろ?」

コラソンの言葉と同時に、先ほど届かなかったはずの声が、なぜか頭の中に蘇る。同盟相手の男の声、大切な、仲間の声。

「でも」

でも、と呟く。それでも、あれらの、フレバンスのみんなの声が、忘れられない。あの声を、見て見ぬ振りなどもうできない。苦痛に歪む顔が、血に塗れる四肢が、生を失い瞳孔が開ききり虚ろになった目が、忘れられない。忘れてはいけないことだ。癒しようのない、どうしようもない苦しみ。もうどうしようもないなら、ただそれを抱え眠るだけだ。それしか、もう、ないはずで。

「ロー」

その考えを途絶えさせるように、コラソンはローを呼ぶ。

「亡くなった人を思うなら、忘れないでいてくれればいい。それだけでいいんだ」

「……忘れねぇ、忘れられねぇからこそ……」

「なぁ、ロー」

ローの頬に当てられていた手が離れる。コラソンは屈んでいた体を起こして立ち上がる。そうすると、長身の彼はずいぶんと遠く離れていってしまったかのように感じた。ローはすがる様に視線を上げた。そんなローを、コラソンは優しく見下ろしていた。そして、突然顔の横でピースを作り、にいっと、汚い笑みを浮かべた。13年前、別れの日、宝箱が閉じる直前に見せた、あの汚い笑顔だ。脳裏に焼きついて離れない、トラウマそのもののような、ひどい笑顔だ。

ローの瞳が震える。コラソンはゆっくりそのひどい顔を元に戻すと、今度はふわりと、優しく笑った。

「思い出してくれるなら、笑った顔がいい」

ローは言葉を失っていた。コラソンはローに笑顔を浮かべたまま問いかける。

「おれの笑った顔、覚えてたか?」

ローは胸をかきむしられるかのような苦しさを覚え、その苦しみに顔を歪ませながらも笑い返した。

「忘れられるわけがねぇ。トラウマもんだ」

それは正しくトラウマだった。その化け物のような形相もさることながら、その表情を最後に、永久の別れとなった悲しみは、ローの心に深い傷を残している。

でも、きっとコラソンはその笑顔の記憶を、傷にしてほしくないと思っている。先の会話で、ローはそう悟った。

「なぁ、コラさん、気づいてねぇのか? あんた、そんなめちゃくちゃな顔しなくても、ちゃんと普通に笑えてんだぞ」

「え゛っ」

ぎょっとした顔をするコラソンに、ローは思わずくく、と笑った。同時に、コラソンも笑う。ローがそのめちゃくちゃな顔も、普通の笑顔も、忘れることなく心に刻んでいてくれたと知って。

「なぁ、ロー。だったら、故郷のみんなの笑顔も、覚えてるか?」

コラソンの言葉に、ローの表情が固まった。

ずっと、思い出していなかった。人は適度に思い出すという作業を重ねなければ、いつかその存在そのものを忘れてしまうものなのだ。

それでなくとも、今の今まで、ローの脳裏に焼きついていたのは……笑顔とはかけ離れた苦痛に歪む顔ばかりだ。そうやって、苦しく辛い顔で、その笑顔の記憶を全て塗りつぶしてきてしまった。

「ロー、大丈夫だ。落ち着いて、ゆっくり思い出せばいい」

硬直するローに、コラソンの落ち着いた優しい声が、ゆっくり、その強張りを解くようにかけられる。

「妹が、いたんだったよな。その笑顔は? きっとかわいい子だったんだろうな。お前の妹だから」

無音の世界の中、ゆっくりと、記憶を掘り起こすように、コラソンの声が響く。その声につられるように、遠い記憶が呼び起こされていく。

覚えている。ラミの笑顔は、よく覚えている。ひまわりのように、元気に、明るく笑う子だった。

「父さんと母さんは? 笑う人だったか? お前の父さんは、どんな人だった? お前みたいに気難しそうな人だったか? 母さんは、きっと美人だったんだろ?」

覚えている。母様は、優しい、ふわりとした笑顔がよく似合う人だった。父様は難しい表情もよくしていたけれど、ラミや母様に釣られるように笑い、おれが新しく医術を覚えるたびに誇らしげに笑ってくれた。

「友達はいたか? お前、面倒見がいいから、仲のいい友達がいたんじゃねぇか?」

あぁ、いた。勉強ばかりであんまり遊ぶことはなかったけれど、趣味も合わずにカエルを捕まえて解剖しようとするおれを気味悪げに見てくることもあったけれど、そんなおれの趣味を変なやつ、と笑い飛ばしながらも一緒にカエルを捕まえてくれるやつがいた。

「じゃあ、近所の人、お隣さんは? お前、医者の息子だったんなら、患者さんと話したこともあったか?」

コラソンは記憶の種を撒く。そこから、次々と埋もれていた記憶が発芽して、大きく育って、どんどん広がっていく。

隣のおばさんは、庭でカエルを解剖するおれを見て悲鳴を上げて腰を抜かしたことがあった。そのままぎっくり腰になって、あとで父様が苦笑しながら治療をしていた。こんな小さな子供にメスなんて持たせていいのかと、自分の子でないのにやけに心配してくれていたものだ。おれがラミに振り回されるようにおままごことをしていると、やけに嬉しそうに笑っていた。

病院では、おれにできる手伝いはやっていたから、患者の中でおれは割と有名人だった。チビ先生が着たぞ、なんて囃し立てるおじさんもいたっけ。可愛いお医者さんね、なんて声をかけてくる女もいた。馬鹿にされてると当時は少し腹が立ったものだ。でも、その誰もが優しい笑顔で見守ってくれていた。

おれは上半身をようやく起こして、少し近くなったコラさんを見上げる。コラさんはにっこりと笑った。

「ロー、彼らの無念を忘れないのも大切だ。でも、それと同じくらい、お前のその記憶は、とても大切なものだ。そして、それを思い出してやれるのは、もうお前だけだ。だから、生きろ。憎しみに囚われて、大切なものを見失うな。自由に、生きろ」

ローはゆっくり立ち上がる。その姿を見たコラソンは少し安心したように笑い、またあのひどい笑顔を作った。

「ロー、愛してるぜ!」

バタン、と音を立てて闇が広がった。宝箱が閉められたときと同じように、それっきり、コラソンの姿は闇に掻き消えてなくなってしまった。

 

 

真っ暗な世界で、再び、声が蘇る。憎しみ、悲しみ、恨み、それらに満ちた声。でも、今はその声が少し遠くに聞こえた。

ローはそっと自分の胸に手を当て、目を瞑った。そうして胸の中に蘇った大切な記憶を、ゆっくりゆっくり辿り始めた。それらはやがて声になった。優しくて、明るくて、温かい、たくさんの声。それに感化されるかのように、周囲にあった憎しみの感情が、ゆっくり薄れ、元の、温かい感情を取り戻していく。

 

 

 

 

 

 

 

突如暴風が消え、体の自由を取り戻したルフィたちはローがいた場所へと走る。だがその場所にローはもういなかった。誰も、何もいない。ずっと感じていた、たくさんの人の気配も感じない。

「トラ男ーーー!!!!」

ルフィが大声を上げて呼ぶも、ローが声を返してくれる気配もなかった。

「嘘……キャプテン……どこ、いっちゃったの……」

ベポの目に涙が溜まる。

そのとき、足音があがり、みな一斉にそちらへと眼を向けた。

「……お前は……!」

そこには、あの除霊師が立っていた。

「……てめぇ、今までどこにいやがった」

スモーカーが唸るように言う。

「スモーカー中将、巻き込んでしまい申し訳ありません。頭に血が上ったかのように勝手に麦わら一味の船に乗り込んだりしなければ、巻き込まれることもなかったのですが」

「……」

「まぁ、それももう終わりです。無事、この国の亡霊たちは黄泉の河を渡り始めました。……生贄の魂を道しるべに」

ゾロが目を細めて言う。

「そりゃあ……トラ男のことか」

「まさかフレバンスの国民に生き残りがいるとは思いませんでした。助かりましたね。同じ場所で生き、同じ経験をも持つ者の道連れは霊を沈めるのに重宝する。これでこの国の怨念も鎮まり、周辺国での怪奇もなくなることでしょう。……あぁ、あと、スモーカー中将。ここで見聞きしたことは黙っていた方が賢いですよ。まさかこんな世界政府の機密事項が飛び出してくるとは思いませんでしたよ。まぁ、この話を誰にしたとて、黄泉の言葉じゃ証拠にならないでしょうがね。我々の機関くらいしかその話は聞き入れないでしょう」

「あなたは……あなたは、何も感じないのですか!? あなたもずっと見ていたのでしょう!? この国の人たちの声を!!! 聞いていたんでしょう!? だったら、同じ政府に組する者として……!!!!」

「たしぎ大佐。黄泉の声に聞き入ると、連れて行かれてしまいますよ」

 

「いいじゃないですか。海賊一人の命でこの国の怨念は眠りにつく。今更贖いも何も必要ない。もう全ては終わるのです」

「……とてもそれで収まるとは思えねぇがな」

「意外と単純なものですよ。深く同情し、同じ場所へ堕ちてくれる者がいたならば、それで十分慰められるものなのです」

 

それまで静かに話を聞いていたルフィが一歩、踏み出した。その表情は、怒りに満ちていた。裏腹に、声はどこまでも静かで、よく通った。

「どうすれば、トラ男は戻ってくる?」

その気迫に、除霊師は僅かに息を詰まらせた。が、すぐにルフィの視線を真っ向から受け止め、視線を返す。

「無駄ですよ。彼はもう死者の手をとった。……暫く待っていれば、この国を覆う呪いも消える。そうすれば、あなた方は出られますよ。良かったですね」

ルフィは除霊師の言葉を最後まで聞かず、ふい、と興味をなくしたように除霊師から目をそらすと歩き出す。

「……どこへ行くのです。あなた方にはここで大人しくしていてもらいますよ。漸く全てが収まるというのに、暴れられて無駄骨になっては困ります」

除霊師はルフィの行く手を遮る。その除霊師を、ルフィは覇王色の覇気をむき出しにして睨みあげた。

「どけよ」

常人ならとっくに意識が吹き飛ぶ程の、強く、怒りに満ちた覇気だった。除霊師は息を詰まらせ、体中に嫌な汗をかきながらもそれを何とか受け止める。それと同時に、この男を止めなければならないと、痛感した。この男、放っておけば必ず何かをしでかす。そうなったら、これまでの苦労が台無しだ。霊に余計な刺激を与え、呪いをますます強固にしかねない。危険だ、と、そう思った。

除霊師は懐に手を入れる。戦わざるを得ない。

除霊師が戦闘体制に入れば、同時に麦わらの一味も、ペンギンとベポも、表情を険しくして構えた。

そのときだった、再び、ぐにゃりと世界が歪み、暴風が吹き荒れた。

「なんだ!?」

「これは……」

 

「呪いが無事解けたようですが…………はて」

 

 

一際大きく風が吹き荒れ、目も開けていられなくなる。

ようやく風が収まり、みながゆっくりと目を開けたとき、周辺の景色は一変していた。

そこは大きな、とても静かな水辺。海だろうか。広く、先が見えない。その水辺を、遠い見えぬ奥へと向かって何人もの人が、歩いていく。水音も立てず、静かに渡っていく。

先ほどまでの怨念渦巻いていた世界とは程遠く、静かで穏やかな景色に、誰もが戦いを忘れて目を奪われた。

同時に、誰もが気づいた。彼らが向かう先、遠い水平線の向こうは、あの世と呼ばれる世界なのだと。

そして、その畔に見慣れた帽子を被る細身を見つけて、ルフィは目の色を変えた。

「トラ男ォオーーーーー!!!」

その呼び声にぴくりと彼は反応したように思う。だが彼が振り向くよりも早くルフィは腕を伸ばし、彼を絡みとって引き寄せた。

「うわっ!」

意外にも呆気なく、ローはルフィの腕に絡まれ、こちらへと戻ってきた。

「キャプテン!!」

再び自分たちの前に現れた、帰ってきたローに、ベポがルフィの腕ごとその体に抱きつく。ペンギンもすぐその傍に駆け寄った。

ローは伸びるルフィの腕をぐいぐい引っ張り、拘束から逃れようとしてはベチン、とゴムの反動で再び締め付けるその腕に困っていた。呆れたようにルフィへとじと目を向ける。

「おい、麦わら屋。離せ」

「だめだ! 行かせねぇぞ!」

ぎゅう、とルフィと共にベポもが抱きついて離さない。そんな二人のさまに、ローは再びため息をついたが、それは仕方ないやつだな、といった許容を有するもので、どこか優しげなものだった。

「馬鹿、いかねぇよ。見送りをさせろと言ってるんだ」

「・・・・・・」

ぎゅう、と顔をローの体に押し付けていたルフィがゆるゆると顔を上げ、ローの金色の瞳を見る。その穏やかな色は先ほどまで打ちのめされ虚ろだったものとは程遠く、でもいつも見ていた強さもない、不思議な色だった。

「いや、だめだ」

そう言って、再びローの背中に顔を埋めてしまったルフィに、ローは呆れた様に苦笑した。

「じゃあ、手、握ってろ」

幼い兄弟に言って聞かすような、優しげな声が再びかけられる。

「ベポもな」

ベポは我先にとローの手を握りこんだ。ルフィもおずおずとローを開放し、代わりにベポの手を握るその腕と掴んだ。ようやく自由を取り戻したローは立ち上がると、右手を二人に繋がれたまま、再び水辺の畔に向かって歩き出す。

そんな3人の横を、どんどんと人が通り過ぎては、水辺へ入り、その先へと向かって歩いていく。

ベポはキョロキョロとそれを見渡した。少し不気味な感じではあるが、もうあの恐ろしさを感じることは不思議となかった。

そうして波際に辿り着く。波がこちらに押し寄せては、あちらへと引き寄せていく。その波が怖くて、ベポはローの腰にぎゅっと抱きついた。ローはあいている左手でベポをなだめるようにその腕をそっとなでながら、視線は遠く、あちらへ向けられていた。そこへ向かって歩いていく人々を、じっと見つめていた。

ふと、そんなローの前に一人の女の子が立った。幼い子だ。あの時、ローが手を伸ばした子だ。ベポの腕に更に力が篭る。ローはベポに苦笑しながら、ラミを見つめた。

「……ごめん、ラミ。やっぱいけねぇ」

そう言って、左手で自分をつなぎ止める白い腕と伸びる腕を指差す。ラミは悲しそうな顔をして一度俯いたが、再び顔を上げたときには強がりの笑顔を浮かべてこくんと頷いた。

そんなラミの頭を、突如撫でる者が現れた。ローに良く似た男。あの文書を書いた男。ローの、父親だった。その人はラミをあやすようにぐしゃぐしゃとその頭をなでた後、同じようにローの頭に手を伸ばした。帽子の上から、容赦なくぐしゃぐしゃと撫でられる。その懐かしい感覚に、ローはこみ上げるものを必死に飲み込んだ。

ふと、白い光がローから溢れ、それが父親の腕を伝って流れていく。ローは自身の腕へと視線を落とした。ローの体を蝕んでいた珀鉛の痣が消えていた。

再び父へと視線を向ければ、穏やかな笑みを浮かべ、ローをじっと見ていた。

そして、ラミを挟んでその横に、今度は母の姿があった。ラミの頭を優しくなで、そしてローの体を包むように腕を伸ばし、そっと抱きしめる。

触れることも、温度を感じることもなかった。だけれども、とても懐かしい感覚がした。26にもなって、まさかあの幼い頃の感覚を思い出すとは。今のローは一船の船長でも、海賊でもなく、ただの、二人の子供だった。ローは甘えるように母へと頬を寄せる。しばらくして、ゆっくり母は離れた。

大きくなった子を感慨深く見ている二人に、ローは告げる。

「父様、母様、ラミ。……愛してる。ずっと、忘れないよ」

三人は、こちらこそ、と言わんかのように、満面の笑みを返してくれた。

「コラさんにも、向こうで会ったら伝えてくれ」

二度、力強く頷いて見せ、そして少し寂しそうに笑んで、父と母が手を振る。それに釣られてラミも手を振る。

「あぁ。…………さようなら」

そして、三人はローに背を向けると、あちらへ向かって歩き出した。振り返ることは一度もなかった。その背を、ただじっと、ローは見送った。

やがて、三人も、他の人たちも、水平線の向こうへ見えなくなった頃、暗い静かな海の水平線の置くから、真っ白に輝く日が昇る。その日の光を受けて、海がきらきらと輝いた。そしてその光はどんどん強くなる。浄化するように、真っ白に、染め上げた。

 

 

 

この辺の元ネタは零の刺青のEDだったかな? あのラストのシーンなんだか美しくて、不気味で、でも静かで、穏やかで、もの悲しくて、すっごいしゅき。

 

 

 

 

視界を覆った白が晴れたとき、気づけば海はどこにもなくなり、みなは崩壊した町に立っていた。先ほどまでいた町が、無残にも崩れてしまった場所。でもそこは真っ白に染め上げられていた。童話のような世界、珀鉛による真っ白な国。崩壊したフレバンスが、ここにあった。

夜は明けて日が昇り、朝日が真っ白な町を照らしている。そんな真っ白な町の至る所に、朽ちた遺体が転がっていた。だが、先までいた重苦しい世界はもうそこにはなかった。残された残骸がただそこにあるだけだった。

「・・・・・・遺体・・・・・・珀鉛病患者たちの・・・・・・国境を越え埋葬されたはずなのに」

たしぎが眉を寄せながら転がる遺体に視線を落とす。その疑問に答えたのは、今まであまりに静かだったため存在を忘れかけていた除霊師だった。

「念に導かれ帰ってきてしまったのでしょう。ですが、もうこれらに怨念はない」

そういって、除霊師はローへと視線を向ける。

「それにしても驚きました。生贄になるでもなく、念を浄化するとは」

その視線を気にする様子もなく、ローは崩壊した国と転がる遺体を見回していた。その背を眺めた後、除霊師は突如すたすたと歩き始める。その背にスモーカーが厳しい視線を向けた。

「どこへ行く」

除霊師は足を止めることなく言葉を返す。

「私の任務は呪いを解くこと。任務は完了しましたから。もう用はありません」

それだけ言って、除霊師はその場を後にしたのだった。

除霊師が去ったことにより、漸く全て終わったのだと、麦わらの一味は肩から力を抜いた。そして各々はローへと歩み寄る。

「トラ男・・・・・・大丈夫か」

「あぁ、とんだことに巻き込んじまって悪かったな」

「ったく心配かけさせやがって!」

「おれ、もうトラ男帰ってこねぇんじゃねぇかと思って! 心配したんだぞ!」

「うえっ・・・・・・えっ・・・・・・キャプテン・・・・・・」

「おい、泣くなベポ」

「こればっかりは船長が悪いです」

「・・・・・・勘弁してくれ、ちゃんと踏みとどまっただろうが」

 

心配されるローさんおいしい(二回目)

 

 

「トラ男君、この人たち弔ってあげましょう」

ロビンは遺体のそばに屈みこみ、ローを見上げる。その視線を受け止め、ローは頷いた。

「あぁ、そうだな。こりゃ重労働になりそうだ」

「手伝うわ」

「・・・・・・悪いな」

「当たり前じゃない」

腰に手を当て、謝罪を拒絶するナミにローは穏やかに笑みながら視線を落とす。

「全部ほったらかしてきたからな、そのツケがきちまった」

全く、これだけの量。どれだけ時間がかかるやら。そう困ったように笑むローに、ロビンは微笑みかける。

「ちゃんとお別れする時間を、とってもらえたのよ」

「……あぁ……そうだな」

そんな間など、あの時は欠片もなかった。本当に、良い機会かもしれない。

「トラファルガー・ロー」

声をかけたのはたしぎだった。

「どうか、私にも・・・・・・手伝わせてください。お願いします」

たしぎは深く、深く、頭を下げた。表情を硬くさせ、拒絶の言葉に構えながら、それでも決して諦めない決意を持って、深く深く、頭を下げた。

ローはしばらくその頭を見下ろして、言う。

「当たり前だ。どうせここまで巻き込んだんだからな、最後まで巻き込まれろ。人手が足りねぇんだからな」

くっくっく、と人の悪そうな顔で笑うローにたしぎは複雑な表情をしながら微笑んだ。

 

 

ローさんは故郷の人たちを弔う時間がなかったのがほんと悲しくて、その時間を上げたいなぁっていう。

ところでスモヤンはこういうときどうするんだろう。たしぎの横でそっと頭だけ下げるんだろうか。たしぎが下げた後、無言で手伝い始めるんだろうか。どちらでもありと思いつつ、正解がわからない。

まぁこまけぇこたあ放っておいて、麦わらの一味も、スモヤンとたしぎも手伝って、みんなでお弔い。

そんな中、こっそりローさんがふらふらっとみんなから離れる。目ざとく気づいたサンジがその後をつけ、追いつく。(ほんまサンジさん絡めるの好き。でもここポジションペンギンでもいいと思う)

 

「おい、ロー、お前一人でふらふらすんなよ」

「・・・・・・お前らいくらなんでも過保護じゃねぇか」

「自業自得だろ」

「・・・・・・」

苦虫を噛み潰したような顔をするローにサンジは笑った。

「どこいくんだ?」

「病院」

「・・・・・・お前の家か」

「あぁ。多分、いるんだろうなって思って」

 

「・・・・・・ラミには悪いことをした」

「仕方なかったんだろ。どうにもならねぇよ」

「寂しかっただろうからな。早く連れ出してやりてぇんだ」

 

そうして、病院に来て、決死の思い出クローゼット開けて、そこにある変わり果てた妹の亡骸を抱きしめ、静かに泣くローと、その背をそっと見守るサンジさんとかおいしいなぁって。

焼死体はきっついよなぁ……。きっとローさんは遺体の山に紛れ込んだとき、いくつかは見ただろうし、海賊として生きてきて、えげつない遺体は何度も見ただろうけど、かわいい妹がそんな姿になったところを見るのはガチきついだろうなぁ……。

痛かっただろう、怖かっただろう。全部受け止めるよ、そして、それでいて、お前の笑顔も、ずっと忘れないよって、決意して、そっと連れ帰ろうね。

イケメンサンジさんが布持ってきてくれて、それにそっと包み込んで埋葬してあげようね。

 

 

埋葬が終わって、大きな墓が立って、その前で祈るスモヤンとたしぎ。

墓を見つめながら、静かにスモヤンが口を開く。

「ロー」

 

「おれは、ここで見たこと、聞いたこと、全部忘れねぇ」

「・・・・・・そうか」

「あぁ」

「私もです」

 

「きっと、暴いてみせます。この闇を。二度と、繰り返さないように」

「……証拠もねぇのに? 無理だな。もみ消されるだけだ」

「それを決めんのはお前じゃねぇ」

 

「勘違いするな、ロー。お前のためじゃねぇ。おれ達がそれぞれ背負う正義のためだ」

だったらわざわざおれの名を呼んで言うんじゃねぇよ、なんて野暮な言葉の代わりにローは静かに笑った。笑われたことに少し不服そうな顔をしつつもスモーカーはどこまでも真剣な顔で、墓を見つめて誓うのだった。

「この国のことは、忘れねぇ」

 

 

不器用なスモヤンかわかっこいい。

 

 

 

エピローグな感じ。

 

「さて、船にどうやって戻ったものかな。ここ、北の海だぞ」

「何とか偉大なる航路に入らないとね」

「そもそも船はどこだよ」

「お前らの船ならそこにあったぞ」

「はぁ!? ちょ、座礁なんてレベルじゃねーぞ!!!! おい、どうやって海まで運ぶんだよ!!!」

「ねぇキャプテン、麦わらたちも大変だけど、おれ達も大変だよ! おれたちの船、多分新世界に残されたままだ!」

「大丈夫だって、一緒に乗ってけよ!」

「いや、乗せるのはいいけど、まず乗せるにいたるまでがだな!」

「お前らのよくわからねぇ能力使ってたら何とかなるんじゃねぇのか」

「それこそお前の能力が一番使えそうだろ。あのタクトとかいうやつ」

「馬鹿言え。ここをどこだと思ってんだ。四方八方を国に囲まれている大陸のど真ん中だぞ。そんなところまで運んでられるか」

「船長、ぶっ倒れかねませんね」

「うるせぇ。結構疲れんだよ、あれ」

「まぁみんなで力合わせりゃなんとかなるだろ!」

「まぁそれはいいとして、新世界に戻るのも大変ね……それに今食料も物資もお金も乏しいのよ」

「そうだな。巻き込んじまった詫びと世話になってる礼だ。どうもここの異変のせいで周辺国家は疫病が流行ってボロボロらしいじゃねぇか。ちょっくら治療費ふんだくって麦わら屋にくれてやるとするか」

「おぉ、ドクトリーヌみたいだな!」

「お前、許してんのか恨んでんのかなんともわかりづれぇこと言うなぁ、おい」

「へへ、命が金で買えるんだ。いいじゃねぇか。なぁ?」

「アイアイ、キャプテン!」

「おれも手伝うぞ! トラ男!」

「キャー助かっちゃう! トラ男君、がんばって! 金額交渉なら任せてね!」

「……患者を殺さねぇ程度にしとけよ、ナミ屋……」

 

みたいな感じで日常に戻っていくEND。

ってことで好き放題妄想したフレバンスホラーネタでした。楽しかった。

妄想段階ではもうちょっとコラさんとだらだら会話してたんだけど、だらだらしてたからこれくらいさっぱりすっぱりいったほうがいいかなと。今回はコラさんメインじゃなくてフレバンスメインの話だしネ!

しっかし麦わら一味全員を相手に戦う気だった除霊師さんはどんだけ強いつもりでいるんだ……。まぁきっと特殊能力者ってことで倒せないけど煙に巻く方法があったのかもしれないっていうご都合設定にしておく……。

しっかし、ワンピースの世界って国=島国って感じがあるなか、フレバンスは国に囲まれててなんかすっごい大陸感があるよね。北の海は結構ひとつの島が大きくて大陸っぽいのかなぁ?それともフレバンスが国として小さすぎたりするんだろうか。実は県くらいの大きさだったりするの?白い町なんって呼ばれてることから、実は町並みに小さかったりするのだろうか。ウゴゴゴ

ちなみにこのネタ妄想してたときは、アルトネリコ2のボス曲 通称「コワレロ」をヘビロテしてたときでした。歌ってる人=フレバンス亡霊ってことで。

最後のほうの歌詞の

「汝等は禍害なるかな禍害なるかな禍害なるかな 大いなる審きに撃たれよ審きに撃たれよ審きに撃たれよ 差し伸べよ血肉の購い血肉の購い血肉の購い 愚昧なる獣の群集よ 相応しき業報に塗れて壊れろ!!」

って捲くし立てるところがかっこよすぎて震えてた。厨二病サイコーーーー!!!!!!

 

しかし、霊を鎮める方法とか全部クソ適当にもほどがあるのだが大丈夫なんかねこれ^p^;

まぁ雰囲気妄想ネタってことで……。

あとせっかくペンギン入れたのに空気……。ペンロ好きなのになぁ。

Comment

  1. 匿名 より:

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    • 内緒 より:

      こんにちは、初めまして!
      こんな妄想書き殴りを読んで下さりありがとうございます。いやぁ~、ホラー話私も好きなので同じ趣味の方に出会えて嬉しいです!
      ドライに見えてめちゃくちゃ情に厚いローがどんどん飲み込まれていくのが私的にも一つの萌えポイントなので、へへ、そう言って頂けてほんと嬉しいです/// 心配され愛される様ってほんといいですよねぇ~~! こういうお話ほんと五万と読みたくて///
      やっぱ白い町の悲劇から救い出してくれるのはコラさんだろ~~!って思ってぶっこみました!

      ボカロききますよー! 教えていただいた曲は初めて聞いたのですが、本当にめちゃくちゃローさんを彷彿される歌詞の数々と驚異的な中毒性をもたらす曲に私も「ギョワァァアアア!!」ってなりました! MMDでやりたいくらいです! これはすごい……。素敵な曲を教えて下さりありがとうございます! めちゃめちゃ滾りました……っ!

      ご感想ありがとうございます! 本当にめちゃくちゃ嬉しいですっ! 是非また気が向かれましたらお越しください!