もしもローさんが船長してなかったら~ もしもローさんが原作よりちょい臆病だったら~ もしもドフィさんが本気でオペオペ手に入れようとしてたら~ もしDRが13年前には既にドフィに占領されていたら~
この物語ではスワロー島でペンシャチという拠り所を自ら放棄してベポつれてるとはいえ独りで戦い続けてるローさんが、麦わらに絆されて麦わらという拠り所見つけるまで~っていう。つまりは麦わらの一味inローのif世界のお話です。
※注意事項※
原作時系列改変しています。ドフラミンゴがドレスローザ占領するのは14年前。ローがまだドンキホーテにいるとき、と原作より早くしてます。これによりドンキホーテは北の海→新世界→北の海って超反復横跳びかましてることになるんですが、まぁ二年近くあったらわんちゃんいける……か?w こまけぇこたぁ気にしたらいけねぇんだよぉ!!!!!
ハートの海賊団存在しません。ローはベポだけ連れて海に出ました。ペンシャチとは原作通りに出会いましたがスワロー島に置いてきてます。ハートも好きだけど麦わら一味の中にいるローも好きなんだあ。
落ちも途中も何も考えずに見切り発車で書き始めてるので途中で放り投げる可能性大大大の大。
白い町フレバンスが悲劇の国と呼ばれて一年程。そこから遠い新世界の海で、またひとつの国に悲劇が生まれた。
白い町の生き残りである少年は、白い痣に侵食された顔に一切の表情をのせず、燃える国を城から見下ろしていた。
何もかも、すべてを壊したいと願う彼の前に、壊した世界の一部が広がっている。
国とは、こうも簡単に壊れるのだ。
もはやこの城はドンキホーテ・ドフラミンゴのもの。この国の王は、ドンキホーテ・ドフラミンゴとなる。
リク王は燃える国の民に醜く蔑まれ失墜した。その全てが仕組まれたことであるとも知らず、民は国を守ろうとした真の王に罵詈雑言を浴びせ、国を燃やした新たな王を賛美する。
真実も正義も、こうも簡単に偽ることができる。そして人は簡単にそれに踊らされる。そしてその偽りの真実と正義を盾にどこまでも残酷になれる。
どうして人とはこうも醜く愚かなのだろうか。
年齢に相応しくない濃い隈の上で、どろりと濁った瞳は燃える国を見下ろし続ける。
愚かしい。壊れればいい。そう思う一方で、この新世界というあまりに遠く離れた地にて行われた惨劇に、じくりと胸が疼きもした。
もっとも憎んだ世界政府と同じことをしているのだから。
これがもしフレバンスの周辺国であったなら、きっとこんな迷いは生まれなかっただろうに。ここはあまりにもかの地から遠すぎた。
ローは小さく口を開き、息苦しく感じながらか細く息を吐く。
憎しみでいっぱいの小さな胸に、変な迷いが混じり、気持ち悪さを与える。
無だった表情が、くしゃりと歪む。その小さな肩に大きな手が触れた。本当に大きな手だ。身も心も全て掴み取られそうな程に。
少年が振り向けば、そこには桃色のコートに身を包んだ王がいた。特徴的な笑い声をたてながら、少年が見ていた景色を同じように見下ろす。
「面白ェだろう」
そう言って、彼はローの迷いを笑い飛ばすように、この光景を見下して言う。
「正義なんてこんなもんだ。民衆が正義だと宣うものなど、勝者が掲げる勝手な言い分だ。負けた奴は名誉も真実も何も主張できず、ただ蹂躙されるだけだ。……お前はもう、わかっているだろう?」
胸の内の迷いがじくりと痛みを伴い、しかしゆっくりと静まっていく。
「……あぁ……わかる」
ローはそう答えながら、再び壊れた世界へと目を向けた。
世界政府が勝者であり、フレバンスは敗者であった。それだけなのだ。たったそれだけで、世界はこんなにも簡単に壊れるのだ。
「弱ェ奴は死に方も選べねェ」
またじくりと更なる痛みが生まれる。
フレバンスを出るときに見た、多くの遺体が脳裏を駆ける。転がる沢山の友達と、最後まで希望を持とうとしたシスターによって生まれた血の海。折り重なって倒れる両親の遺体。最後まで病魔と必死に戦っていた小さな妹。
それらが全て、弱いからの一言で切り捨てられる痛み。
しかし、それが現実であった。
悔しさと憎しみと怒りが沸々と込み上げる。何もかもを、壊したくなる。
ローの表情が歪む。奥歯を噛み、ぎゅっと眉間に皺が寄る。
そんなローの頭に、ポン、と大きな手が置かれた。先ほどまでローの肩を掴んでいた大きな手だ。その大きさからローの頭は鷲掴みされているかのように見えるが、存外に込められた力は優しいものだった。
「何を負け犬みてェな顔をしている。ロー、お前はもう、こちら側だ」
ローが再びドフラミンゴへと目を向ければ、彼はあの見下した笑みを引っ込め、真っすぐローを見ていた。
「お前はもう、奪われる側じゃねェ。お前は今、こっちに立っている」
とくん、と心臓が鳴る。
この感覚を、ローは知っている。自分の中の何かが変わるときの感覚だ。フレバンスから逃げる為に初めて人を殺したときには、もっともっと強く感じた。
一度目を瞑り、再び開ける。そして燃える国をまた、見る。もう、あのときの、無知に踏み荒らされる感覚を思い出すことはなかった。
今、自分はあそこにはいない。こちらにいる。
「真実も正義も、勝者が塗り替える。強くなれ、ロー。お前には期待している」
頭の上の重みがなくなった。振り向けば、ドフラミンゴは桃色のコートを翻して去っていく。その大きな背を、ローは見つめた。
その隣に立つことは叶わないだろう。そう思った。この命はそんなに長くないのだ。
だが、あの男はきっと、ローの願い通りに全てを壊してくれる。
その糧になれればいいと思った。
その思いを受け取ったかのように、カツンとひと際大きな足音でドフラミンゴの動きが止まる。
「ロー。お前の病気を治せる悪魔の実があるという情報が入った。北の海からだ」
ぱち、ぱち、とローは二度瞬きをした。特に感慨はなかった。憎しみで一杯の思考は、死への恐怖も生への希望も入る隙間がなかった。
「北の海へ戻るぞ」
国を一つ手に入れたばかりだというのに、ドフラミンゴは簡単にそう言って立ち去った。
国を奪い取った直後だ。後処理には時間と手間がかかるだろうに、可能なのだろうか。そうまでして、いつ死んでもおかしくない自分にあの男は何を賭けているのだろうか。
不思議に思うローの視界の端に、黒色のコートが映る。顔にピエロのような化粧をした男。
新世界に入ってから合流したドフラミンゴの弟だ。
彼が暗闇にまぎれる様にどこかへ歩き去っていくのを、ローはなんとなしに見つめた。
あれから十一年。
ローは死ななかったが、今、ドフラミンゴの隣にはいない。
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「ドクター! もうすぐ着きますぜ」
波に揺られる商船の甲板。キャスケットの下で眠るように閉じられていた目が開かれる。金色の目に遠く薄っすらと見える砂漠の島が映し出される。
天気は良好。それどころか雲ひとつ見えない。何にも遮られない直射日光がじりじりと肌を焼いた。
「暑いな」
「アラバスタは砂漠の島だ。あんた、そんなもこもこの帽子かぶってちゃ死んじまうぜ?」
「いやいや、それより連れのがやばいんじゃねェか」
商船の船乗りたちが笑い合う。ローはそっと右に視線を落とす。そこには相棒である白熊のミンク族が這い蹲っていた。ローはその首もとの毛をそっと撫でた。
「ベポ……やっぱり、近くの島で待機するか?」
ローが問えば、ぐったりと伏せられていた円らな目が、けだるげに開かれる。
「や、だ……おれ、絶対ついていくからね、ドクター……」
「置いてきゃしねェよ。ちゃんと迎えに行くから」
「やだ」
有無を言わさず否定だけし、再びベポは目を閉じた。ローは苦笑し、その目元の毛をひとなでする。本来寒さに耐える為に生えた真っ白なもこもこの毛。この暑さの中では耐え難いだろうに、ベポは決してどのような場所でもローから離れたがらない。
本当はベポもこの旅に巻き込みたくなかった。しかし、一人だったらきっと偉大なる航路にすら入れなかっただろう。この愛らしい相棒には何度も命を救われている。海に嫌われたこの身一つで旅をしようなどと、今思えば無謀な考えだった。
だから、今更ベポ一人を置き去りにするつもりはないのだが……。最初の旅立ちの日に黙って出て行こうとしたことをベポは根に持っているらしく、信じようとしないのだ。
ローは苦笑を浮かべたまま、もうひとつの相棒である大太刀・鬼哭の柄に布を引っ掛ける。そうして、ベポに日陰を作ってやりながら、近づくアラバスタへと目を向けるのだった。
それから程なくして、船はアラバスタ王国の港、ナノハナへとついた。
ローとベポが船から降りると、船乗りが水筒を二つ持って追いかけ、それをローとベポに押し付けた。今は金に困っていない。施しは不要であったが、既にバテ気味なベポのこともあり、ローはありがたくそれを受け取った。
「それじゃ、ドクター。気をつけてな。この国は最近反乱軍が力をつけてきている。そんなに治安は良くないぜ」
「あぁ、助かったよ。ありがとう」
「何言ってんだよ、ドクター。こちとら取引のついでなんだ。助かったのはこっちの方だ」
船乗りは満面の笑みを浮かべる。
「なぁ、ドクター。やっぱり名前教えてくれよ。仲間の恩人だ。名前も知らねェなんてのはちょっとな。また何かあったらいつでも手を貸すからよ」
照れくさそうに言う船乗りに苦笑し、ローは特に躊躇うことなく告げた。
「エルだ」
「エル、か。ドクターエル。この恩は忘れねェ。ありがとうな! 達者で!」
「あぁ」
船の上からも船乗りたちが手を振る。ベポはもらった水を一口飲むと、船乗りたちに応えるよう手を振った。
「行くぞ、ベポ」
「アイアイ! ドクター!」
そうして、船乗りたちの送別を背に一人と一匹は歩き出す。
「ドクターエル、ありがとう! 元気で!」
背後からまだ聞こえてくる声。
似合わないなぁ、と、もう何個目になるかわからない偽名にベポは苦笑した。
ふと、顔を上げたベポはローが海の方をじっと見ていることに気づく。その視線を追うと、岩陰に隠れるように停泊している船が見えた。僅かに見える帆には、ジョリーロジャーの片端が見える。
「海賊船かな」
「あぁ」
「どこのだろう?」
「……見たことがねェな。最近偉大なる航路入りしたルーキーか、それとも……」
麦わら帽子を被ったドクロを見やりながら、ローは顎に手を当てる。
近々、ここでは世界の闇の一角が動く。あれもまた、そのうちの一つなのかもしれない。
「情報を集める。酒場に行くぞ、ベポ」
「アイアイ、ドクター」
ややばて気味の声で返事するベポを連れ、ローは砂漠の街を歩き始めた。
バロック・ワークス
昨今、この近辺の海で妙な騒ぎがあれば、大方その名が関わっている。
ローがここへ降り立つまで世話になっていた商船も、前の島にてその組織の末端だろう者に襲われていたのだ。
ただの一介の盗賊とは思えぬ、どこか糸を引く者の存在を感じる事件に、ローは探りを入れ始めた。
当然、正義感などではない。
裏社会に住まうあの男を引きずり出して落とすには、その世界を知る必要があるからだ。
あの男のやり方はよく知っている。誘導し、貶め、操る。そうして、彼は勝者になる。
この目で見てきた。
あれと、どこか似た臭いがする。
あの男が張り巡らせた糸は、莫大な巣となって世界に溶け込んでいる。真正面から立ち向かえば瞬く間にその巣に絡めとられて喰われるだろう。
糸を辿るのだ。一つ一つ、巣の形を調べ上げ、逆に利用し、支点となる部分を探し出して壊す。
それが恐らく、自分にできる唯一の方法。
それは……本来ならばあの人が成し遂げるはずだったこと。
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