カテゴリーとタグ整理してたら、まったくかけらも身に覚えのない昔の没品が下書きログに残ってたのを見つけてしまったので……。 このままぺちっとゴミ箱にぶち込んでもいいレベルなんだけれど、もったいない日本人精神出てきたのでまとめてUPしときます。
なんか雰囲気的に死人に縁ナシの下書きだったのかな?
公開日時2010年4月7日ってなってる(震え声
初めて私がそいつを見たとき、体中から好奇心が湧き上がり、それらはその奇怪な少年に向けられた。
未来から来た少年。綺麗な顔をしているだろうにそれを隠す異様な骨の仮面。そして何より、まだ完成していないはずのシャルティエを持っていた。
変なの。面白い。どうして仮面をつけている? なんでファミリーネームを持たない? 色んな疑問が浮かび上がり、何通りもの推測を立てる。彼の仲間たちはどれも面白いが、仮面の少年が一番私の中では輝いていた。だから、実験と称し、ちょっかいを掛け捲った。
カイルやロニとは違い、見事に私からの攻撃や罠を避けていくそいつには感動すら覚えた。私と張り合える人間なんてそうそういない。だから余計と楽しくなっていった。
ひっそりと続けられるジューダス観察日記。だけど、彼を見ていれば見ているほど、初めて会った時とはまた違った感情が浮かんできた。きっとそれもまた好奇心に類するものなのだとは思うけれど、純粋に楽しい好奇心とはどこか違う、胸に引っ掛かりを覚えるものだった。
何か、こいつ……死んでるみたい。
漠然と感じた死のイメージ。それは彼にピッタリと当てはまり、こびりつき、離れない。
やがて、彼らの時代へと渡り、歴史書を読み解くうちに一つ推論した。
本当に、死人かもしれない。
リオン=マグナス。その名を指でなぞりながら、この部屋の窓からみえるところにいるジューダスを見る。あいつは今、外で遊んでいるカイル達を中心に、この町の様をただ眺めている。仮面をしてはいるが、結構その下にある表情が動くということはしばらく観察していてわかった。今もどこか穏やかな表情でいるように思う。遠いからあまりよくはわからないが。そんな、一見穏やかな彼の様子をじっと見る。
「ジューダス!見てないでジューダスも一緒に遊ぼうよ!」
「断る」
「何で!?」
「休むために町に入って宿までとったのに正反対の行動をするお前に僕は疑問を抱くのだが」
「え~!」
カイルとジューダスが二、三言葉を交わし、やがてジューダスは軽く笑みを零してカイルの前から去ってしまった。カイルは軽く頬を膨らませたが、やがてまたリアラとはしゃぎ回る。当のジューダスがどこへ行ったのか知りたく、私は本を閉じて宿から出た。
探し物を見つけるのには結構苦労した。彼は人気の少ない場所にある大きな木へと登り、その木陰と同化するように隠れていたのだ。
「暗いところにいると、あんた全然見つからないわね」
「何か用か?」
「別に。付き合ってくれるのなら歓迎するけど」
「断る」
「何よ。聞いてくれたのはそっちじゃない」
「実験体が欲しいなら宿裏の酒場にいる男を使え」
「ロニなら使い果たしてデータ有り余っちゃったわ」
げんなりとした目がこちらに向けられた。とびっきりの笑顔で返してやれば更に眉間に皺を寄せて目をそらされた。
「ねぇ、カイルと一緒に遊んでこないの?」
「………生憎、興味が無い」
「ふーん。同い年くらいなのにね」
「カイルの精神年齢はいささか幼すぎるように思うがな」
「あんたの精神年齢もいささか老けすぎてると思うけど?」
からかってやればあいつは一度ため息をつき、もうこちらに視線を向けようとはしなかった。めんどくさいとでも思われたのだろう。つまらない。
「ねぇ、あいつらに交じらないのは本当に面倒ってだけの理由?」
完全にそっぽを向いてしまっている男に対して尚話しかけてみるが、やはり答えてはくれない。この私を無視するとはいい度胸。ま、聞こえてはいるのだろうし、別にいいけどね。
「カイル達と親し気にはしているものの、やっぱりどっかで一線引いてるでしょ、あんた」
「気のせいだろ」
あ、答えてくれた。こいつの性格上図星ならばそのまま無視を決め込みそうなのだが、どうも本人には自覚が無いようだ。
「その仮面が目に見えてよくわかるその線だと思うんだけど」
「……関係ない」
言い淀んだ。なるほど。ではやはり、こいつが本当に一線引いているのはカイル達ではなく、ね。
「ねぇ、あんたは何でカイル達と一緒に旅をしているの?」
尋ねると同時に、ジューダスは寄り掛かっていた大木から背を離し、音も立てずに地面へと降りた。その華麗な身のこなしに少しばかり目を奪われていると、ジューダスはこちらに背を向けて歩き出してしまった。完全に逃げに走ったのは纏わりつかれて我慢の限界がきてしまったのかそれとも、質問の裏にある私が本当に知りたいことに気づいたからなのか
まぁ、もう大体検討ついちゃったんだけどね。
ジューダスへの疑問と好奇心はこれで片付いた、はずだ。だけどやっぱり、すっきりしない。胸の奥にもやもやしたものが残っている。……わかってる。これは問題の公式を求めただけだ。答えにはまだ至っていない。
だが、この公式には、答えがない。
「あー、女の子を追いて行くなんて酷い奴ね。ほんと、酷い奴」
どうしようもないこの気持ちを、とりあえずジューダスへと向けることにした。そうすれば、仮面の少年はまた一つため息をつき早足だった歩みの速度を落とした。私はまだ不満たっぷりの顔をしつつも、それに甘えてジューダスへと追いつき、その斜め後ろをこれ以上何の質問もすることなく歩いた。
離れから町の中心へと戻ってくると人通りも多くなる。町人の視線は自然と私たちに向けられた。
「ねぇ、仮面外せば?目立ってるわよあんた」
「お前の派手な服も似たようなものだろうが」
「あら、そう?」
「僕は自覚しているだけまだマシだな」
「でも気にはしていないところは私もあんたも一緒よね」
「…僕は慣れただけだ」
「私も慣れただけよ」
そんな下らない会話を交わしてみるが、今こうして私が視線を気にしてしまうのは、恐らくいつもとは違う女性からの異質な熱視線を感じるからだ。それは皆、目の前の仮面の男へと向けられている。つまりこの町の女性はジューダスの異様な仮面よりも、その下にある美貌を見つめているのだ。あの仮面、あるのとないのとでは結構違うのだが、彼の整った顔は隠し切れない。と、いうことがこの前こっそり彼の部屋に取り付けた撮影機にて発覚した。無論、すぐにばれて破壊されてしまった為データは残らなかったのだが、遠隔操作機に一瞬写った彼の素顔は嫌でも忘れられなくなってしまった。
ふと、ジューダスが視線を女性たちに投げかける。途端その方向から黄色い声が上がる。ジューダスは小首を傾げながらも眉を寄せて再び前を見据えた。こいつ、理由わかっていないのだろうか。
宿がもうすぐそこに見える。その前にはカイルとリアラだけでなく、ロニとナナリーも一緒に居た。つまり勢揃い。ロニの顔が少々赤いところを見ると、やはり酒を飲んだくれて帰ってきたところだろう。ナナリーはその付き添いといったところか。こちらに気づいてナナリーが軽く手を上げた。何も返さないジューダスの代わりに私も軽く手を上げる。
その時、私たちの前に町の女が三人一緒に突然立ち止まった。
「あ、あの…っ!」
「なんだ」
女たちの一人が緊張した声で話しかけられるが、ジューダスの態度はいつもどおりそっけない。
「お聞きしたいことがあるのですが…!」
「……」
彼女たちの視線は一直線にジューダスのみに向けられているが、一瞬ちらりと話している女は私を見た。そしてすぐさまその視線をジューダスへと戻し、ごくりと喉を鳴らす。
「あの!そちらの方は恋人ですか!?」
「…はぁ?」
「ぶっ」
ジューダスからは間抜けな声が、そして宿の前にいる仲間たちはこっそり聞き耳を立てて居たのだろう。ロニが突然噴出し、そのまま腹を抱えて必死に笑いを堪えている。
「違う」
「そ、そうなんですか!あ、もしかして宿の前に居られるあの赤い髪の人が…?」
「違う。僕にはそんな人はいない」
ジューダスがそういった瞬間、女たちはお互いの顔を見合わせ、また「キャー!」と声を上げて嬉しそうに跳び上がる。不思議な生き物ね。恐らく彼女たちは更にその後、言葉を続けたはずだ。所謂逆ナンパという奴だ。だがジューダスはこれで話は終わっただろうとばかりに目の前に立ち塞がる彼女たちから関心を無くし通り過ぎて行く。
「あ、待って…」
気づいた女が声を上げるが、気にせずジューダスは宿の前まで歩き、仲間たちの前で止まった。これ以上は彼女たちも声をかけてくることなく、再び遠くから熱い視線を送っているだけだった。
「いつまで笑ってるんだ」
「いやーだってよ、お前とハロルドが恋人だって?もう可笑しくって…イデェ!」
笑いの沸点が低くなっていることから、やはりロニは酔っ払っているらしい。軽く酒の匂いがする。ゲラゲラ笑うロニの足を思いっきりジューダスが踏みつけた。
「全く…何で此処の連中は仮面を被っているのに近寄ってくるんだ…」
「あら、っということは女に寄られるのはすでに経験済みだったのかしら」
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