【NARUTO】十尾 – 5 –

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ようはナルトの腹の中にい続けちゃう尻尾と耳の生えたサスケに萌えたのである。

そう思って、長い長い眠りにつこうとした。九尾の檻があった場所に赤き門を作りナルトが入ってこれないように封印を細工する。それに背を向け奥へと向かう。真っ赤な鳥居が幾重にも重なり、それの下を歩いていけば小さいながらも立派な社がある。懐かしい感じがしたのは、なるほど。うちはの居住地とどこか作りが似ているのだ。
家具も何もない俺一人のための小さな住まい。そこに腰を下ろし横になる。体感温度は全くなく寒くないけれど、丸まるように体を縮めて眠りにつこうとした。
どれだけ奥地に身を隠そうとここはナルトの中。ナルトが見ているものは全てここまで伝わってしまうようだ。目を閉じるとナルトが見ている世界がより鮮明に見える。
サクラの悲鳴が届いた。カカシが拳を震わせているのが見えた。俺はうちはなのに、木の葉とは相容れぬ存在であり戦った仲だというのに、カカシもああ見えて甘いやつだ。見たくなくて長くなってしまった耳に手をかけ肌にピタリとあわせることで必死に音を防ぐ。無意味だが、そうせざるを得ない。
ようやく意識がまどろんできた時だった。

やくそく

そうか細い声でナルトがつぶやく。
背中を逆撫でされたような気味悪さが走り、身を起こした。その瞬間、社の周りの空気が一変した。己で握り締めたクナイが迫ってくる感覚。あの馬鹿っ!

止めたい、そう思っただけで封印されたこの地がドクンと心臓のように大きく震えた。思わず空を掻いた手に呼応したように、俺のチャクラがバチバチと音を立てて外に流れた。
ナルトは、傷ひとつなかった。クナイはもう使い物にならないだろうが
俺は好きなようにナルトを通してチャクラを使うことができるみたいだった。

そして、ここから俺の地獄は始まった。
ナルトは完全に自棄になってしまった。何度も約束と呟いては自殺しようとする。果てには任務での無謀行動すらとり始める。何度も眠ろうと試みたが、どうしても放っておけずに何度もチャクラを使った。その度に聞こえてくるナルトの慟哭に耳をふさぎ、俺は何をしているんだと頭を抱えた。
眠れない。

擦り切れていく精神はどんどんと余裕がなくなっていき、怒りは全てナルトへと向かい始めた。
そして、頭を抱え耳を塞いでも聞こえてくる狂った笑い声と更なる無謀を示唆する発言に堪忍袋の尾がとうとうブチ切れた。社の外へと飛び出し、自分で作った封印の赤い門を蹴破り、無理やり外へとでる。さすがに体全てを外に出すことはできないようだった。ならば、と己の意思をチャクラに憑依させて抜け殻を一度門の前に捨て置き無理やり外に出たのだ。

あのウスラトンカチの頭一発ぶん殴ってやらないことにはどうしても気が治まらなかった。

そっか、とナルトは理解した。イタチから突如与えられた力はサスケから十尾を剥がして俺の中に入れるそのときに使い果たしたと思っていた。人柱力は尾獣を抜かれれば死ぬ。サスケを助けないと、と思ったときに体の中から何かが伝えてきた。サスケを殺さずに十尾を剥がすことができる、と
たったカラス一羽丸呑みしただけの力とはとても思えないものだった。それだけでなく、サスケを助けてしまうとは、イタチの兄弟愛には本当に恐れ入る。
もうイタチはおそらくどこにも居ないだろう。イタチはそこまで愛した弟を俺に託してくれた。その思いに全力で答えてやらないと、な。

「サスケ、ごめんな。でも、眠らないでいてくれて良かったってば。そうしてたら俺、何年気づかなかったかわかんねぇ。へへ、俺の自暴自棄も結構役に立ったってばよ」
「……煩い、もう、死んでしまえウスラトンカチ」
「んなこと言って、死なせてくれなかったの誰だっけ」

背後からわずかに見える整った顔がしかめられた。

「サスケ、寝るなってば。一緒に生きよ?一緒に、里を変えよう。俺とお前が合体したんだ。無敵だってばよ!何だってできる。絶対に」
「……嫌だ」
「何で?」
「俺は、木の葉を許せない」
「そうだよな……でも、だからこそ変えよう。二度とこんな世界にならないようにさ。それで、全部変えて、幸せにすごそうってば。俺と一緒に、さ」
「無理、だ……俺は木の葉が憎い!潰してしまいたい!」

サスケの体が強張る。必死に耳を塞ぎぎゅっと目を瞑ってしまった。縮こまったその姿はとても小さく見える。俺の中で穏やかじゃない感情が燻った。サスケをここまで追い込んだ要因は絶対潰してやる。そして、サスケが安心して笑える世界を作り上げるのだ。絶対に

「じゃあさ、なんでサスケは自由にチャクラが使えたのに俺を乗っ取って木の葉潰さなかったってば?」
「な……」

サスケが絶句する。思いつきもしなかったどころか、お前は突然何を言い出すのだと言いたげな顔で一度こちらを振り向いた。うん、ありがとな。サスケ。

「な、大丈夫だってば。もしも本当に抑えられなくなったなら、俺が抑えてやるってばよ。そうやって木の葉を変えていこう。憎しみをもう一度愛しさに変えることができるってばよ。きっとできるってば」

尻尾がぴくりと反応する。それをやさしく撫でればこそばゆそうに逃げていった。それを無理やり捕まえてもう一度サスケごと抱きしめる。そして可愛くなったサスケの耳へと囁いた。

「サスケ、好きだ。一緒に生きていこう」

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