【NARUTO】光 – 01 –

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不意に書きたくなったので。
サスケさんはね、あまりにも重たすぎてシリアス小説書けないよね、なかなか。
ほのぼの書けばいいんだけどさ、小説でほのぼの書けないんだよね。残念ながら。
だったら中学生レベルの絵晒せばいいんじゃねって思いついてウハ良案って思って書く内容考えてたら何故かシリアスになって小説でいいじゃんってなりました。

最終戦捏造。ナルサスです。
サスケの中には九尾の陰チャクラがあって、それの影響があって大切なことに気づけないでいた。っていう設定で。
一応ナルトとサスケ戦闘中……?

寂れた集落
割れた一族の家紋
晒されている民家の床にはこびりついた血の跡
かつては誇り高き一族が生きていた場所

そこに幼き少年はたった一人家紋を背負って立ち尽くす。

少年は半壊している家一つ一つに視線を送る。
すぐに穏やかな笑顔を向けてくれる一族の姿が思い描ける。
透けて見える血の跡に、それが掻き消える。

俺を殺したくば、恨め、憎め

呪いの言葉と共に蘇るのは紅い瞳。
大好きな兄との掛け替えのない日々。
我侭を言うたびに困ったように笑んで額へと近づく指。

許せ、サスケ……これで最後だ。

復讐に身を焦がし年月を経た少年は涙する。
流し尽くしたはずの涙は止め処なく流れていく。

寂れた集落の風景は、人が行き交う里へと姿を変える。
木の葉の里だ。そう認識できる知識を持っていても、サスケはこの景色を知らぬ場所と思った。
いくつも立ち並ぶ民家の間、大きく聳え立つ火影邸、ラーメンの屋台、茶屋。
知らぬ場所で、知らない誰かが、サスケの知る一族達と同じように、サスケでない誰かに笑みを向ける。

――オレが、失った世界だ

そして、少年が大好きな世界だ。
だけれども、此処に少年の居場所はなかった。

過去を求め、一族を失った時の齢となった少年は知らぬ兄弟の笑いあう風景を見る。
サスケは知っている。この風景が、サスケの世界の消失の上に成り立つことを
この世界の為に、サスケにとって世界となるものは全て破壊されたことを

――殺してやろうか

憎しみを覚え、彼は憎しみ続けて生きた齢へと戻る。
背に手を回せば、我武者羅に手に入れた力がある。刀を抜いて、今はもう躊躇うことがなくなった殺意のままに振り上げる。

「兄さん!」

知らない兄弟の弟は、無邪気に兄を呼んだ。
サスケの手が止まる。
知らない兄弟の兄は、にこやかに微笑み弟に答える。

刀が消え、サスケはまた全てを失った齢に戻る。
此処は、サスケの愛した世界だ。
でも、サスケの知らない世界だ。
此処は、サスケの知る暖かな世界だ。
でも、サスケの愛した全てを壊した世界だ。

少年は崩れ落ち、涙で地を濡らす。
誰も少年の姿に気づかない。誰も少年のことを知らない。
サスケにとって何もない世界は再び、誰もいない集落へと姿を戻す。

少年は吼えた。

この暖かな世界を守りたいのはわかる。オレも同じ世界を愛していた。
だけど、何でオレの世界が、一族が、殺されないといけない?
あの人たちは今も暖かな世界にいるのに、何故オレの愛した世界は同じように生きることが許されなかったの?
あの世界を守るための人柱。そんなのは、イヤだ!

少年は一人泣きじゃくる。
世界に向けて叫ぶ。

誰か助けてよ!オレの大好きな世界を生かすための人柱になってよ!
何でオレ達だけこんな目に合わないといけないの?何で差別するの?オレ達は何もしてない、何もしてないよ!

そう少年が叫んだ瞬間。父、フガクの姿が浮かび出る。
同じうちは一族の者を多く背後に従えた厳しい眼差しは、木の葉へと向けられた。

クーデター
発端は木の葉だ。だが、全てが壊れたきっかけは、うちはの反逆にあった。
一族の誇りを守るため。木の葉を支えてきた一族に一切関係ない出来事を原因に起きた差別から仲間を守るため。

そうして全てを失った。

父さん、やめて。母さん、父さんを止めて。
兄さん……待って……っ!

オレは……たまに一緒にいてくれたら、それでよかったのに

サスケの願いは虚しく、彼らはサスケを置いて消えていく。
そしてサスケの世界は闇に閉ざされた。
サスケは目を閉じる。耳を塞ぐ。何も見えない、何も聞こえない世界でも、そうせずにはいられないかのようにぎゅっと力をこめて体を小さく丸める。

苦しい、悲しい、憎い、辛い、痛い。
耐えられない。独りでは、耐えられないよ。

苦しい
終わりにしよう
苦しい
全て破壊しよう
誰か……
そうすればきっと、解放される
助けて
ようやく、安らげる
助けて!!

「サスケ」

随分と久しく耳にした自分の名前に、サスケは目を見開いた。
閉ざされた闇の中に、小さな光が見えた。

それはとても小さいのに、濃い闇の中で強く輝く。

イヤだ。

瞬時にサスケは思う。あの光の先にはまた、オレの知らない世界がある。
オレの大切なものを壊して作られた世界がある。
そんなのは、受け入れられない。光とは名ばかりの、この闇の中と寸分違わない孤独の世界だ。
再び目を硬く瞑る。耳を強く塞ぐ。

だというのに、名を呼ぶ声はそれをものともせず耳に届き、軟いはずの光は瞼を透かして輝きを主張する。

「サスケ、大丈夫。……俺がいるってばよ」

子供のころから変わらない変な語尾に、サスケは再び目を開けた。

「お前……ナルト、なのか」

まだ、お前はそんなことを言っていたのか。

「何で、何でだ」

今やかつての同期も、サクラやカカシですら俺を殺そうとしている。
当然だ。そして俺もまた、あいつらを木の葉として殺そうとした。
お前も、そうじゃなかったのか

何で今もそうやって俺に手を伸ばせるんだ。
お前にとって、俺の世界はお前の知らない世界だろう?
俺が憎む世界が、お前の知る守りたい世界だろう?
お前と俺は、違う世界に生きているというのに、なんで
何でお前は違う世界の為に命を張れるんだ。

それらの疑問はサスケを突き動かした。
少年はそっと、光に手を伸ばす。

その瞬間、光は強くなった。
目を焦がすような光は此処が闇の中であることをサスケから忘れさせた。
真っ白に染まった視界は、やがて先ほど見ていたサスケの知らない世界を作り出す。

いくつも立ち並ぶ民家の間。
先ほどまで一切かかわりのない、知らない人間が通り過ぎていくだけだったその場所に、ナルトがいた。そして知らないはずの世界の中に、サスケもいた。
二人は互いにそっぽを向いて同じようにその道を歩く。
大きく聳え立つ火影邸。
ナルトがいる。そしてまたしても、サスケがいる。サクラもいる。
三人して、顔に苛立ちを浮かべながらタンタンと足で何度も地面をたたいたり、トントンと組んだ腕の上を人差し指で叩いている。
ラーメンの屋台、茶屋。
ナルトが、サクラが、カカシが、そしてサスケがいる。
思い思いにみんな、ラーメンを食べ、団子を購入し、お茶を啜る。

サスケの胸に、暖かいものが苦しくなるほどに一杯に湧き上がった。
その苦しさ故に、サスケは涙を流した。

――あぁ……繋がっていたんだ。

木の葉の里からうちはの集落へと向かうのに通る人気のない湖。
ただ一人でそこにいたオレの後ろで、一人歩くナルトの気配。
時に睨み、そっぽを向いて、そしてこっそり微笑んだ。

闇の中、強くなった光がそのときのナルトの姿を作った。
光の中にあったサスケの手。その人差し指と中指が、光であったナルトの人差し指と中指に絡んでいる。

――ずっと、繋がっていたんだ。

随分昔に、切り捨てたと思っていたモノ。
当時の自分の愚かさにサスケは苦笑した。例えその場で別れても、奥深くで決して切れない世界としてずっと繋がっていたんだ。

ナルトが笑う。
知らないはずの世界が、俺を知らないはずの世界が、全て俺と繋がる。
何で独りだなんて、思っていたのだろう。
里の小道をナルトと歩く姿が、毎度大遅刻をかますカカシを待つナルトとサクラと俺の姿が、ラーメン店や茶屋で並んで座るナルトとサクラとカカシと俺の姿が

独りであることを完璧に否定しているじゃないか。

此処は、俺の知らない世界か?
此処は、俺を知らない世界か?

此処は、俺の世界を壊して生きた世界だ。
だけど、俺の知る暖かい世界と、同じ世界だ。

何も守るものがなく、全てを失い独りとなり、憎しみだけが残された。
そう思っていた。だけど、違った。
大切なものがある。俺にも、まだある。
それだけで、たったそれだけで、憎しみも悲しみも飲み込める。
地獄を生きた兄の強さ。その理由がようやく分かった。

目の前のナルトを見る。ナルトはニッと笑った。
サスケもまた、小さく微笑んだ。

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