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また、あの感覚だ。不思議な感覚。
今まで、ジューダスの知人の姿など欠片も見たことがない。まだ子供だというのにそこはかとなく漂う孤独の闇。
それがジューダスだった。そのジューダスを、待つ人がいる……?
そんなの、初めて聞いた。
「……家族、か?」
昔聞いたとき、「無い」と感情を押し込めたような声で告げられた。
ここでは、ジューダスは唇を噛んで何か言葉を飲み込んだ。
「……ジューダス?」
「違う。……でも、おかえりって言ってくれる。だから帰る。……帰りたい」
初めてかもしれない。ジューダスからはっきりと寂しいという感情を読み取れたのは。
「あっちの町にいるのか?」
ジューダスはこくんと頷き、鎖に閉ざされた門へと体を向ける。
無理やりこっちに連れて来たのは、間違いだったのだろうか。
現実ではこんな話全く聞かなかった。現実世界でも、こいつはその気持ちを隠して俺たちと一緒に旅をしているというのか?
「お前たちのこと……嫌いではない。でも……」
「あぁ……大切な人なんだな」
「うん」
小さく頷いたジューダスの姿は今まで見たことの無いほど子供染みたものだった。
別人のようだ。だが、これが普通の人ってやつだよな。
本来誰もが持っている感情。ジューダスはただ、それを全く表面に出さず、押し隠しているだけ。
きっとこのままダイブを続ければ、思いもよらないジューダスの一面をこうしてどんどん目の当たりにしていくのだろう。
誰がこれ以上引き止められるというんだ。
あの町は確かに環境がよくない。でも、あのジューダスがここまで渇望する大切な人が、あの町にあるというのなら
「なぁ、ジューダス。この町、やっぱりお前にとって気持ち悪いだけのものだったか?」
ジューダスが再びこっちを振り向く。
突然の質問にすぐ答えを用意できなかったようで、何も言わず俺のほうを見てくる。
「……カイル、リアラ、ナナリー……みんなお前を受け入れて何の疑いも持たず暖かく接してくれるだろ。お前が気にしてることについては、ひとまず置いといてよ」
「…………あぁ」
「その暖かさは、お前におかえりって言ってくれる人のと、一緒なんだな?」
ジューダスは思案しているようで、口を僅かに動かしては俯いた。
多分それは、ジューダスの言うその人が、ジューダスにとって特別な存在であり、比較にならないものだったからだろう。あのジューダスが、それほどまでに想う人。
妬けちまうなぁ。
「……一緒、だと思う。でも、何よりも大切なんだ」
でも、ここまで言われちまったら、仕方ないよな。
「恋人か?」
「……違う。お前は本当にそういう方面しか頭にないんだな」
はは、っと笑う。安心したのもあってだ。
恋人として測れず、家族とは断言できない、か
「ま、だったら俺はそれで安心できるからよ。……悪かったな。無理やり連れてきちまって」
「……ロニ?」
「帰してやるよ。この鎖、ぶち壊そうぜ」
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