【TOD2】 dive 続き – 18 –

diveTOD2
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前回も拍手ありがとうございました!
はぁはぁ。今回ちょっと恥ずかしいかもしれない。けれどちょっと耐性ついてきた>w<
さぁああこっからクライマックスまで頑張るぞおおおおおおおお!!!



ハロルドの証言の元、俺はクレスタから出てラグナ遺跡すら通り過ぎ、山へと向かっていた。結構な遠出だ。
しかし、こうして来て見たものの、ルーティさんとジューダスがどこからどう山へ入ったのかはさっぱりだ。木々が生い茂った山はどこからでも入ろうと思えば入れる。こんなところにルーティさんは一体何をしにきたというのだろうか。
適当に近辺の森を歩き回っていたところ、ふと一箇所違和感を感じる場所があった。俺は勘のままに草を掻き分けその場所に近づく。よく見れば、草の根元が若干踏みしめられたような跡があった。そのまま奥へ進めば、やがて草が完全に踏みしめられた獣道のような場所に入った。俺は恐る恐るその道を進み始めた。
「……これ、迷うかな」
そう最初は恐れていたのだが、歩いていくうちにその考えも消えていった。自然とは思えないほど綺麗に道が出来ているのだ。木の枝が道を遮らないように切り落とされた後があったり、時に木の幹に何か記しらしきものがつけられていたり、細い木が切り落とされた後があったりと、間違いなく人が通った形跡がある。
しばらく山を登りながら進むと、突如視界が開けた。目の前には海が広がっている。崖際についたようだ。そこは今まで鬱蒼と生い茂っていた木々が嘘のように無く、背の低い草で地面が覆われていた。崖の先の方に、一本だけ細い木が生えており陰を作っている。その木陰の下に、ルーティさんは居た。
木の根元に屈んでいるその姿は、いつもの姿からは想像できないほど小さく見えた。
「……ルーティさん」
「ロニ!?」
「あ、すみません……」
びくん、と大げさにルーティさんの肩が震え、大きく見開かれた瞳がこちらを見る。相当驚かせてしまったようだ。
「あんた、どうしたの?よくここまで来たわね」
「えぇ、仲間がルーティさんの姿を見かけたみたいで」
「あぁ、ごめん。心配かけた?」
「いえ……」
立ち上がりながら、心配をさせないようにか、ルーティさんは笑みを浮かべる。だが俺はそのルーティさんの様子より、その足元にある石が気になって仕方がなかった。大き目の石が二つ、木の根元に立てられている。そしてその前には花が添えられていた。きっと、今日置かれたばかりの花だろう。
俺の視線を追ってルーティさんもまた足元の石を見た。その表情が切なげに歪められる。
「……お墓、ですか?」
「うん。私の弟の墓」
予想は外れなかった。そうか、弟さんのお墓か。たまにルーティさんは孤児院の子供達を年長者や近所のおばあさんに任せて出かけることがあったのだが、もしかしたらここに来ていたのかもしれない。
それにしても、どうしてこんな遠い場所に。ルーティさんの下へ歩み寄りながら素直に疑問をぶつけた。
「なんで、こんな場所に?」
「綺麗な場所でしょ?」
「えぇ」
海が一望できるここは、本当に綺麗だ。人の気配は全く無いが、風に揺れる木の葉の音と波の音が心地よい。この場所を気に入ったからなのだろうか。いや、だからって、こんな遠く、モンスターに出くわす可能性すらある場所を選ぶだろうか。景色が綺麗だからという理由だけでは納得ができないが、これ以上詮索するのもよくないだろう。
俺が隣に立ったところで、ルーティさんは再び石の前に屈みこんだ。
「この子もね、今のカイルみたいに、とても大きな選択に迫られて、そしていなくなっちゃったから」
あまり詳しく聞いたことはないルーティさんの弟の話に、俺はどう相槌を打つべきかもわからず瞬きをする。ルーティさんはぎこちない俺の態度を気に留める様子はなく、遠い目をしながら続けた。
「だから、なんだか会いたくなっちゃってさ。それで、勝手にお願いしてたの。どうか、カイルを守ってくれますようにって」
「そう、ですか……」
「この子も、きっと悔いてなんかいないんでしょうね……でも、とっても辛かったと思うの」
ルーティさんの声は震えていた。
「何かを犠牲にしないといけない選択……ほんと、……辛いよね」
神を殺す為に犠牲となるリアラ、歴史を修復する為に助けることができなかったカーレルさん、軍の為にアトワイトさんを助けることを躊躇ったディムロスさん、人間らしく生きる為にホープタウンに留まったルーとナナリー、神の眼を破壊するために相棒であるソーディアンを失ったルーティさん達四英雄と、ジューダス。
ほんとに、どうしてこんなに、上手くいかないんだろうな、世界って奴は。
それでも、どんな選択だろうと、苦しみもがきながらも自分の手で選び続けたからこそ、その先に幸福だってあるんだ。
「どうか、悔いの残らないように、選択して欲しいって、そう思うわ」
「……えぇ」
ルーティさんの祈りのような言葉に、俺は頷いた。きっとあいつなら、あれだけ多くの選択を見つめて旅をし続けたカイルなら、きっと、大丈夫だ。
「きっとあの子なら大丈夫よ。ロニも守ってくれるしね」
ルーティさんもまた、そう言って笑った。釣られるように俺も笑う。
「当然です」
「さ、帰りましょうか。ナナリーちゃんに全部任せちゃって、悪いしね」
ルーティさんは立ち上がると足を叩いてズボンについた草を払った。
「あいつなら全然問題ないと思いますよ。うちの奴らよりよっぽどパワフルな奴らを相手してましたから」
「あら、そうなの」
森へと歩き出したルーティさんの後ろへつく。人一人が通れるように作られた自然の中の道を戻る。時には曲がることもあれど、基本真っ直ぐに作られた道は木が俺達に道を明け渡してくれているようにも見える。ルーティさんはここを、何度も行き来したんだろうな。
あ、そういえば。
「あの、ジューダスに会いませんでしたか?」
「ジューダス?」
「俺達が連れてた、仮面つけた奴です」
「あぁ~そういえばいたわね。変な子。別に会ってないわよ?」
俺は「そうですか」と返しながら頭を掻いた。もしかしてあいつ山の中を迷っているんじゃないだろうな。あいつのことだから何とかするだろうけれど、心配だ。
森を抜ければ平地と荒いながらも人の手が加えられた道がすぐそこに見える。付近にモンスターの影はない。ルーティさんを孤児院まで送りたい気持ちも強いのだが、俺は後ろ髪を引かれるような思いもあった。
「ロニ、どうしたの?」
「えっと……そのジューダスがもしかしたら森の中に入ったんじゃないかって思いまして」
「あら、あたしは全然見なかったわよ?気配も感じなかったし」
「あいつそういうの隠すの得意なんですよ」
「……なにそれ、隠す必要ある?」
「あー……シャイな奴なんで」
ルーティさんの表情が嫌そうに歪む。そりゃ隠れて後をつけられればいい思いはしないだろう。苦笑しながら取り繕えば、ルーティさんは「ふぅーん」と興味なさそうに言って、「まぁ、あたしも人に告げずにここに来てたもんね~」と特にこれ以上気にした様子を見せなかった。ほっと一息つく。
「すみません、俺ちょっとだけあたりを見てきますので、先に帰っててください」
「手伝うわよ?」
「いや、大丈夫です」
多分、ルーティさんが居たらあいつ逃げるだろうし。
「そう……でも、あんまり奥に入っちゃダメよ?山を見くびっちゃダメなんだからね」
「はい」
「それに、その子も絶対ここに来たって確証はないんだし、少し探していなかったらすぐ戻ってきなさい」
「わかりました」
この歳になっても相変わらず心配性な言葉の数々に俺は微笑みながら応える。ルーティさん更に念を押した後、孤児院に向かって歩いていった。
その姿を暫く見送った後、俺はもう一度森へと入る。だが数歩入ったところでガサ、と木が揺れて、次には木の上から黒い塊が落ちてきた。
「ジューダス」
忍者かよ。そう思うような俊敏な動きで着地し、立ち上がった細い体に俺は呆れた。やっぱりずっと隠れてやがったのか。
「何してんだよ、お前」
「……別に、少し気になっただけだ。森の中に、一人で行くから」
バツの悪そうな顔で目を逸らすジューダスの姿に俺は思わず笑った。つまり、心配だったのだろう。英雄として名を轟かせているルーティさんだが、やはり一人の女性だ。一人で道を外れて森の奥に入っていくのを見れば俺だってあとをつけた。
「はは、ありがとな」
礼を告げればジューダスは煩わしそうに目を細めた。おぉ、照れてる照れてる。女の子のように分かりやすく頬を染めて顔を手で隠すなんてことは当然ない。何も知らない人間からしたら邪険に扱われているように感じるその態度に、可愛いと思ってしまうのだから、俺は本当に重症だ。
「お前、ルーティさんのこと当時はどう思ってたんだ?やっぱ気になったか?綺麗な人だもんな」
「……お前と一緒にするな」
鋭い紫紺の瞳が睨みつけてくる。そうは言っても、俺だったら惚れてたかもしれない。あの第六階層で見たスープの記憶。ルーティさんからのさりげない優しさを、こいつは確かに感じ取っていたはずだ。
会えばよかったのに
そう、思ってしまう。あれだけ思い出を大切にしていたことを知っている身としては、和解してほしい思いで一杯だ。だが、それを口に出すことは出来ない。口にしたとしても、何も変わらないだろう。あの赤い鎖がある限り。
あの鎖を解くには、第七階層に行くしかない。
ジューダスは森の出口、クレスタへ向かって歩き始めた。狭い道を俺と木の間をするっと通り抜けて前を歩き始めたジューダスの後に続く。
「……なぁ、ジューダス。お前今日はどこに泊まるんだ?やっぱ宿か?」
「あぁ」
「じゃあ、俺もそっちに行くわ」
「……自分の部屋があるだろう、お前には」
「いや、そこはお前……カイルとリアラ二人っきりがいいに決まってるだろ」
言われて気づいた、といったようにジューダスの言葉が途切れた。その様子に俺はくくく、と笑う。出会った当初から最悪の場合を想定しながらも、最善を求めてずっとカイルとリアラを見守ってきたのは他ならぬこいつ自身なんだもんな。
「そんなわけで、一緒の部屋に泊まろうぜ」
「……別の部屋にすればいいだろう」
「寂しいこというなよジューダス。決戦前なんだぜ?」
強請るように言って見せれば、暫くの間のあと溜息と共に「仕方がないな」という許しが降りた。
クレスタに戻った俺たちはそのままの足で宿を取った。その後俺だけ一度孤児院に戻り、ナナリーとハロルドに声をかける。二人の分も宿を取るべきか確認すべくだ。突如六人も押しかけられるほどデュナミス孤児院は大きくないし金銭に余裕もない。カイルとリアラ、ナナリーが孤児院へ、残りは宿の方で寝泊りから食事まで取ることにした。最後にメンバーが分かれて食事というのも寂しいものだが、仕方ない。
カイルの選択の結果も、その後どうするかも、明日の朝、孤児院の庭に集まって聞くことにした。それまでは、自由行動だ。
豪華ではないが、温かみのある宿の一室で、俺はベッドに腰掛けながら、剣を研ぐジューダスを見た。
「なぁ、ジューダス。次が、決戦だな」
「……あぁ」
長剣と短剣、それぞれ抜かりなく準備をしているジューダスの姿に、俺は眼を細める。
「お前は、カイルがどう選択しようが、行くんだろ」
「……」
答えは返らないが、俺にはわかっている。
「俺も行く」
カイルと戦うことになったとしても、神を倒さなければカイルもろとも人類はおしまいだ。俺も、覚悟を決めた。
「そうか」
「おう」
短い会話を交え、一度沈黙が降りる。
明日、大きな選択の末、世界を賭けた戦いが始まる。
俺も、選ぼう。いい加減、覚悟を決めよう。ハロルドに言われてから、ずっとそう心に決めていた。選択をいつまでも先延ばしにするのは、もうおしまいだ。今日が、選択できる最後の期限として見るべきだ。
進むか、進まないか。二人の命を懸けるか、賭けないか。
大切な決戦前にやるべきことじゃないだろうが、何が起こるかわからない決戦前だからこそ、悔いの残らないように今選択すべきだって、決めたんだ。
「なぁ、ジューダス」
俺は、進む。
「お前を、俺にくれ」
「……」
刃を見つめていたジューダスの目がこちらへと向く。意味が分からないという風に、僅かに怪訝な顔をしている。俺は胸の中に渦巻くドロっとした欲求を感じながら、それをそのまま口に出した。
「お前が欲しい」
「……それは、どういう」
「お前の全部が欲しいんだ」
例えそれが寿命を縮める行為だったとしても、俺は全力でこいつにぶつかりたい。思いをぶつけたい。こいつが欲しい。よくわからねぇしがらみなんて俺が打ち砕いてやりたい。心の底から笑えるようになって欲しい。
その為に、俺の全部を賭けていい。こいつがそれによって何かを失うことになっても、全力で俺がその分補ってやる。
「俺、お前のこと一生守る。大切にする」
「一生……?」
「一生だ」
「一生って、どういう……」
ジューダスの表情が怪訝から困惑へ、それから動揺を表していく。
一生大切にする、その決意をしろと、シャルティエは言った。例えジューダスを殺すことになっても、ジューダスが俺を殺すことになっても、大切にしろと。
上等だ。当然、そうならないように、俺は努力し続ける。それでも、もしものことがあったとしても、どんなことがあっても、俺が先に死んだとしても、ジューダスに殺されたとしても、俺はジューダスを想い続ける。
……さすがに、これは言えないけどな。こんなこと言っちまったら、ダイブさせてくれなさそうだしよ。
「例えば、お前が先にいなくなっちまっても、俺はお前を一生想い続ける」
「……ロニ」
「俺が先にいなくなっちまっても、お前をずっと想う。どんなことがあっても、俺はお前を想う、だからお前を俺にくれよ」
赤い鎖も、よくわからねぇ黒い鎖も、何もかも気に食わない。あんなもんに縛られるくらいなら、俺がお前を縛り付けてやる。俺が全力で大切にしてやる。
俺が縛り付けることで、ジューダスは返って不幸になるかもしれない。俺なんかよりもっとジューダスを大切に出来る奴がいるかもしれない。だがそんな妄想はクソ食らえだ。例えそんな未来があったとしても、俺はジューダスを他の誰かにやりたくなんかない。俺が、あいつを大切にするって、全力で大切にするって決めた。
俺は完全に覚悟を決めた。目を逸らすことなく、ジューダスを見つめる。少しでもこの思いが伝わればいい。
ジューダスは苦しそうに表情を歪めた。久々に見る、痛々しい表情だ。
「そんなの、無理だ」
「なんで?」
「なんでって……死んだ人間を想い続けることなんて、できやしない。きっと、忘れる」
凄く、切なく寂しい言葉だった。胸が締め付けられる思いになったのは、実際ジューダスが一度死んだ身であり、死してから十八年経った今を生きて言っている言葉だからだ。何か、思うところがあるのかもしれない。でも、俺は違う。俺だけは違う。
「俺は忘れない」
「……」
「なぁ、ジューダス。お前を俺にくれ」
「……そんなの、辛くないのか」
「辛い?」
「そうまでして、想うのは……縛られるのは、辛いだろう」
俺としては、お前に縛られるんじゃなくて、俺がお前を縛る意気込みなんだがな。どこまでもこいつは、人のことばっかり考えて、どうしようもねぇ。だが、そうだな。この狂気をはらむ想いは、実際辛い。
「そうだな。すっげぇ辛ぇ」
「だったら」
「もう十分辛ぇ。もう手遅れだ」
俺は笑みを浮かべた。色んな感情がない交ぜになって、無理やり口角を上げてるから、不恰好な笑みになってるかもしれない。
「これが、愛するってことなんだな」
ジューダスの瞳が、大きく揺れた。
長い沈黙が落ちる。俺は辛抱強くジューダスの言葉を待った。
「僕は……神を、倒す……それが、一番の目的だ」
「あぁ、知ってる。分かってる」
「どうすれば、いい」
ジューダスは、俺の想いを受け入れた。未だに完全に俺に全てを委ねているわけではないが、それでも、ジューダスは俺の手を取ろうとしてくれている。俺の気持ちに応えたいって思いがあるんだ。
「ダイブ、させてくれ」
「それでいいのか?」
「あぁ」
お前の中に入って、俺は完全にお前を手に入れて見せる。
その為に、第七階層へ。
「ジューダス」
剣を仕舞うジューダスの元へ近づいて、近くなった距離でジューダスに向き合う。
「お前の中の、リオンに会いにいく。お前の過去を見に行く」
ぴく、とジューダスの体が震えた。
いつだったか、理解してもらわなくてもいいと、そう告げたジューダスの過去に、俺は触れに行く。既に許可はもらっているが、再度伝えておきたかった。
「お前の全部を、見せてくれ」
右手で差し出したレンズに、ジューダスの白い手がおずおずと触れる。
その手が、僅かに震えているように見えた。俺は左手でその白い手を覆った。

ロニきゅんの「お前を一生想い続ける」ってのはプルーストのリオンがマリアンに言った言葉を意識してまうす。
「死んだらどうする?」「一生泣くわ」「嘘だ。一生も泣けるものか。忘れてしまうんだ」って言葉がくそせつな過ぎて。
ここは男前ロニが本気で一生想い続けてやってくれ!!!っていう内緒の願望。
こう、私が死んだら、他の素敵な人を見つけてね。構わないからね。
ってお話とか、美談あるじゃないですか。あれもすっごい好きなんですけど、どこまでも縛られて執着してドロッドロに生きるのも嫌いじゃないです^p^
内緒のジュダ像は、表向きは前者、心の片隅は後者。間を取ってたまに思い出してくれたら……って感じかなぁなんですけどね。ロニにはどろっどろにいつまでも想い続けて欲しい、そんな願望を抱いちゃいますw
リオンは本当に、愛に餓えてたから、溢れるほど愛を与えてあげたいです。ロニよろしく!!!!!頼んだぜ!!!!!!!
しかしロニの心理描写完全にミスった。もっと色々前もって書いておいたらよかったなぁ。むつかしいよう。やっぱこういう話は苦手だwwww清書するときにがんばってみよう。でも10回書き直しても納得いくものできないかもしれない。世の小説家はしゅげぇ。
てか内緒は日本語をもっと知るべきやね!

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