【TOD2】 dive 続き – 26 –

diveTOD2
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前回もたくさんの拍手をありがとうございました!
どうすればジューダスを救えるのかなって内緒が考えてやっと出した答えみたいな、第八階層はそんなお話でした。
多分、人によっては「えー!」って思われた方もいるんじゃないかなーって、ちょっとビクビクしてたんですけどねw
見ようによっては酷いお話ですよw 世界なんて捨てちまえ! って、こう、贖罪に必死になってたジューダスの良さとも言える部分を殺しちゃうような話にも思えますしねw
でも、内緒はこの答えに納得しているので、拍手もらえて嬉しかったです!ブヒー!/////
もう後ろを向くのはおしまい! ゆっくり前を向いて歩き始めたジュダちゃんと支えるロニを応援してやってください><
第九話~ラストまで大分お話固まりました! あと少しですね!
でも相変わらず筆が進まないのでちまちまUPりますww^p^;


■■
ふと、目に入ったのは真っ青な空と、穏やかに流れていく雲だった。風に揺られた草が頬をくすぐっている。
「……ここ、は……」
光に飲み込まれて、気づけばこの場に寝そべっていた。
腕の中でジューダスがもぞもぞと動き、ゆっくり体を起こした。
「……ヨウだ」
暖かな気候、日向ぼっこでもしていたかのような心地よさが体に残っている。昼寝でもしてしまいたくなる欲求を堪え、俺もまたゆっくり体を起こした。
俺たちは小高い丘の上にいた。そこからは、あのクレスタによく似た田舎町が見えた。
第二階層から第五階層にかけて、ダイブするといつも初めにいた場所だ。いつもこの場所に立っては、ジューダスの世界を見渡した。その頃と同じように、ジューダスと一緒に辺りを見回す。
晴れた空のどこにも、ずっとジューダスの世界を縛っていた鎖は見えない。
ずっとジューダスに生きる権利を与えないよう縛り付けていた黒い鎖は、間違いなくあの時、すべて消えたのだ。
第七階層の崩壊と、歪な第八階層を経て、ジューダスの世界は、縛られることのないこの穏やかな街へと戻ってきた。
その実感に、目頭が熱くなる。
だが、それも束の間だった。辺りを見回していた俺とジューダスはほぼ同時に、その存在を見つけた。
「……神の手だ」
ジューダスが小さく呟く。この世界を鷲掴みする白い手は、変わらず存在したのだ。
ジューダスが顔を顰める。俺はジューダスの肩をそっと抱き寄せた。
「坊ちゃん!!!」
突如、半分涙声になっている感極まったような叫び声が届いた。
凄まじい速さで、剣がこちらに向かってくる。俺はその剣の名を呼んだ。
「シャルティエ!」
「あぁ、よかった! よかった! 坊ちゃん! よかった!!!」
シャルティエはジューダスの前で止まり、ふよふよとその周辺を舞うように飛んだ。剣ははしゃぐとこうなるのか、と俺は不思議なものを見て思わず笑う。だが、ジューダスの視線が真っ直ぐ俺にだけ向かっていることに気づいて笑みが止まった。
「ロニ? どうかしたか?」
「……ジューダス、お前……」
明らかにシャルティエが目の前にいるというのに、焦点は決してシャルティエに合わない。ジューダスはずっと俺の顔を見ていた。
「いいんだよ、ロニ。……坊ちゃんには、まだ僕が見えないんだね」
シャルティエは動き回るのを止め、ゆっくり俺の斜め後ろの、心の護としてすっかり定位置となった場所へと移動した。
現実でシャルティエを失くしてから、ジューダスはコスモスフィアにシャルティエの存在を思い描けなくなっていると、以前シャルティエは言っていた。
「俺とお前はこうやって喋れているってのに……本当に、わからないのか?」
「君にすら見えなかった第七階層よりは進歩してるよ。でも、僕と君の会話を坊ちゃんは認識できないようだね」
「……」
「?」
思わず眉を寄せてジューダスを見つめる。ジューダスはそんな俺を見て小首を傾げた。
俺がシャルティエに向かって喋っている姿すらあまり反応をみせない。どうもシャルティエに向けて話しかけている姿すら認識できていないようだ。きっと、この状態で俺がここにシャルティエがいると言っても、ジューダスには聞こえないのだろう。
第七階層崩壊の間際、必死にシャルティエの名を呼んでいたというのに、ジューダスにはわからないのだ。
「僕のことはいいんだ。それより、ロニ……ありがとう。本当に、ありがとう」
シャルティエは俺の前へと移動するとコアクリスタルを何度も光らせながら言った。
「お前がここに来れているってことは、コスモスフィアが正常に戻ったんだな?」
「その通りだよ。全部、君のおかげだ。本当に、ありがとう」
ならば、きっと現実のジューダスも目を覚ますはずだ。
虚脱すらも感じる深い安堵が、体中にじんわりと響いていく。
「ロニ、ここは第九階層。坊ちゃんの心の、最深部だよ」
「第九階層……」
そうか、あの鎖を切り裂いていた光はパラダイムシフトの光だったのか。
いつもならパラダイムシフトと同時に狭間へ飛ばされているのだが、今回は次の階層へと降りることとなったらしい。
もう一度、この世界をゆっくり見回した。
「ジューダス。……ここはお前の心の、一番深いところなんだな」
「……あぁ、そのようだ」
ここが、ジューダスの最深部。本当の、心の奥底から想っている世界。
「お前は、こっちの世界に帰ってきてくれたんだな。ヨウの世界に。……俺と、一緒にいたいって、本当に、願ってくれたんだ」
神の手はあるものの、この世界はこんなにも暖かだ。穏やかな気候の中、遠くに見えるヨウの町を眺めてから、ゆっくりジューダスと目を合わせ微笑む。
「嬉しい」
胸の中に湧き起っていた感情を、そのままに告げる。ジューダスは僅かに目を見開き、少し頬を染めて視線を逸らした。わかりやすい照れ隠しの仕草に思わず笑いがこぼれる。
だが、いつまでも浮ついてはいられない。この世界に一つ残ってしまっている問題へと目を向ける。
「でも、まだ信じられないか? 神がいなくなった世界でも、自分が生きられること」
神の手を見上げて、静かにそう問う。
あれが残っているということは、この世界は未だに神が存在する世界として想像されているということだ。
ジューダスは自分の心と語るかのように、目を閉じて胸に拳をあてた。
「……わからない。でも、僕は……浅ましくも、願っている。お前の想いに応えたいって……神を殺した後も、この世界に生きたいって、本気で……願っている」
きっと、その言葉に嘘はない。だからこそ、この最深層の世界は温かなヨウの町を描いているのだ。
ならば、あの神の手は消せないのだろうか。現実世界の神がいなくなるその時まで。
「神の手は、消せるよ」
突然、シャルティエはそう言った。
斜め後ろへと振り向き、シャルティエへと目を向ける。シャルティエのコアがじわ、と優しく光る。微笑んでいるかのようだった。
「ここは坊ちゃんの世界だから、坊ちゃんが強く願えば、その通りに世界は描かれる」
「……でも」
「ただ、それをするには、やらないといけないことがある」
「やらないといけないこと?」
問い返せば、再びシャルティエのコアクリスタルが光った。
「ロニ、坊ちゃんの心を一つにしてあげて」
とても大事な言葉のように、シャルティエはゆっくり告げた。時間をかけて俺の耳に入り込んだ言葉はそれがとても大切な儀式か何かのように直感的に感じた。だが、正直具体的にどうすればいいのかさっぱりわからない。
「どういうことだ?」
「離れてしまった人格を、坊ちゃんがその身に受け入れ直さないといけないんだ。今の坊ちゃんなら、きっとできるよ。ロニが傍にいてくれるんだから」
漸くシャルティエの言わんとしていることが分かった。
「コスモスフィアは階層ごとに人格が生まれるのは当然のことだけど、坊ちゃんは一部の人格を完全に別物として離してしまっている。だから、今ここにいる坊ちゃんは、坊ちゃんの一部でしかないんだ。今の坊ちゃんがどれだけ願っても、あの強大な神の手を消すことができない」
「ロニ?」
俺とシャルティエの会話を認識することができないジューダスが俺の様子を窺うように名を呼んだ。
シャルティエへと向けていた顔をジューダスへと戻す。俺はシャルティエと同じように、ゆっくりとジューダスに伝えた。
「ジューダス……迎えに行こう」
細い眉が僅かに寄せ、ジューダスは小首をかしげる。
「迎え?」
「あぁ。お前の心の全部が一つになって願わないといけない。だから、迎えに行こう……リオンと、エミリオを」
紫紺の瞳が僅かに見開かれ、それからゆっくり一度瞬きをした。
「そうか……そうだな」
虚空へと視点の飛んだ目が切なげに揺らぐ。
ジューダスが殺そうとしたリオン。リオンによって閉じ込められたエミリオ。それぞれ、途方のない想いの元に、離れてしまったのだろう。
それを、再び受け入れるのだ。反射的に恐怖を感じたとておかしくない。
俺はジューダスの肩へと手を回し、体を寄せた。
「大丈夫だ。俺がいる」
少し乱暴に寄せた体が俺の胸へとぶつかる。ぽんぽんと頭を軽く撫でるように叩いてやったら、ふふ、と息を吐くような笑い声の後「子ども扱いをするな」と文句を言われた。
「言われなくても、わかっている」
思わぬ返しに「おぉ?」と素っ頓狂な声を上げてしまった。それにすらジューダスはまたあの笑い方をした。声を上げて笑う姿を、初めて目にした。
「僕も、そう思っていたところだ。……お前がいれば、きっと大丈夫だ」
びっくりするくらい、柔らかい声色だった。それが、花が綻ぶような笑顔と同時に俺に向けられた。しかも身長差から自然と上目使いで、だ。
ぼん、と頭が沸騰した感覚。顔面が一気に茹っていきあまりの熱さに涙腺すら緩みかけた。思わず腕で顔を半分隠してそっぽを向いた。
「なんだそれは。照れ隠しか? お前のそんな顔を見るのは初めてだ」
くすくす、とジューダスが肩を震わせている。少しの間笑うと、俺から離れて一人すたすたと歩き始めてしまった。
その背中はいつもの一人で居ても問題ないといった拒絶を表すものではなく、俺が必ず追いついてくれることを信じてのものだというのが、何となくわかった。
「俺も、初めてだよ。チクショー」
何故だか、物凄く負けた気分だった。そして何故だか、悔しいけれど嬉しくて堪らなかった。
まだ顔がめちゃくちゃな状態で、慌ててジューダスの隣へ走って並んだ。
ふと後ろを振り向くと、シャルティエは俺たちを見守るように小高い丘から動くことなくこちらを見ていた。
「いってらっしゃい。待っています……坊ちゃん」
慈しみの滲む声に、任せとけ、という想いを込めて俺は軽く手を上げた。

なにこのバカップル。内緒が顔面茹るわ。
なんでまだ問題解決もハピエンも完全に迎えてないのにお花畑みたいな状態になってるのwww気づいたらなってたんだ!www
ジューダスもロニも別人一直線ですんませwwww
あれです。第九階層なんで……デレ度5割増しです。
パロ元のままに、第九階層は穏やかにいきますよー。

Comment

  1. まなか より:

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    • 内緒 より:

      まなかさん、はじめましてこんにちは! 内緒です! ないしょです!
      うわぁああん すっごい嬉しいお言葉の数々ありがとうござます!
      せっかく探し出していただいたのに、入れ違いのようにまた数年失踪してすみません><><><

      >>ずっとこのサイトの小説がまた読みたいなと思って数年、諦めずに探してて本当によかったです。・゜・(ノД`)・゜・。
      もうめっちゃそのお言葉が嬉しいです・・・!!!! サーバーが爆発しない限りサイトずっと残しますので気が向いたときに読み返してやってください・・・・・・!!!!!
      感無量です>< 誰かに声をかけてもらえるだけで僕は大変ハッピーです!
      ありがとうございます!

  2. 匿名 より:

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    • 内緒 より:

      匿名さん、ありがとうございます!
      何度も読み返してもらえるのって、ほんと嬉しいです!
      更新は超絶不定期ですが、また数年後忘れた頃に見にきていただいたらもしかしたら増えてたり増えてなかったりらじばんだり!