※R-18 カイジュで初エロでした。神のたまご突入前。
トントン。
もうそろそろ、皆が寝静まっただろう頃。
クレスタの宿の一室、ジューダスが泊まった部屋にノックの音が入る。
ジューダスは静かに読みかけの本に栞を挟んで机に置き、仮面を被った。
鍵を開け、キィと軋む音を立てて扉が開かれる。
そこに居たのは珍しくもカイルだった。
「どうした。こんな時間に」
「………ん、ちょっとジューダスに会いたくて」
珍しく歯切れが悪いその物言い、そして何よりカイルが浮かべる表情も浮かない物だった。ジューダスは無言で部屋の奥に戻り、入ってくるように促す。
ベッドに腰掛、ジューダスは窓の外を見た。
田舎故に澄んだ空気は星を曇らせることなく輝かせている。
この億と輝く星達の中に、今からこの世界を破壊しようとしているものが混じっているはずだ。まだ、その姿も見えていないのかもしれないが
明日は決戦。
間違いなく、最後の戦いとなるだろう。
勝たなければ、神の卵はこの世界を滅ぼす。それを止めるには、神を殺す以外の術はない。そうすれば、この偽りの時代は消え去る。
「ねぇ、ジューダス」
部屋の鍵をかけ、カイルは一歩ジューダスに近づいた。
「………なんだ?」
「……怖い。って思うのは……俺だけ?」
ジューダスは机に置いた本を再び手に取り、栞を挟んだ場所を開ける。
カイルの問いかけに何の動揺もせず、流れるように綺麗な仕草だった。
「恐怖を感じない人間など居ない」
「……そ……っか……そうだよね」
だからこそに、彼がそう返したのが、カイルには悲しかった。
「もう休め……此処よりも、あっちの方がお前も安心できるだろ?」
一度本に向けた視線はカイルへと向けられる。
その目は無機質な仮面の奥からとても優しい光を持ってカイルの元へと届いた。
カイルはゆるゆると首を横に振り、ジューダスの元へと歩み寄る。
そっと、震える手でジューダスの手に触れた。
怖くて、堪らなかった。
パタン、と本がジューダスの膝の上で閉じられる。
同時に、震える手は白い手に包まれた。
(暖かい……)
カイルは思わず、泣きそうになる。
ジューダスはそんなカイルに気付かない振りをして、両手で隠した手へと視線を落としていた。
(ジューダスは………本当に、優しい)
そう思うと、手はどんどんと震えてきた。
この温もりを、手放したくない。
捕まれていない左手で、カイルはジューダスの膝の上にある本を手に取り、机へと戻した。ジューダスの視線が再びカイルへと戻った時、カイルは彼の仮面を外してベッドの上へと落とした。
それは、カイル自身も吃驚するくらい速やかで、ジューダスは目を瞠っている。
普段その紫紺の宝玉に影を落としていた仮面は無い。見開かれた瞳はカイルの目の前にまざまざと曝け出された。
それに目を奪われながら、カイルは左手をジューダスの後頭部へと回し、包まれていた右手でジューダスの左手を掴んだ。
そして、そのまま、無理やりその唇を奪った。
ジューダスは、あまりにも無防備だった。
普段の様とは似ても似つかないくらい、ただ驚愕し、硬直していた。
それは、カイルに対してだからこその油断だからで、少しばかりカイルの胸を痛めたが、それでも、今が好機とそのままベッドへと彼の上半身を倒してしまう。そしてただぶつけていた唇に、カイルは舌を伸ばした。
舌がジューダスの口内へと侵入した瞬間、ようやく、彼は激しく抵抗した。
開いている右手でカイルの肩を押し返し、その隙間にジューダスは足を入れてカイルの腹を蹴飛ばした。
床へと尻餅をつき、カイルは腹を抑える。流石に彼の蹴りは痛い。
でも、やはり普段とは比べようにもならない程やわかったが。
対するジューダスは何とか上半身を起こして右手を唇に宛がっていた。その紫紺の瞳は可哀想なくらい震えていた。普段全く動かない冷え切った宝玉が自分の手によって姿を変えるのに、カイルは少しばかり快楽を覚える。
「血迷ったのか……?カイル……、あぁ、お前、またロニに変なこと吹き込まれたのか………。あぁ、そうか……」
先ほどのことが余程信じがたかったのか、動揺のままに思考をそのまま口にし、それが理由と勝手に結論をつけているジューダスにカイルは少しばかり悲しげな笑みを浮かべる。
彼は何故か、カイルを信頼している。こんなこと、するわけが無い。と
本当に、先ほどのことがただの気の迷いだったなら、彼のその勘違いに甘えて、全て無かったことにしただろう。
だけれども、カイルが今日此処に来たのは、そんな生半可な気持ち故ではない。無かったことになんて、してたまらない。それとは、真逆なのだ。
刻みたい。
「ジューダス………俺は、ジューダスの過去はいらない」
蹴られた腹は、もう痛まない。カイルは静かに立ち上がり、ロニへの天罰計画を企てているジューダスに静かに言った。
ジューダスは再びカイルへと視線を向ける。僅かばかりに、その目に怯えが見て取れた。それでも、カイルは止めてやる事ができなかった。
「ジューダスの過去は、知らなくていい。聞かない。だから、その代わり」
一度は突き放された距離を、再び埋める。
「今のジューダスを頂戴……」
「カイ…ル……?」
いつもは同じ目線だが、今はジューダスがベッドに腰を下ろしているからカイルの方が目線が上だ。それだけでなく、精神的にも立場が完全に逆転してしまっている。いつも手の届かない場所に居るのではと思うくらい高かった彼の存在が、とても小さく見える。
それは、彼が精一杯作り上げた虚像を破壊した証のようで、彼に近づいた証のようで、安堵した。
「いらないから……過去は、いらないから………今だけで、いいから」
一度、カイルは言葉に詰まり、息を吸う。
直接聞くのは、怖い。でも、きっと彼ならこの言葉だけでわかる。
「……未来も……いらないから……お願い」
「カイル……お前…」
ジューダスの表情が僅かに変わった。
普段仮面からの彼の些細な表情の変化を読み取っているから、仮面の無い彼の表情を読むのは思ったよりも簡単だった。
(やっぱり、そうなんだ)
カイルは自分の仮説が当たってしまった事を知った。
今にも泣き崩れそうになったが、拳を握り締め、無理やり押し殺す。
そう、その仮説が正しいならばと、今日は此処へやってきたのだ。
もう、残された時間は少ない。だというのならば
「今のジューダスを、頂戴……」
過去も未来もいらない。
過去にも、未来にも、彼には会うことができない。
だから、今この一瞬の彼を、奪いつくしてしまいたい。
未来を失い、過去を振り返ることなく、残された今を世界に捧げ続けた少年。
その、最後の一夜を、世界ではなく、自分に向けて欲しい。
このまま世界に全て搾り取られて欲しくない。彼のその優しさが愛おしいけれど、悲しくて、憎い。
だって、どうしようもなく
「好き……なんだ」
ジューダスが、再び目を見開いた。
だが、やがてその瞳は冷静さを取り戻し、暖かくカイルを見守っている。逃げることもなく、ただ静かにカイルの言葉を受け止めていた。
その姿に、カイルの視界が揺らぐ。
「好きなんだ。好きなんだ……」
そっと、カイルはジューダスをその腕の中に抱きしめた。
今度は、抵抗されなかった。
それは、優しさから来る同情なのかもしれない。
だけれども、今は、それでもよかった。
「過去はいらないから、未来も、約束してくれなくていいから……」
「……………」
「……今だけ、ジューダスを俺に頂戴……」
そっと、再び彼をベッドへと押し倒した。
2回目の拒絶が怖くて、ジューダスの手を掴み上げ、リネンへと縫い付ける。
ジューダスは手に何の力も入れていなかった。ただカイルの好きなように体を委ねていた。それでも、表情は不安気に歪められている。
「……なに、するんだ……?」
そっと、カイルを見上げてジューダスは尋ねる。初めて年相応の表情を見た気がした。
一緒に居る間、いつだってジューダスは一人で抱え込み、こなして来て見せた。そんな彼が、今、他人に体を委ねている。
ドクンと、カイルの胸が高鳴る。
「抱きたい。……だめ?」
「抱くって……いう、のは……」
「多分、ジューダスが考えてる通りのこと」
ジューダスは一度口を閉ざし、カイルから目を逸らす。
僅かに手に力が込められた。それは抵抗する為ではなく、耐えるように拳を握るものだった。少しばかり震えるその白い手に、カイルは唇を寄せる。
「……でも、俺……嫌って言われても、やっちゃうから……」
「…………好きにしろ」
「…ん、ありがと」
そっと首元へとキスを送った後、まだ床に着いたままのジューダスの足を完全にベッドへと上げてしまい、カイルもその上へと乗った。
許しをもらえても、ジューダスの細い腕は握ったままだった。
離したくない。拒絶されたくない。今だけは
消えて欲しくない。
その存在を確かめるように、再び手首へとキスを降らす。
首筋から胸へと唇を下ろしていく。
陶器のような白い肌はとても綺麗だった。
薄い胸板に耳を寄せれば、トクントクンと心臓が早鳴っているのが聞こえる。
ジューダスは必死にこちらから顔を背けていた。
「……初めて?」
あまりにも体が強張っているので尋ねれば、ジューダスはこちらに視線を向けることなく悔しそうに表情を歪めた。
「こんなことする馬鹿、お前ぐらいしかいないだろ」
それは在り得ない。と思わず即否定しそうになった。
今まで手を出されなかった事の方が不思議で堪らない。仮面を被っていても隠し切れない端正な顔立ちはロニが普段追いかける美女と並ぶどころか上へ行くだろう。
一つ一つの動きが優雅で美しく、気品溢れている彼に、街中の女性だけでなく男共までもがよく振り向いていたのだ。
仮面をしていなかったら間違いなく手を伸ばされていただろう。
実は影ながらロニやナナリーがジューダスを守っているのをカイルは知っている。
「そ…?……でも、良かった。俺も、初めてだから」
流石にずっと手を握っていてはこちらも何もできない、とカイルは右手だけジューダスの腕から離した。瞬間、ジューダスはその腕で自分の顔を隠す。
綺麗な紫紺の瞳が見れなくなったのは寂しいが、その仕草が何だかとても可愛かったので気にせず彼の右腕を拘束したまま右手で彼の肌を暴いた。
腕を掴んでいる為、完全に脱がせることはできないが、胴体を露にする。
腕に引っかかっている黒い服との差もあり、本当に真っ白な肌だった。
「カイル……」
「ん、なに?」
清楚なベビーピンクの飾りが露になれば、流石にジューダスも恥ずかしさが限界に来たらしい。顔を赤らめて目を隠していた腕を一度下ろし、瞳を潤わせて祈願の目をカイルに向ける。
だが、カイルは動きを止めることなく綺麗なそれへと舌を這わせた。
「ひっ………」
「本当に綺麗だね」
そこを舌で舐められる等、本当に初めての経験なのだろう。
普段過剰な触れ合いを拒む彼の精神が拒否反応を示すのも仕方が無い。捕まえていたジューダスの左手に力が篭った。右手がカイルの髪を掴もうとするのを左手で捉え、再びリネンへと縫い付ける。そして今度はジューダスの両腕を束ねて右手一つで拘束した。
いつもはその腕からとんでもない剣技が繰り出されるのだが、カイルの右手一つで足りる程細い。ピクピクと震える手を右手に感じながら、胸への愛撫を再開する。
「カ、イル……」
「………ん………」
「あ、…かり…」
「…ん?」
「灯り……消せ………そういう、ものだろ?」
「別に点けててもやる時はやるみたいだよ」
「そんなの、誰に…」
「ロニ」
「……………」
あ、ちょっと殺気立った。
でもこんな時に他の人のことを考えるのは良くない。カイルもまた少し苛立ち、ぷくりと立ち上がった乳首を甘噛みする。
「いっ…!?……う……っ」
相当驚いたらしい。首を持ち上げ、ロニへ向けていた怒気をそのままカイルに向けてキッとジューダスはカイルを睨みつけた。だが、その目は涙で潤んでいて何時もの絶対零度の睨みには程遠いどころか、カイルの熱を上昇させるものでしかなかった。
カイルはにっこりと微笑み返す。悪戯を悪びれない子供の様に。ジューダスはまた悔しそうに瞳を震わせ、首から力を抜きリネンに沈んだ。
「カイル…」
「ん?」
「……灯り」
「ジューダス、見れなくなっちゃうじゃん」
「…………灯り、消せ」
こんな状態に陥っても不遜な態度であるジューダスには感服する。
でも、やはり本人は相当一杯一杯になっているだろう、流石にこれ以上苛めるのは気が引けたのでカイルは一度体を起こし、開いてる手で灯りへと手を伸ばした。
「はい。これでいい?」
部屋が完全に暗くなり、ジューダスは途端に力を抜いた。余程灯りを点けたままは恥ずかしかったらしい。だが、月明かりが眩しすぎて、カイルには暗くなってもジューダスの姿がよくわかる。
カイルは自分も上の服を脱いでしまい、ジューダスを抱きしめながらその唇へと自分の唇を重ねた。服越しではなく、地肌が触れ合う。ジューダスの熱が直に伝わって、カイルを興奮させた。
先ほどは失敗した口内への侵入を今回は果たす。
逃げる舌を無理やり捕まえて、思いっきり吸ってやる。
「んふ……んぅ……んんーっ……う、……ふく……」
夢中で貪っていたら、弱々しく抵抗され始めて少しムッとした。
だが、どうにも嫌だからではなく窒息しそうになっているからと気付き唇を離してやる。
途端ぜぇはぁと荒い息を吐き始めた。
「あ、ごめん。やりすぎちゃった?」
「はっ……はぁ、……っ、……窒息死させる気か…っ!」
「ごめん。ごめんね?じゃあ今度はこっちにする」
そう言って、再び彼の乳首へと舌を這わす。ピクンと体を震わせる彼に気を使うことなく、片方の手でもう一方の飾りも摘んで揉みくだした。
恥ずかしさと僅かな怯えからか、興奮して先ほど乱れたジューダスの息は整うことなく、どんどんと上がっていった。
「はっ……ちょ、と……待っ………」
強く刺激を与えれば、白い体は過剰に反応した。
カイル自身も初めてなので分からないが、恐らくジューダスは人よりも感度が高い。
自分の与える刺激によってピクピクと震える華奢な体が愛おしい。確かに、彼は今此処で自分の行為によって感じているのだ。
彼が今此処に居る、その証が目の前にある。その感覚に満足していたカイルだが、ふと当の彼へと目を向ければ、自分の体に何が起きているのか分からないと言った風に、唖然としながら息を荒げている。
(あぁ……もう、早く繋がりたい)
ちゅ、と最後に吸い上げた後、胸から顔を離すとカイルは今まで拘束していた手を離し、ジューダスのズボンを一気に脱がした。途端閉じようとする股を無理やりこじ開ける。
ヒッソリ立ち上がったジューダス自身が彼の震えにあわせて揺れていた。
恥ずかしさから涙目になり、顔を真っ赤にしているジューダスをあやす様に、彼の自身にキスを送る。
「ひっ…な……っ」
「感じてくれたんだね。嬉しい」
「………っ」
「大丈夫。俺も一緒なんだ。ほら?ね」
そう言って、カイルもまた自分のズボンを下ろし、勃ち上がったそれをジューダスに見せた。当然彼は真っ赤だった顔を更に赤くして顔を背ける。
ようやく自由になった手はぎゅっとシーツを握り締めて震えていた。
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに、ジューダスとても綺麗だよ?」
そうカイルが真顔で言うと、彼の肘が突如カイルの腹に向って突っ込んできた。
腹を上へと突き上げられ、カイルは「い、てて、げほっ」と腹を抑えながら笑う。あぁ、きつい照れ隠しだ。それでも、やりすぎたかも、と少し反省と心配の色を含んで見上げてくるジューダスが可愛いので、腹の痛みは幸せへと変わる。
(それに……)
普段あれだけ露出度の少ない格好でいるのだ。それが、今は殆ど全裸でカイルの前に曝け出されている。愛おしい人の全てが、目の前に曝け出されている。
(あー……我慢できるかな…)
本当はもっと沢山愛でて、色んな顔を見せて欲しかったのだが、流石にカイルも我慢の限界になってきた。目の前にある可愛い彼自身への愛撫は一先ずお預けだ。
脱ぎ捨てたズボンのポケットから、瓶を取り出し、蓋を開ける。
その気配にジューダスが気付いて頭を起こす前に、カイルは危険な蹴りを繰り出す細い足を持ち上げ、ジューダスの体を折るように押し付ける。
あんまりな格好に紫紺の瞳を真ん丸にして抵抗を始めたが、息も絶え絶えの彼を押し付けるのは簡単だった。
「いや、だ……カイルっ!」
訴える最愛の人の声を無視し、カイルは瓶の中身を指で掬い取る。
そして、そっと彼の奥まりへとそれを塗りつけた。
冷たさに小さく上がる悲鳴をBGMに、カイルはそれを何度も繰り返す。
「ま、待て……な、にしてる……?」
「ん?今から、ジューダスの此処、慣らしてあげないと」
「………は…?」
状況が全く分かっていないのだろう、混乱するジューダスは形のよい眉を不安気に寄せている。小さく、「ごめんね」と呟き、とうとうカイルはそこへ指を進入させた。
「なっ!? い、いた…っ…やめ、痛い…カイルっ!」
「ごめんね、でもちゃんとやっとかないと、もっと痛くなる」
「やだ、やめろ……やだ、そんな、………こ、んな…とこ……」
「我慢して」
暴れるジューダスを押さえつけ、何度も何度もローションを塗りつけ、中を広げるようにゆるゆると指を動かす。その異物感にジューダスは狼狽したが、シーツを握り締め目を硬く瞑り必死に耐えている。
「ひっ………う、……ん、んっ……んぅっ!」
当然だが、とても狭かった。指一本動かすだけでも大変だ。
だが、ローションのおかげでそれも大分マシになってきた。
ぐっと中まで挿入し、中でくいっと指を曲げる。そこにしこりを見つけ、カイルはそれをぐっと押した
「うっ……」
びくんと、ジューダスの体が跳ね上がる。潤んだ紫紺の瞳が大きく曝け出された。
カイルは更にそこを掻いてくすぐり、何度も突き上げる。
すると、先ほどまで苦痛の呻きばかり上げていたジューダスの反応が変わった。
「あっ……な、なに…?あ、ああっ!」
「此処だね?」
「ま、待て…あっあ、あカイ……ま、って…変…だ……変………」
「大丈夫大丈夫」
大分慣れてきたのだろう。指の異物感も減り前立腺への刺激から快楽を追い始めている。快楽の責め苦に身を捩らせる彼の姿はあまりにも艶かしくカイルの興奮を煽った。
再びローションをつけたし、指を一本増やす。ゆっくりと飲み込まれていく指にカイルは口の端を上げた。
「ひあぁ………んくっ……う……ふぅ……ふっ……」
二本の指で再び前立腺を突きながらぐるりと内壁を広げるように掻き回す。
殆ど触れていないのに勃ち上がってきた彼自身も手で覆ってやった。
「カイル、やだ……も、やだ……」
「気持ちいい?」
駄々を捏ねるように頭を振り、いやだいやだを繰り返す彼に、あやす様に触れるだけのキスを送り、彼自身をしごきあげる。たちまち彼の性器は涙を零し始めた。
後ろの方も突き入れるのが大分楽になってきた。大量に使った潤滑剤がぐちゅぐちゅと音を立てているのが堪らなかった。
「…あ、……ひぅ……や、……やだ……や、も、ダメだ……」
「イきそうなんだね?いいよ、イって、いいよ」
「や、だぁあ……ひっ……うぅ……」
既に限界は来ているだろうに、ジューダスはがくがくと震えながら我慢している。
人前で果てることなど、ありえない。そう考えているのが手に取るようにわかった。だからこそに愛撫をやめてやることができない。
イってしまえ。俺の目の前で、全てを曝け出してよ。
「ジューダス……いいよ。イって」
「やだ、や……やめ、…ふ……あ、あ、ああ……あ、や、ぁ…っやぁああぁ!!」
ぐりり、と性器の先端と後ろの前立腺、両方を苛めることで、とうとう彼は快楽の果てに達した。カイル自身は何の愛撫もされていないが、その瞬間自分もまたゾクゾクと体中に何かが駆け巡ったかのような快楽が走った。
その余韻に浸っていたのだが、「ふっ……」と辛そうな声が聞こえてきてカイルは顔を上げる。
あのジューダスが、泣いていた。
快楽の絶頂によるものと、またそれによる恥ずかしさとで、その紫紺の宝玉から一筋、二筋と涙が転がりシーツに染み込む。
(な、泣かせちゃった………)
彼の涙など一生見ることが叶わないと思っていた。それくらいこの気高い人は弱みを見せることが無かった。それを、こんな形で見ることができるとは
動揺と罪悪感を越える歓喜がカイルを支配した。
手を口に当てて今も尚これ以上抵抗することなく耐える姿勢でいる彼の愛らしさに胸が高鳴る。
(だめだ。やばい。可愛い……もう、ほんと……ジューダスには困るよ)
薄く苦笑いし、カイルは再びジューダスの唇へと自分の唇を押し付ける。流石に可哀想なので舌を入れることはせず、代わりに彼の唇をそっと舐めた。
「……もう、いいよね」
「は………ん、……ぅ…?」
「ごめん、出来る限り、優しくするけど、ごめんね」
「……え?」
達してから呆然としていた彼に話しかけ、足を担ぐ。
もう、我慢の限界なのだ。
「あっ、あ、あ、な、何……あ、あぁあああっ!!」
ずん、と無理やり挿し込んだ。
それは一瞬目の前で火花が散り、真っ白になるような快楽とも痛みともつけがたい感覚だった。
ただ、ジューダスの方は間違いなくカイルより痛みを感じているだろう。ず、ず、ずと奥まで挿入し、その状態で一度ジューダスを抱きしめて動きを止める。
「あ、うぅ……う、うっ……んぅ、……ひっ……ぅ…」
「大丈夫、もう全部入ったから、まだ痛い?」
「ぅ………っ」
「うん、ごめんね。もうちょっと、待つから」
痛みによってガチガチに強張っている体を抱きしめ、あやす様にその背中をさする。
暫くの間、そうしていた。
今すぐにでも動き出したい本能の欲求はカイルの中に駆け巡るのだが、ただ、今はこうして彼を自分の中に抱き、確かに今ジューダスと繋がっているという感覚が強烈な刺激により分かる。それだけで満足できた。
「も……いい、から……もう、いい」
それでも、やはり本能の方が内側から溢れようとしたところで、細い手がカイルの肩をそっと掴み、ジューダスはか細い声でそう言った。
痛み、快楽、疲れ、色んなものから朦朧としている紫紺の瞳が必死にカイルの目へと視点を合わせようとしている。
カイルの本能が爆発した瞬間だった。
「ねぇ、ジューダス。わかる?俺、此処にいるの」
「あっ……ひっい……いっ………ああぁあ」
理性を捨て、獣のように愛しい人に食いつき、腰をがつがつと振った。
その振動に振り回されるジューダスが悲鳴を上げる。
「今、繋がってる………はっ、……すごい、感じるよ。ジューダスも、感じてくれてるよね?」
「うっぅ……あ、ぅっ…はっ、あ、…ふぅ、ん…」
前立腺を狙って突き上げれば、声が甘くなる。
己の送る刺激に感じ、ジューダスの中がぎゅっと締まった。
強い強い一体感。カイルとジューダス双方の熱が交わり、気候の良いこのクレスタの夜を熱帯夜にしたてあげる。
ポタポタと、シーツに汗が落ちてシミを作った。
「もっと、奥行きたい」
「…あ、あぁ、あ、あ、あああぁああっ!?」
更に細い腰を折り曲げ、突き上げを強くする。
深く繋がる起きに、内側から感情が溢れる。
汗に混じり、カイルの涙が同じようにシーツに吸い込まれる。
愛しい人を抱く情事の最中に涙を流すなど、みっともないことこの上なかったが、涙が止まらなかった。
「ねぇ……俺、絶対忘れないよ、この夜のこと」
一度ピストン運動を止め、カイルは繋がったまま強くジューダスを抱きしめた。
そして幾度目かのキスをする。
上でも下でもくちゅくちゅと卑猥な音を立て、絡み合い、奥の奥まで繋がった。
それが、カイルの精一杯の、今の証明だった。
未来が見えないどころか、存在しないのを突きつけられていようとも
今、此処に彼がいて、自分が居て、繋がっている。
そのことが、どんな辛い未来にも負けない強い熱となり体中に溢れる。
今この時、確かに彼は此処にいる。
今この時、確かにその存在は自分のものなのだと
そう感じ、自分の脳裏に焼き付けられることが
幸せだ、とてつもなく、幸せだ。
たとえ、それが今宵限りであろうとも
「ジューダス……好き、……好き………っ!」
「あ、つぅ……あつい……あ、ふっ……うっ」
再びカイルは突き上げを開始する。
振動が刺激となり快楽を生む。この熱は嫌がおうにも刻まれるはずだ。
全てが終わった時、全てが無かったことになるのだろう。
その時、彼は消える。それはとても諦めきれるものではないけれど、逃げることのできない未来なのだ。
奇跡を信じたい。それでも、自分の力だけではどうにもできない先に、彼は行ってしまう。仕方のない事。その一言で終わらせたくないけれど、どうしようもない。
だが、彼を忘れてしまうことだけは、それだけは嫌だ。
全てが無かった事になろうとも、彼が消えてしまったとしても
残った自分が、彼のことを忘れているなんて、そんなこと、絶対耐えられない。
だから、刻み付けたかった。
「好きっ………好き……っ」
消えないで、とは、言えなかった。
ただ、ただ、今この一瞬を刻むことしかできない。
全て自分の為だけの、あんまりな所業だ。
それでも、忘れたくない。
忘れたくないんだ。忘れてたまるものか。
「好きなんだ……ジューダス…ジューダス、……ジューダス……」
「んっ……あ、あ、あ、………あ、く………カ、イル……んぅっ」
めちゃくちゃに揺さぶられている中、突如名前を呼ばれる。
こんな酷いことをしているというのに、彼が呼ぶ自分の声に悪意は一つも込められることはなかった。
「…んっ、……何…?」
大きく振っていた腰を一度とめ、それでも本能から小刻みに彼を攻めつつ尋ねる。
その振動からもがく様に腰を捻ったあと、ジューダスはゆっくりと腕を上げた。
その手はそっとカイルの頬へとあてられる。
「…っ、…………泣く…な」
いつも人より冷たいジューダスの手は、今宵だけは何処までも暖かかった。
涙を拭い取り、彼は息を切れさせながらも言う。
「んぅ……好きに、ふっ……好きに、すればいい…から、だから、泣くな……」
「……ジューダス……っ」
もう、この熱さに頭の中が溶かされてしまったかのように、感情は全てぐちゃぐちゃになってしまった。
ただただ、この愛おしい人を掻き抱いて、めちゃくちゃに突き上げて、今この時を確かめる。ただそれだけを、考えた。
涙も汗に混じって、何もかもが分からなくなって
それでも、今宵繋がっていることだけは、確かに体に残るように
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