ウソップとのお話

OP妄想書き殴り
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「トラ男の能力ってほんと便利だよなァ」

なんの脈略もなく、突如思いついたようにウソップが呟く。

珍しくもローと二人きりの状況。沈黙を嫌って話題を探したのかもしれない。

「ところでよ。色々ぶった切るのに刀がいいのも分かるんだが、何かを入れ替えるなら銃も使ったらめちゃくちゃ強いんじゃねェか? 色々便利になるだろうしよ。持たないのか?」

ウソップは顎に手を当て首を傾げながら純粋な疑問をぶつけた。

シャンブルズというあのチートじみた能力は、そこに物さえあれば好きなように入れ替えることができるのだ。敵の背後をつくことも、そこに物さえあれば簡単といった、不意打ちし放題の恐ろしい能力である。

しかし、出現したい場所に毎回都合よく入れ替え対象物があるかと言えば、そうでない。

空気中の塵やら埃やらでは流石に入れ替えは効かないらしく、自由自在に瞬間移動芸をしている様子はなかった。

ならば、自分の好きな場所へと物を飛ばすことのできる銃をサブウェポンとして持ったならば、戦略の幅は大きく広がるだろう。実際、彼は不敵に笑いながら敵の放った銃弾を利用して入れ替え、幾度も敵を翻弄して見せている。

ローならば、この思考には簡単に至ったはずだ。なのにどうしてそうしないのだろう。純粋な疑問であった。

ローがあの長い刀以外の武器をもっているところは見たことがない。道端の石を拾って投げるくらいなら、銃の一丁でも懐に忍ばせればいいのではないかとウソップは思うのだ。

ローはウソップへと視線を向けた。静かなその視線はウソップの言葉に驚いている様子もない。『その発想はなかった』なんて感じでもないだろう。

しかし、ローの口が開く様子がない。何やら答えあぐねている様子にウソップは更に首を傾げた。

「もしかして、射的のセンスが皆無だったとか?」

そうだったとしたら、ちょっと面白い。なんて考えに若干口元がにやけてしまいそうになりながらウソップは問う。それを見透かされたのだろう。ローはやや不服そうに眉を寄せてから否定した。

「いや……一通りの銃は使える」

「へ? マジかよ。刀しか使ってねェのに?」

「ガキの頃に叩き込まれた」

「そいつぁ……えれぇ英才教育だな……じゃあ、なんでだ?」

ならば尚更、その身につけた技術を使わないなんてもったいない。そう思う。

「……。」

ローは暫く沈黙した。表情は一切変わらないが、やはり答えあぐねているように見える。

ウソップが再び小首を傾げる頃に、ようやく彼は口を開いた。

「音が嫌いだ。あと、匂い」

「あー」

確かに、と納得する。発砲音は打った本人の耳に一番響く。あれは中々耳が痛い。硝煙の匂いも独特だ。

「じゃあ、いいものがあるぜ!」

「?」

ウソップはにっと笑い、大きな鞄の中を漁り始めた。しばらくして、彼が取り出したのは一丁の拳銃。

「ジャジャーン! ウソップ様オリジナルのサイレンサー付きの銃だ!」

ウソップは鼻を高くして自慢の銃の特徴を列挙する。

「狙撃は遠距離から一方的に攻撃できるわけだが、音を発してしまえば居場所がバレちまう! 居場所がバレたら接近される。接近されちまうと辛いのが狙撃手たるものだ……! しかし! そんな狙撃手の救世主となるのがこの銃! なんと音がほとんどなく、ついでにあの独特の匂いも軽減されているのだァ……! これでチョッパーに鼻を摘まれる心配もないぜ! これを作るにはずいぶんな苦労が……」

ウソップは銃をローへと手渡しながらも、この銃を作り上げるのにどれだけの苦労を重ねたのかを語り続ける。

ローは一見、物珍しそうに銃を見つめている。受け取った銃を片手に持ち、軽く一通り見ている。グリップを握る姿は手慣れたものに見え、教わったという言葉が嘘でないのが見て取れた。

「ってーわけだからよ。これなら音も匂いもねェからいいと思うぜ? どうだ。使ってみるか?」

ウソップは自ら作り上げた自慢の武器を彼がどう評価するのか、わくわくしながらローを見る。

ローは無言で銃を見ていた。時に人差し指を起点に銃をくるくるとまわして遊ばせている。早くもその手になじませているような姿に、ウソップは手応えを感じたのだが。

ゴトン、という音とともに、銃はテーブルの上へと置かれた。

「……? 試し撃ちとか、してもいいぞ?」

「いや……やっぱり銃は好かねェ」

「えェー! なんでだよ」

ウソップはがっかりした。自慢の息子のような銃を使ってもらえないのもそうだが、ローの射的の腕も見てみたかった。銃を手で遊ばせる仕草は妙に様になっていてかっこよかった。ウソップが使うのはパチンコであるが、銃にだって興味がある。めちゃくちゃある。ローと射的についていろいろ話もしてみたかったのだ。ついつい口の先が尖ってしまう。

そんなウソップの様子を見たからなのか、それともまた別のものによるものなのか。ローは小さくため息を吐くように笑ったように見えた。

しかし、その口角はとても上がりきっておらず、瞳は真っ直ぐ銃へと落ちてる。しかし、銃を通して何か遠くを見ているようであった。

コツコツ、と彼は置かれている銃のグリップを人差し指でつついた。

「こいつには、たくさん殺されたからな」

「……?」

銃へと向けられ伏せがちになったローの目がゆっくり瞬きをする。そして、淡々とした口調で彼は言った。

「おれの大切な人は、みんな銃で殺された」

思いもよらぬ重たい言葉があまりにあっさりと紡がれ、ウソップは息を呑んだ。慌ててローの顔色を見るも、彼はいつもと変わらぬ無表情だ。

本来、無感情でなどいられないはずの話だ。ローが何も感じないような人間ではないことを、短い時間ではあるがウソップは肌で感じている。

長年、数多の感情に苛まれてきたのをずっと抑えてきたような。感情を殺し続けてきたような……そうして、疲れ切った末に生まれた諦観のような、そんな無表情だった。

それ故に、このような大事な話を何事もない雑談のように口に出せるのだろう。そのことが、あまりに奇妙で恐ろしく感じた。

いや、自分が口に出させてしまったのだ。

「わ、悪い……」

「別に、よくある話だろ」

「……。」

ローは無表情の上にぺたりと笑みを乗せて見せた。何事もない話だろう? そう言い聞かせるように。

やはり、ちぐはぐで、奇妙に見えた。

「だから、まぁ。好かねェんだ。悪いな」

「……そっか」

ウソップは手渡された銃をいそいそと鞄に戻した。

それから、ローは本当に何事もなかったかのように、先ほどの銃に使われた消音技術について興味を示して質問をしてきた。

ウソップは内心勘弁してくれと冷や汗をかきながら適当に答え、なんとか違う話へと逸らそうと話題を探した。

 

 


別に銃は撃とうと思えば全然撃てるし、必要に駆られればローは撃つこともあるんだけれど、必要ないなら撃とうとは思わないし、懐に入れておきたくない。そんな感じの好かないなぁっていう。設定。

別に銃がそこにあったり、銃声聞いたりしたらフラッシュバックして震えちゃうだとか、そんなトラウマがあるわけではないんです。海兵なんてみんな銃持って走り回ってますしね。全然問題ないんですが、やっぱやだなーって気持ちになる。染み付いた感情がある。って感じのね。やっぱ自分から持ちたいものではない。ってあれがね。強い中にもやはり傷ありって感じでロー君って感じで、そんな感じだったりしないかなーっていうとても勝手な解釈。

 

ウソップに話すには色々とさらけ出しすぎなんですが、中々上手く話しを避けられそうになかったので。っていう設定。きっと本当のロー君の頭なら回避できるかもしれないけれど私の頭じゃ回避できなさそうだし回避されたらお話として成立しないからそこはそれ。

その場で適当に試し打ちしたとしても、結局持ち続けなかったらウソップになんでー?って言及されそうだし、もう別にどうってことない話だからさっさと話しちまおうかなっていう。別に急所でもなんでもねえし。っていう。ローにとっては別に弱みでもなんでもない、よくある話だろっていうあれ。でもウソップからしたら、そんな重たい話さらっというなよ!って顔真っ青にするっていう事故である。

こう、ウソップからしたら、超絶重症な傷をまざまざと見せつけられた気分で。グロ画像見せつけられて「ぎええ!」ってなったようなものである。一方その傷の持ち主であるローは、長年その痛みに耐え続けて麻痺ってるし、傷自体は実際ゆるやかに直して生きていく上でそう問題ない形にしてるし。どうってことねぇだろっていう。

強いんだけど、確かに深い傷として残っているものがあるっていう。だからすげーウソップからは心配されるっていう。闇の腐女子萌えでした。はい。

 

まぁそんなこんなで、そんなやりとりがあった数日後、その日のうちだか数時間後だか、(そもそもどういう状況とかどこにいたのかとか一切考えてない適当なあれなんだけど)

町の中だか、町のはずれだか、どっかで(がっばがば)ローくんとウソップが二人でいるところ、海軍だか海賊だか、敵が現れまーっす!


 

「貴様、トラファルガー・ローだな……。隣のは……ゴッド・ウソップか!」

「ひええっ!?」

突如大声を向けられ、ウソップは跳ね上がって悲鳴を上げた。

ゴッド・ウソップ、その名を告げられるときは、自分には荷が重すぎる懸賞金を狙っての発言。つまり、自分の命を狙っての発言であることを意味する。

ドフラミンゴの怒りに触れて二億にも跳ね上がってしまった懸賞金は、ウソップにとっては誇りと同時に枷である。

ウソップは隣を歩いていたローの背後へと回り、声のした方へとそっと視線を向ける。

五人ほどの男たちがにやにやと笑いながらこちらを見ていた。

「たった二人だけなんて好都合じゃねェか。その首、もらうぜ」

 

 

 

 


ってここまで書いた下書きが二年前に残ってたんですけど……。

あの、これどういう話を書こうとしてたのか全然覚えてないんだけどすっげー続き気になるやんどうしたらいいのこれ後でどうなるつもりで書いてたの?????? 教えて二年前のないしょ……。

 

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