【TOD2】マスコット – 1 –

TOD2マスコット
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蒼井さんとのツイッターで盛り上がったスタンマスコット乱入でシャルティエと喧嘩しながら。ってことでスタジュです。
さーED後の幸せ戦争計画争奪戦にまで辿り着けるでしょうか(笑)
とりあえず出会い編。

暗雲が広がり陽の光が射さない場所にて、呆然と立ち尽くしていた。
終えた筈の命が突如蘇り、歴史を変えたくはないか?などと世迷いごとを呟かれた。混乱を極め無言を返答としたら、女は既に四英雄の一人を殺したと言った。

復讐したくはないか?リオン・マグナス。お前の未来を奪ったやつらに

神を名乗った割には、全てを知っているわけではないらしいその女は、バルバトスという英雄狩りの男まで紹介してきた。
腹が立った。共に蘇ったシャルティエをその二人に突きつければ、女は小首を傾げた。そして18年経った今がどうなっているのか見てみろと、突如目の前が真っ白になって、気づけば此処に居たのだ。

混乱する中、理不尽な現状に怒りのみがこみ上げてくる。

「シャル、お前は状況がわかるか?」
「僕も坊ちゃんと一緒に蘇ったので……」
「……あいつは、スタンを殺したと言った……?」
「…………はい」

苛立ちが頂点に達した。ふざけるな。あいつは何勝手に死んでいるんだ。何であんな男一人に簡単に殺されているんだ。

「あのスカタンが……っ!どうせまたくだらん理由で油断したに違いない……馬鹿が……っ!」
「ご、ごめんってそんな怒るなよリオン」
「煩い!だったらいい加減学習能力……を…………?」

突如背後から聞こえてきた声に思考が停止する。あの間抜けな声は、確かに僕の知るあいつの声だったが

「シャル……?お前いつからモノマネなんてするようになったんだ」
「酷いや坊ちゃん!僕にあんなスカタンのモノマネなんてできると思っているんですか!?」
「何だそれ!?どういうことだよ!」
「……シャル、今、喋ったか?」
「……いえ、僕は喋ってないですが……」
「聞こえたか?」
「聞こえました……」

薄暗いから幽霊でも出たか。何て思わず現実逃避してみるものの、聞こえる声はシャルティエと同じような声質だ。幽霊って、ソーディアンみたいに頭に直接響く声なのだろうか。

「リオーン?おーい」
「煩い、黙れスカタン。化けて出るくらいなら生き返れ」
「いや……さすがにそれは無理……」

あぁ、会話までしてしまった。思わず頭を抱える。
どうも、聞こえてくる声の存在をシャルティエと近い背中当たりに感じる為、恐る恐るシャルティエを取り出してみた。黒い布に包められたそれを暴く。すると、そこには布で作られたあほ面の人形があったのだ。
ビシャーンッ!!!

「うあっ!冷てぇ!!! リオンひでぇ!!!」
「何で……これが僕の背中に張り付いてるんだ…………シャル、どういうことか説明しろ」
「し、知りませんよ僕もこんな悪趣味な人形っ!一緒に包められていたなんて……」
「あの……早く水溜りから拾っていただけませんか……?」

水溜りの薄茶色に汚れる人形。あぁ、懐かしい光景だ。僕の記憶の中ではそう遠くない過去だが……18年前神の眼を探し終えダリルシェイドで別れる時、このスカタンが渡してきた人形を同じようにその場にあった水溜りに沈めたことがある。
せっかく作ったのに、と慌てて拾い上げて泥水を吸い出そうと必死にタオルを当てていたスタンは、俺がお前のマスコット人形として寂しくないように一緒に居てやるなどと言ってきたのだ。
結局あれはスタンが自分で拾って持って帰ったはずだ。もしこっそり僕のところに潜ませていたとしても、死を越え、着替え、シャルティエに巻く布すら新調したというのに紛れ込む理由が一切見当たらない。
というか、何でその人形が喋っている。

「悪趣味な人形だな」
「り、リオン!俺だよ俺!わかるだろ!?」
「まぁ、あのスカタンでも四英雄だ。グッズか何かか……?しかし悪趣味だ」
「全くですね」
「……リオォン……リオン、俺だよ。……スタン」
「そのあほ面人形がスタン以外の何を模っていると言うんだ」
「そうじゃなくて!俺はおもちゃの人形でもなんでもなくて、この人形に俺、スタン・エルロンの人格が宿ってるんだよ!ソーディアンと一緒!」

はぁ?

「ほら、一応中に綿と一緒にレンズも入ってるんだ。結構高密度なんだ」
「……確かに、レンズの力は感じますね」
「な?シャルティエもそう思うだろ?」
「っていうか僕の声まで聞こえるんですか」
「そりゃ、俺元ソーディアンマスターだし」
「…………」

頭が痛くなってきた……。
いつの間にかソーディアンと同じように人格の入った人形が作られるようになったのか?こんなグッズ販売される程に発展した会社があるというのだろうか。オベロン社以外にそんな研究ができるところ何てあったのか

「あ、何かリオンとシンクロしてきたのかな。リオンの思考読めるようになってきた!さすが愛の力だな♪」
「踏み潰されたくなかったら少し黙ってろ」
「んーこれだけ言わせろよ、俺グッズとかじゃなくてさ、どっちかって言うとソーディアン見たいなコピーじゃなくて、俺自身かな、言ってしまえば俺が人形になったような感じ」
「……百歩譲ってその通りとしよう。何でそうなった……」
「いやさ……突如孤児院を襲ってきたやつに殺されて、気がついたらリオンと一緒に意識だけ生き返ってたんだよ。で、気がついたらこうなってた。何だろ、俺のリオンへの愛が神の力すらも操った?」

何でだろうか、無性に腹が立ってきた。

「とりあえずだ、リオン。残った仲間が、ルーティ達が危ない。……それはわかるだろ?」
「わかるが、そんな間抜けな格好で言われても力が入らん」
「じゃあいい加減拾ってくれよー!」

はぁ、とため息を付き辛うじて濡れていない右足の部分を摘んで引き上げる。

「そ、そんなぞんざいな持ち方しなくてもいいじゃないか……」
「煩い、僕は機嫌が悪い……」
「わかってるよ。まぁ、とりあえずこれから宜しくってことだよな」
「あまりに煩かったら野に捨て置くからな」
「うー俺動けないんだから勘弁して」

汚れた人形の片足だけを摘んだ状態で歩く。こうも曇っていると簡単に乾くことはないだろう。嫌だが、絞ってみるか?

「ちょ、それはだめだって!中のレンズ割れたらどうするんだ!?」
「フン」
「ちょっとスタン煩いですよー?坊ちゃんと一緒に行けるだけでも十分なのですから」
「ちっ……俺は二人っきりがよかったなー!」
「それは僕の台詞なんですが……?」
「二人とも捨てるぞ」

なんだか、一気に騒がしくなった。自分が死んでいたことが嘘のようだ。……そんなことを思ってしまう自分に嫌悪した。
ふと、崩壊した街中に溶け込んでいる巨大な竜の骨を見つける。

「あ、懐かしいな……これ、俺たちが倒したやつなんだよな。まだこのままだったんだ」

スタンが呟くのを頭の片隅で聞きながら、その頭蓋骨を持ち上げた。人の頭より一回り大きいくらいの形だ。丁度良いかもしれない。
適当な瓦礫に一度人形ことスタンを置き、手持ちの布で骨の汚れを拭う。

「リオーン……?それあるんだったら俺に、さぁ……」

悲願の声を徹底的に無視し、ある程度拭い終えて、それを被った。

「リオン……」
「坊ちゃん、それは」
「顔を隠すには、丁度いいな」
「坊ちゃん、此処は18年後の世界です。たとえ似ていると思われても本人だとは誰も思わないですよ……?」
「念には念を、だ」

口ではこう言うが、ソーディアンとマスターの関係上、内心はシャルティエに薄っすら伝わっているかもしれない。スタンはどうだろうか、というかこいつともソーディアンとマスターという関係になっているのだろうか。だとしたら嫌だ。

「あのさ、リオン」
「なんだ」
「お前はすっごい腹立つだろうし、それは当たり前のことだけどさ、俺、お前とまた旅ができるんだって、嬉しいよ。またお前と会えて」
「おめでたいやつだな、相変わらず」
「お前のことが好きだから。大切だから。……前にも言っただろ?」
「……そんなこともあったか」
「なのに、勝手なことしちまってさ、あれだけ一人にはしたくないって俺訴えてたのに」

ようやく此処に来て裏切った僕への恨み言を呟くらしい。
だが、それはとても甘く温い責めだった。それが、僕は大嫌いだ。

「フン、その後勝手に死んでこんな間抜けな姿になったやつに言われたくない」
「はは、ま、確かにお互い様、かな。だったらさ、もう離れないようにしよう。な?」

ちっぽけな汚い人形が言ってくれる。
それでも、差し伸べられた手にこちらから手を伸ばすことを直接禁止する者は、この世界には居ない。そんな資格などないとわかっていながらも、そう思って骨を被って居ながらも、これは世界を元に戻すためだと己を騙し、ずっと願っていたそれへと手を伸ばす。

ようやく触れた手は、冷たくびしょぬれで、汚かった。

「うわー何かすっごい腹立つんですけど」
「えへへーシャルティエ、宜しくな」
「うっわーむかつく」
「静かにしろ……」

やっぱり拾わなかったら良かったかもしれない。こんな人形。
再び右足を摘み、歩きながらそれを軽く振り続けることで水気を飛ばす。早く乾かないだろうか。

リオンbotのせいでジューダスのツン度がえらい増してる(笑)スタン相手だから、っていうのもあるのでしょうがねっ
しかし、久々に書いたから二人の喋り方が別人かもしれません。

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