サス耐の勢いに乗って結構前にふと思いついた十尾化するサスケという妄想を爆発させてやるってばよ
ナルサスで!尻尾生えてるサスケ萌え
注意報:軽く死ネタ・自殺未遂・最初はひたすら暗い・でも後半ギャグな予定・妄想大爆発のご都合設定
世界を揺るがす咆哮に真っ黒な瞳が開かれる。目の前に、十もの尾を震わせ大きな口を開き憎しみを吐き出すように吼え続ける者がいた。
サスケは思う。あれは俺のはずだった。確かに先ほどまで俺の身にあるものだったはずだと。抑え切れない憎しみの数々が体を破ってでも出てこようとする。己の憎しみとない交ぜとなり、何もかもがわからなくなり、この世界全てが憎くて仕方がなかった。
金色の光が、手を差し伸べたのだ。
あれは、ナルトだと、サスケは確信した。ナルトは俺の中の憎しみを引き剥がし、その身に入れたのだと
ナルトの近くには、必死に彼を元に戻そうとするカカシやサクラの姿があった。他にも多くのナルトの仲間たちがいる。皆ナルトを守ろうと必死になっている。
それでも、その声はナルトには届いていない。きっとそう時間を待たずして、ナルトはその仲間たちを手にかける。
サスケは指を動かした。体がいつもの数十倍重たい。それでも必死に動かした。ようやく立ち上がった頃には荒い息も吐けずに視界がぶれた。それでもサスケは歩き出した。
憑き物が落ちたみたいだった。サスケの中にあったのは仮初の憎しみなどではない。それは確かだったが――サスケはもう決心していた。
満身創痍なはずの体はゆっくりとナルトへと近づいていき、真っ黒な瞳が赤みを帯びていく。三つ巴が浮かび上がり、更にそれが形を変えて万華鏡となる。
サスケの姿に一番初めに気づいたのはサクラだった。
ゆっくりとナルトへと近づく姿に一瞬、まだ戦うつもりなのだろうかと悲しみに暮れたが、まるでナルトをこの場に引き止めるかのように腕が持ち上げられたとき、違うと気づいた。カカシも同じようで、小さく教え子の名を呼ぶ。
だが、憎しみの確かな姿を知らぬ者たちは、木の葉の裏切り者である抜け忍が、木の葉の英雄である忍へ近寄る姿に殺気立つ。同時に、ナルトもサスケの姿に気づき一瞬憎しみにまみれたチャクラが弱まった。サスケの指が、後一歩でナルトに触れるというところまで近づく。
「ナルトに何するつもりだ!!」
木の葉の忍の一人がそう叫び、武器を構える。その声に煽られ、他の忍も武器を構える。
「待て、違う!やめろ!!」
カカシが叫ぶ。サクラは目を見開いてそれを見ていることしかできなかった。クナイが、鎖鎌が、短刀が、まっすぐうちはの家紋を目掛けて飛ぶ。サスケはそれに気づいているのかいないのか、ずっとナルトだけを見て手を伸ばした。
雷がバチバチッと走るが、あまたの数の敵意全てを打ち落とすことは適わず、それらはドスドスドスと音を立てて、うちはの家紋を貫いた。翡翠の瞳が大きく晒され、首が小さく幾重にも横に振られる。信じられないと、わなわなと震える手が顔を覆おうとあげられたが頬にかろうじて引っかかるのみで視界を全然遮っていなかった。
サスケの体が大きく揺れる。そのまま、倒れてしまうのだと誰もが思った。だが浮きかけた足は、そのまま最後の一歩を踏みしめた。
サスケの手が、真っ赤なチャクラに塗れて原型をとどめないナルトの顔へと伸ばされる。木の葉の忍はナルトを守ろうと走り始める。血を零しながら、サスケの口が動いた。ビクンとナルトが反応する。
木の葉を抜け、裏切り、マダラと手を組み世界を敵に回したうちはサスケの最後の攻撃と思われたそれは、あまりにもあっけなく、トンとナルトの額を小突いて終わった。
呆気にとられた忍たち。一歩遅れてナルトが元の姿に戻っているのに気づいた。そのナルトですら唖然としているが、すぐにかけられた重みに尻餅をつく。サスケは、ぐったりとナルトにもたれかかったまま動かなくなった。
「何が、起きたんだ……?」
木の葉の忍の一人が呟く。ナルトへと一目散に駆け寄ろうと思っていたが、何故か体が動かなかった。
「サス……ケ……?」
ナルトが呟き、そっと自分の肩へと伏せられたサスケの頭に手を沿え、体を前に傾けてそっと己の肩から剥がす。腕にしっかりと抱きとめたその人の瞳に血のような赤はもうなく、濁った黒がどこを見るでもなく開かれているだけだった。瞬きを、一切しない。
「サスケ……?サスケ……サスケ、返事しろってば……サスケ……サスケ……?」
ナルトがひたすらサスケの体を揺さぶろうと、何の反応もしなかった。信じられない。その思いだけがナルトを包む。遠くでサクラのか細い悲鳴が聞こえた。
木の葉の忍は納得する。サスケが死んだからナルトは元に戻ったのだと。そう言って素直に勝利を喜ぶのだった。そしてナルトの無事を確認するべく駆け寄り、大丈夫か、と声をかける。
だが、ナルトの視線はサスケにのみ注がれた。
「ち、げぇ………違う、違う……違う!!」
仲間であるはずの木の葉の忍たちの言葉にナルトは首を横に振り、目から涙をあふれさせた。違うのだ、違うのだ
!憎しみの塊である九尾の陰チャクラに更に一から八までの尾獣を埋め込まれたサスケを助けたくて、俺が勝手にそれを奪いとり、暴走したのだ。そして、元に戻れたのは間違いなく――
「なぁ、何してんだよサスケェ……木の葉を、潰すんじゃなかったのかよ、なぁ、復讐は?どうしたんだってばよ……なぁ、……なぁ!!サスケェ!!!」
もう何の反応もないのだと、わかっていながらもナルトはサスケを揺さぶらずにはいられなかった。サクラが二人のところに近寄ることもできずにその場で崩れた。
「何、お前死んじまってんの……?ふざけんなってば……おい、サスケ……なぁ、……なぁ…っ!」
再び、木の葉の忍たちは顔を見合わせ、それ以上動くことが適わなくなる。そんな中、たった一人カカシはナルトのそばまで寄り、腰を下ろした。いつまでもサスケを揺さぶり続けるナルト手をの左手で掴み、右手でそっと開かれ続けていたサスケの瞼を下ろした。
「もう、眠らせてあげなさい」
硬く目を瞑り、無理やり感情を押し込んでカカシはそう言った。その言葉を聴いてサクラの悲鳴に近い泣き声が響く。ナルトは唖然と涙を流した。カカシはナルトから手を離し血が滲むほど握り締めた後、肩から力を抜いた。
目を閉じられたサスケは、本当に安らかに眠っているようだ。もう、思い残すことなどないかのような。でも、先程まで見えていた濁った黒い瞳はとても寂しそうにナルトには見えた。
「やく……そく」
そうだ、約束をしたんだ。俺は、サスケと約束したんだ。
ナルトはクナイを取り出し、思い切りその身をきりつけた。何度も何度も深く抉ろうと力いっぱい切りつけた。
「いや!何してるのナルト!! やめて!いやぁっ!!」
「ナルト!!」
狂うように泣きながらサクラが走りよる。急いでカカシがナルトの手を再び拘束する。だが、ナルトの体にも、クナイにも、ナルトの血は一滴たりともついていない。傷などどこにもなかった。確かにクナイはナルトの体に沈んだはずなのに
「なんだってば……これ……」
カカシが驚き手を外す。ナルトは再びクナイを振り下ろす。バチッと音を立てて雷のようなチャクラがそれを防いだ。九尾のチャクラに似ている。十尾のチャクラだ。完全に消えたわけではなく、ナルトの中で大人しくしている。更には頼んでも居ないのに勝手にナルトを守る。ナルトの顔がくしゃくしゃに歪んだ。
「ふ、ざけんなよ……なんだよこれ!! ふざけんなよ!! 約束したのに、一緒に、一緒に死んでやるって……っ!なんでだよ、ふざけんなってばよぉお!!!」
サスケを掻き抱き声を上げて泣くも、サスケは変わらず安らかに目を閉じているのだ。ナルトには力を失ったサスケの瞳は寂しそうに見えた。だが、己が寂しいだけなのかもしれない。途方のない悲しみだった。
救いたかったなんて、そんな思いなどなかった。
ただ前みたいに、当たり前にあったあの頃のように、仲間として、友達として、隣に立っていて欲しかったのだ。
たまにでいいから、そばに居て欲しかったのだ。友達として居続けてほしかったのだ。
全部自分の勝手な望みだけれども、隣で、笑っていて欲しかったのだ。
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