【NARUTO】十尾 – 2 –

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サス耐終わっちゃったけれど仕事で居なかった分もうちょっと耐える!
イタチと同じ死に方をし、イタチの気持ちがなんとなくわかっちゃうサスケと、サスケの気持ちがわかっちゃうナルトに個人的にツボったのだが……

注意報:相変わらずのナルト様の自殺願望・突如のギャグ転換・超ご都合妄想爆発・ナルトが別人

ナルトは半身を失ったかのように沈んでいた。絶望していた。
マダラは倒した。彼が率いていたものは皆死んだ。完全に連合軍の勝利に終わった。
だというのに、終末の谷で確かに終わった最後の戦いは、後味の悪さを長く残していた。
十尾の暴走を止めたのは、結局うちはサスケだった。ほとんどの者がその真実を認めたくないが為にナルトがやったのだと口をそろえるが、ナルトは頑なにその虚実を受け入れなかった。口にするたびにナルトが崩れそうになるものだから、誰もがその勝利を手放しに喜ぶことができなかった。
それでも、里は戦の傷を癒すべく復旧されていく。

本当なら、サスケの真実を、うちはの悲劇の真実を、里に知らしめ少しでもサスケが報われるように動かなければならない。頭の片隅でナルトは気づいている。サクラは既に切り替え戦っている。だがナルトはどうしても動けなかった。ナルトの中で世界はもう終わってしまった。例えそうしたとしても、サスケはもういないのだ。死者の魂など見えない聞こえないでは己の勝手な解釈に過ぎず、それが反対に虚しくて動くことができなかった。
例え里が真実を認めても、何を今更、だ。サスケはもう死んでしまった。

入り乱れた武器の中、誰がサスケに致命傷を負わせたのかなんてわからない。放った本人にしかきっとわからない。彼らは己のしたことが善だったのかと戸惑っている。認めたくないながらも下手に口を出せず殻に閉じ込めた者がほとんどだろう。そんな中、たった一人、ナルトに謝りに来た者が居た。
「すみませんでした」それ以上の言葉を思いつかないのだろう。ただ深々と頭を下げる忍に、ナルトは同じように謝った。

「悪い……お前が、どんな気持ちだったのかは、わかってるつもりだってばよ……でも」

出て行ってくれ。そう告げた。忍は静かにその場を後にし、それ以降ナルトの前に現れていない。
許せやしなかった。責めもできないが、許すことなどできなかった。
だが、一番に許せないのは、サスケだった。

サスケの最期の言葉を、ナルトだけが聞いた。
十尾に完全に囚われ、真っ暗になった視界がふと急に開いたそのとき、サスケはナルトの目の前にいた。手を出しながら、彼は破顔していた。とても安らかな笑顔だった。

「認めてやるよ、ナルト………火影に、なれよ」

全てを託すように、そして自分の全てを投げ出して、サスケは勝手に死んだ。
復讐はどうしたんだって。何俺なんか守って死んでるんだよ。答えが聞けるのならば、またあいつは体が勝手に動いたとでも言うのだろうか。ああ、どれだけ復讐に犯されてもサスケの奥底は変わることなくあった。だからこそ、最期に見せた姿がそれだったのだろう。ずっと奥底にあったものだというのに、短くとも長い年月の中、それが表に出された時間はいったいどれくらいだろうか。
あまりの理不尽さに怒りと悲しみがとまらない。とまってくれない。

「イタチを失ったとき、サスケもこんな感じだったのかな……」

たった一人で、この思いの中にあり続けたのだろうか。世界を敵に回したサスケの気持ちが、よくわかるのだ。俺も憎い。この世界が、憎くてたまらねぇよ、サスケ
サスケの遺志を継ぐだなんて、ほんと、なんてきれいな言葉なんだろう。

里は再び機能し始めた。大戦の前に戻り始めた。
再び任務を受け、それをこなしていく忍たち。圧倒的な人手不足の中、ナルトがこれに参加しないでいられるわけがない。ナルトはちゃんと任務をこなしていった。だが、それはとても危ういものだった。
敵の攻撃を避けやしない。無謀な行動ばかりとる。仲間を庇っては無理やり敵陣の中に突っ込んでいった。
回数を重ね、とうとうサクラは耐え切れずにナルトの頬を叩いた。全力の平手打ちは十尾に守られることはなかった。どうも十尾は相当傷が深くなるであろう攻撃は守るがそれ以外は特に守らないようだ。何ともよくわからない能力である。我愛羅のものとも違うそれは、十尾自らの意思でナルトを守っているかのようだった。
あぁ、もしかしたらこれもサスケの仕業なのかなぁとサクラに吹き飛ばされながら思う。

「いい加減にしなさいよ!いくら傷がつかないからって、こんなのもうやめて!」

目に涙を溜めながら怒るサクラには本当に申し訳ないと思う。だがナルトはそれでも、今の自分の体質に自暴自棄にならずにはいられなかった。

「大丈夫だって、俺、死なないし」

死ねないし

「そういう問題じゃない!あんたがそんな自暴自棄になってるのが嫌なの!! 私だって……同じ想いよ……?でも、もうどうしようもないの……仕方がないの……っ!前を向いて歩く以外、生きる術なんてないじゃない!サスケ君は、あんたを最期に助けたんじゃない!だったら……っ!」
「頼んでねぇってばよそんなの!!!」

ナルトが思わず吼える。サクラは酷く傷ついた顔をして走ってその場を後にした。
ナルトはただこぶしを握り肩を震わせることしかできなかった。

翌日、綱手から任務を言い渡されたその場に居たのは、カカシ、サクラ、ナルトの三名だった。

「今日はこの三人で任務だ。ランクはS。気を引き締めろよ?特に、ナルト」
「わかってるってば」

中身のない返事をし、ナルトは先頭を歩き始めた。
相手は戦争の混乱の中、抜忍となり更にそれがグループを成したものだ。第二の暁になるかもしれない者たちは後を絶たず、暗部の者だけでは追いつかなくなっている。
ナルトの存在により嫌でも重くなってくる空気をカカシとサクラが必死に晴らそうとしている。サスケに関する話題を避け、何とか楽しい話をと会話を盛り上げ、時にはナルトに話を振ってくる。
ナルトは精一杯虚勢を張って、元気に応えた。

だが、任務になれば昨日サクラに怒られたばかりだろうと、ナルトは自棄になって動き回る。どうせ死にやしないのだ。だったらさっさと終わらせちまったほうがいい。カカシやサクラの静止を振り切り、一人で全て片付けるつもりで戦い続けた。ナルトは無敵だった。
ほぼ全ての忍を当然無傷でのめし続けた。一切の攻撃が利かないとわかり逃げ出す敵はカカシとサクラが対応してくれた。ああ、この戦法が楽でいい。

「ナルト!」

カカシの声が上がる。視界の端にサッと退くターゲットの姿。それが逃げてきた場所をみると、大量の起爆札がそこにはあった。あ、もう爆発するじゃん。
おそらく火力は人間だったら簡単に吹っ飛ぶくらい。どれくらいの負荷が加われば十尾のチャクラの絶対防御は破られるのだろうか。我愛羅の絶対防御はサスケの千鳥に破られた。俺のは、これはどうだろう。
瞬間、目の前が真っ白になった。

熱い。だが肌に火傷はない。今もなお熱された空気から肌を守ろうとバチバチとチャクラが漏れでてる。

「ナルト!! 大丈夫か!?」

カカシとサクラが走りよってきた。が、あまりの熱さに足を止めた。

「ハハ、あはははははは!傷ひとつ……ねぇってばよ!!!」

ナルトは狂ったように笑い出した。

「俺まじ無敵じゃん!さっき必然的にそうなってたけどさ、これからはやっぱ俺が一人突入してさ、残ったみんなが逃げ出すやつを対処してくれたら、全部簡単に片付くってばよ!今度からもう、そうしようってば」
「あんた、……いい加減に……っ!!!」

サクラがこぶしを握り締め、熱さなどお構い成しにこちらに踏み出そうとする。相当なチャクラが練りこまれたそれは昨日の比ではない力を持っているだろう。
あぁ、今度はサクラちゃんの拳からもちゃんと十尾は守ってくれるだろうか。あ、バチバチいい始めた。十尾のチャクラが反応してる。ってことは今度はサクラちゃんの拳から守ってくれる。つまり今回のサクラちゃんの拳相当危ないってば
そんな能天気な考えを巡らせているナルトの後ろで、十尾のチャクラはひとつの塊となり形を作り始めた。そして―――

「いい加減にしやがれ、このウスラトンカチがぁあああ!!!!!」

サクラの拳が届く前に、鉄拳がナルトの右頬にめりこみ、吹き飛ばされる。ナルトはサクラとカカシの間を通り過ぎて後ろの木に頭をぶつけて止まった。

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