【TOD2】dive – 05 –

diveTOD2
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第一階層クリアの後の現実世界。
ところで、アルトネリコ知らない人ちゃんとついてこれてるかな?(^ω^;)
内緒さん説明ド下手なもんでごめんちゃい…。

隣を見ればジューダスが同じようにぼーっとして部屋に座っていた。
その完全に気が抜け切った普段のジューダスらしからぬ姿に不安が立ち上る。心の護はああ言っていたが、やはり何かしら影響が出たんじゃ

「ジューダス、大丈夫か!?」

両肩をがっしり掴んでぐいっとこちらを振り向かせ仮面の上からではあるがその顔を覗き込む。
思えばこんなに近くでこいつの顔を見るのは初めてだった。隙間だらけの仮面からは憎たらしくもやはり整った顔が見える。最初はあんまりな皮肉だらけの口にブ男だなんて馬鹿にしたが、絶対ありえねぇことはわかってた。
あの鎖の中のときみたいにジューダスは目をパチクリさせている。頭の回転が無駄に速いこいつが完全に思考停止してる。やっぱりやっちまったのか、俺

「ジューダス!しっかりしろ!」
「ゆ、揺らすな馬鹿者!」

ゴン、と思い切り頭をどつかれた。

「何だお前はいきなり!」

数歩距離までとられてる。これがダイブの影響だったらどうしようと思うが、思い直せばこれがジューダスなんだよな。普通だよな、うん。つーか思い切り元気だしな。

「あぁ、わりぃ……余りにも衝撃的な終わり方をしたもんで」
「…………」

ジューダスが気味悪げにこっちを見ている。聞きたいような聞きたくないようなって感じなんだろうな。自分の精神世界を他人に覗かれるってやっぱりしんどいよな。
ジューダスはため息をつくと俺を睨んだ。

「……で?」
「あ?」
「お前の目的は無事達成できたのか?」
「お、応」
「で、答えは?」
「ん?」
「お前は何しに行ったんだ……」

ジューダスに心底呆れられて3秒して意味がわかった。
あぁ、俺はもうジューダスに伝えた気分だったがあれはコスモスフィアだけの出来事であってリアルのジューダスが知る術ねぇんだよな。
しかし、二度もあの言葉を繰り返すとなるとすっげー何か、嫌だ。

「ま、お前が危険なやつじゃないってことはわかった」
「……嘘だ。僕の精神世界がそんなに平和だったと?」
「何だよ、お前は行けねぇんだからわかるわけねぇだろ」
「お前は何を見てきたというんだ」
「見てきたっていうか、ちょいと小一時間鬼ごっこしてきたくれぇか」
「本当に何しに行ったんだ……」
「そういうお前はどうなんだよ。何か変わったこととかねぇか?」

俺の質問にジューダスは黙り考え込む。漠然としないだろう答えは見つかるとは思えない。

「……嫌な、感じがする」

むす、とした表情でジューダスは言った。
初めて見る表情だと思う。発光体が言った「心を開いた」って言葉がなんだか現実味を帯びてきた。その感想がこれだからほんっとかわいくねぇとは思うが

「とりあえず、これで満足したのだな?」
「え? 満足って」
「これだけは言っておく、貴様が一体何を見たのかは知らんが、無駄な期待は寄せないことだ」
「期待?」
「僕は、お前が思っているようなやつじゃない」

ジューダスはぷい、とそっぽを向いてしまった。こいつ何かにつけてそんなこと言うよな。

「さっさとそれをリアラに返しにいくぞ」

げ、と反射的に思って気づけば言っていた。

「あぁ、じゃあ俺返してくるから、お前そこでちょっと大人しくしてろよ」
「何で僕がお前に行動の制限を受けねばならん」
「いや、だから心配なんだって!」
「……気持ち悪い」
「え、やっぱりどこか体の具合悪いのか!?」
「お前の態度が気持ち悪いと言ったんだ馬鹿者!わかったからさっさと行け!」

半ば追い出されるように部屋を出た。
右手に握り締めているレンズを見る。ただの透明なレンズだが、俺にはそれを通してあの深く冷たく硬い鎖に繋がれた世界が見えた。
心の護も、ジューダスも言った。そして何より俺自身が一番最初に言ったんだ。ジューダスと共に旅をしても大丈夫なのか確認したいから。だからリアラの力を借りた。
だけど俺は見てしまった。あの鎖に雁字搦めにされた世界を
仮面の下の傷ついた瞳を

カイルとリアラのいる部屋の扉をノックすれば、リアラの声が帰ってきた。あっちも終わっていたようだ。
リアラのコスモスフィアを見ただろうカイルは前と何ら変わらない態度だった。

「ロニ、大丈夫だった?」
「……あぁ。まぁ、な」
「ロニ……?」

釈然としない返しにカイルが不安そうな表情を向ける。

「あぁ、ちげぇ。あいつと旅するのは全然大丈夫だ。ちょっと他に気になることがあっただけでよ、あいつ悪いやつじゃねぇって俺も納得できた」
「そっか、良かった。リアラもこれで納得できたよね?俺、何があっても変わらないって思うんだ」
「……うん。ありがとう、カイル」
「だからさ、もうこれやめよう?こんな仲間を試すようなこと俺もうやりたくないし」

カイルの言葉に俺はものすごく居心地が悪くなった。

「カイル、別に試すとかそんなつもりじゃなかったの。ただ、私を知って欲しかったの。それだけだから」
「ん、そっか」

カイルは何の影もない明るい笑顔で答えた。
全てが終わった。そんなこの場の空気の中、俺はレンズを握り締める。
決して離さないように

いつの間にできていたのだろうか、この決意は

「なぁリアラ。このレンズ、もう少しの間俺に貸してくれねぇか」
「ロニ?」

再びカイルの表情が曇る。無理もないだろう。あいつは最初からこの力には否定的だ。仲間を試すようなことはしたくない。仲間が何を隠していようと仲間であることが揺らぐことはないと言い切っている。

ならば俺はあいつを今も信じられないのか?信じ続ける自信がないから、不安だから?
そうじゃない。気づいたんだ。あいつが今もなお血を流している傷を必死に隠していることに。誰の手も借りずにその痛みを一人で抱えて苦しんでいることに。それを暴いてやりてぇんだ。馬鹿じゃねぇのかって鼻で笑って引きずって治療してやりたい。そして、その後痛みがなくなったそいつがどんな安堵の表情を浮かべるのか、どんな安らかな表情を浮かべるのか、見てみたいんだ。

「……そう、ロニがそこまで言うなら、俺も何となくロニの言うこと、わかるし」

俺の気持ちを伝えれば、カイルは真剣な顔で小さく頷いた。いくら鈍感のカイルでもあいつが抱えている未知のものには勘付いていたのだろう。

「あいつの世界の住人に聞いたんだ。コスモスフィアってのは9階層あるんだってな。深い階層に行けば、きっと俺が求めているものに手が届くんだ、だから」
「ロニの気持ちはわかったわ……でもロニ、9階層まで行くっていうのは、完全のその人の心すべてを暴くことになる。人は誰しもどこかで己を制御しているもの。そうやって人間関係を円滑にしているのでしょう?それを暴けば返って苦しい思いをすると思うの。ロニも、ジューダスも。3,4階層が限界だと思う」
「……あぁ、あいつが許してくれない可能性もあるしな、っていうかそっちが一番高いが、それでも、俺はやれるだけのことはやりてぇんだ」
「あはは、ロニってさ、一番ジューダスのこと気に入らないって装ってるけど一番ジューダスのこと気にしてるよね」
「うぐ……っ!?」

カイルの言葉に俺は顔を真っ赤にした。気に入らないと言いつつ一番気にしてるって、なんだそりゃ。これじゃあ俺、学校で気になる女の子に嫌がらせしちまう餓鬼みたいじゃねぇか。つか何だ、違うって。まずジューダスは男だって。綺麗な顔してるけど野郎なわけ。ちげーの、そうじゃねぇの、俺は人間として道徳的な何かで怪我してるやつは放っておけないとかそういう理由なわけで!

頭の中で始めたわけのわからない自己弁護は更に自分を混乱に落としいれ真っ赤な顔はなかなか治らなかった。
そんな俺にリアラは再びダイブの危険性を良く言い聞かせて、最後にはレンズを持ち続けることを許可してくれたのだった。

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