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心の護が言った言葉をゆっくり頭の中で繰り返す。
俺が、鎖になっているかもしれない……。そういうことなのか?
いや、心の護も言っていたように例え話だ。もし本当にそうだとしても、今俺は真逆の行動を起こしているのだ。その時点で鎖が外れていないのがおかしい。
要は、あの鎖はただジューダスの帰りを悪意を持って阻んでいるのではなく、それとは逆の理由でそこに存在しているのかもしれない、か。
「………だが、ジューダスは、あっちに戻りたがってる。あいつがその想いを持ち続ける以上、俺はあの鎖を壊す」
「無理やりこっちに連れてきちゃった償いかい?」
「俺、そういう難しいこと考えんの苦手なんだわ。そのときそのとき正しいって思ったことをやるだけだ」
しかし、どうしたものか。
あいつが、これなら絶対鎖を壊せるって思えるような策を考えないといけない。
農具で鎖を叩くなんて軽いもんじゃだめだ。……そこらへんに戦車でも転がってねぇかなぁ。
多分俺が斧探してきて突進してもあれは壊れないだろう。多分。悲しいことに多少自覚があるのだ。ジューダスに自分の実力をそこまで認められていないと。
なら、誰だったら……あ。
あいつが信じられる人、ってわけではないが
俺が絶対の信頼を寄せる人が、この世界にはいた。
思いついたと同時に俺は駆け出す。
あの人なら、きっとやってくれるはずだ。
目的の場所まで走る。よく知る景色が流れていく。
小さい町だから、あの場所まで戻るのに息を切らすことはない。
あの橋を超えれば、すぐ孤児院が……
……は?
今回のダイブで何度目になるだろうか。こうやって驚きと妙な違和感による僅かな恐れに足を止めるのは。
俺は走ってきた道を振り返った。
そこは、俺のよく知るクレスタの町だった。
おかしい。おかしい、おかしいおかしい。いつの間に変わった?
確かにきたときからクレスタとよく似た町だった。だが、似ているだけでクレスタとまったく同じつくりはしてなかったはずだ。孤児院も少し違った形で存在していたはずだ。
赤黒い鎖だけが、ここが現実世界ではないのだと教えてくれた。
あまりにクレスタと同じすぎて、不安が大きくのし上がる。
俺は、ジューダスが待つあの門へと帰ることができるのだろうか
低い屋根の向こう側に、確かに壁のよな門は見える。
……それへと向かって歩けば、辿り着ける、よな?
この変化は何を意味しているのだろう
より現実に近づいている……?だったら何だ?ん?わかんねぇ!
って待てよ、もし本当に現実に近づいちまってたら……
俺は再びもうすぐ目の前にある孤児院の玄関へと突進するように駆け出した。
「スタンさん!!!」
消えて、しまったのではないだろうか。
この世界で唯一見出した鎖を壊せそうな人。何より、個人的に消えてほしくない人。
縋る思いで叫び中に入り込んだ。
「お?どうした?ロニ」
そんな俺の想いとは裏腹に、キッチンでお茶を飲んでいるスタンさんの姿があった。
その隣にはカイルも。
俺は安心からため息を吐く。
「どうしたの?ロニ」
スタンさんと同じようにカイルが聞いてくる。二人とも同じ顔してやがる。
それが、なんだか微笑ましく感じた。が、和んでる暇じゃなかった。
「スタンさん、お願いがあるんです。門の鎖を壊してください。きっと、スタンさんならできるって、俺思うんです」
「門の鎖?」
「はい、……ご存知、ないですか?」
「門?クレスタにそんなのあったっけ?」
俺まで不安になってくるから、お願いですからそんな質問しないでくださいよ……っ!
「カイルは、わからねぇか?」
「え、ごめん。そんなとこあったっけ?新しい秘密基地か何か?あ、わかった!隣のおばさんの地下倉庫!」
「馬鹿!あそこを秘密基地にするのはやめろって言っただろうが!」
いや、そんなこと言ってる場合じゃないような!
「多分、クレスタの出入り口。そこに門があって、ジューダスがそこにいるんだよ!」
きょとん、とまたしてもスタンさんとカイルは同じ表情をする。
そして顔を見合わせた後、首をかしげ、カイルはややあって口を開いた。
「ジューダスって、誰?」
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第二階層に逆戻りしたような(笑)
でも第二階層とはまた違った理由で変化を起こしているつもりだったりして。
表現力足りなさ過ぎてことこまやかに説明入れないとわかってもらえない自身がある。かといってくどい説明書きはひっじょーに読みづらい。困ったものだ。
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