【TOD2】 dive 続き – 12 –

diveTOD2
この記事は約10分で読めます。

拍手ありがとうございます!!dive11かなりブワーーって書いてたのでさすがに今回読み直したのですが、酷かったです/(^o^)\
矛盾している点があったのでこっそり修正しました……。
ジューダスの台詞
修正前:「リアラ。残念だがこのロニは改変の影響を受けない…
修正後:「リアラ。残念だがこのロニはお前の術の影響を受けない…
前回書き直しまくった設定の名残が出ちゃったorz
書きながら設定固めてるから途中でころころ変わっちゃうんですよね!困っちゃう!
久々に戦闘シーン書きましたが、楽しんでもらえたでしょうか><
私はジューダスが戦闘するところが好きです^p^////
基本強い子好きになるんですよね。純粋にカッケェエエエエ!ツエェエエエ!!ってなるのは楽しいです。
今回互いに思いっきり戦える状況じゃなかったのでドロドロの試合(?)でしたがwでもちょっとだけシャルティエを書けたのが楽しかったw



現実へと戻った俺はいつも通りジューダスの意識が戻り、少しの間をおいてから聞いた。
「なぁ、ジューダス。お前のコスモスフィアで起きたことについて、一つ聞いていいか」
コスモスフィアでジューダスは何かあれば前もって伝えると言ってくれたが、それと問題を先送りにすることとは話が別だ。リアラが敵対するかもしれないという懸念がジューダスにあるのだとすれば、俺は出来る限りその問題を取り除いてやりたい。
今回のコスモスフィアでは根本の解決には至っていないはずだ。リアラは説得に応じてはくれたが、理由を何も語らなかったのだから。
「……なんだ」
「まぁ、そう構えんなよ」
少し身を硬くして問うジューダスに俺は安心させるように笑いかける。
「お前はさ、リアラのことどう思っているんだ?」
「どう……とは?」
ジューダスが怪訝な顔をする。まさかリアラの話題が出るとは思わなかった様だ。
「はっきり言っちまうと、今回のお前の精神世界ではリアラとお前が敵対してたんだよ」
「……」
ジューダスは少し目を見開いた後、真剣な顔になり沈黙で続きを諭した。こりゃ、思い当たるところがあったんだろうな。
「お前の精神世界のリアラは俺の知るリアラとかなり違っててな、エルレインと同じ思想で、エルレインの歴史改変を助長するようなことをしてた」
「……」
「お前はエルレインの歴史改変にすっげぇ怒ってた。絶対許せないってな。それは、俺も全く同じ思いだ」
「……あぁ」
「だから、お前はその世界ではリアラと、そしてリアラを守ろうとするカイルと戦うことになっちまってな。……それはよ、お前は俺達を敵に回してでもエルレインと戦う覚悟をしているってことだろ?」
ジューダスは一度目を瞑ってから、「あっている」と重々しく言った。
「そうか」
「僕はもしそうなったとしたら、お前達を裏切るだろう」
「いや、別にそのことを咎めたいわけじゃないんだ。ジューダス」
こいつが裏切りを示唆する言葉の裏には、常に俺達への気遣いがある。同時に、そうせざるを得ない罪悪感も。
その思いを軽くしてやりたくて、ジューダスの肩を一度緩く叩く。閉じられていた紫紺の瞳がこちらを向いた。
「結局リアラは俺達やカイルや、そんで、お前の説得によって改心してエルレインと戦う決心をまたしてくれたんだよ」
「……」
「だから本当は、お前はリアラがエルレインは間違っているって分かっていると、エルレインに味方する可能性は低いって思っているはずなんだ。実際、リアラはずっと俺達に協力してくれている。エルレインと明確に敵対してくれている。……だから余計と解せなくてよ。何でお前はあの子が敵対するかもしれないって思っているんだ?」
ジューダスは考え込むように俯いた。長い睫が瞬きによって何度も震える。
「ジューダス、精神世界でも言ったんだけどよ、相談してくれよ。一人で悩まねぇでよ」
俺の言葉にジューダスが顔を一度上げた。暫く俺の眼を見て、やがてまた俯く。
何をそんなに悩んでいるのだろうか。
「……リアラは」
漸く発せられた小さい声を聞き逃さないように俺は息を潜める。
だが、ジューダスは弱々しく首を横に振った。
「……いや、やはりこれは僕から言うべきことじゃない。……すまない、ロニ。これはリアラ自身が言うべきことだろう」
ジューダスの言葉に俺は少しがっかりしたが、それだけ重大な話なのかもしれない。だからこそ、仲間に打ち明けて欲しいというのが俺の勝手な思いだが、ジューダスもリアラも自分一人で抱え込む癖は一緒だ。だからこそ、告げられない想いを知っていて勝手に話せないのかもしれない。
「ただ、僕はお前達が知らないリアラの秘密を知っている」
「……そういや、船が沈みそうになったときも、リアラの力のことお前は知っていたもんな」
「エルレインから二人の聖女の話を聞いていた。僕はエルレインの力で甦った身だ。同じ力を持っているリアラのことも分かった」
そういうことだったのか。
種明かしへの感嘆は心のうちに留め、無言で先を促す。
「リアラが自分の英雄であるカイルの思いを優先させていることは分かっている。カイルの考えを理解してくれていることも、エルレインの考えに否定的であることも。……だが、僕の知る一つの事実が、最悪を想定させる。……そうなったときのことを、ずっと覚悟している」
伏せられた目に宿るのは、言葉通りの覚悟の光だった。その覚悟の強さや重さを、俺は今回十分に知った。
「そうか……話してくれてありがとよ」
ジューダスの覚悟の重さが、そのまま胸に圧し掛かっているようだった。それを吐き出すように、息を吐きながら俺は感謝を述べた。また一つ、俺はジューダスの荷物を持つことが許されたんだ。
「リアラが何を隠しているか、それを知らない限り何とも言えねぇが、お前の歴史改変を許さないって気持ちは、俺も一緒だ」
ジューダスは一つ息を吐き、目元を和らげた。
「ありがとう、ロニ」
素直な感謝の言葉に、喉がきゅっと絞まる。
「不思議だな……お前がダイブするごとに、なんだか、感情が落ち着いていく気がする」
「……マジか、そりゃ……嬉しい、な」
顔が熱くなって、額に手を当てた。その姿を見たジューダスが「なんだそれは」とクク、と喉を鳴らすように笑った。
「ロニ」
笑いを収めてジューダスは俺をじっと見てきた。
「お前の、その……好きだとかいう気持ちは、何となく本当だと分かった」
「……おう」
突如向けられた告白についての言葉に心臓が大きく鳴り響く。
「だが……僕は、その…………」
ぎゅう、と寄せられた眉に、俺の心臓も一緒にぎゅうっと絞られたような気分だ。
「……い、まは……答えられない……から」
「そっか」
今は、答えられない。そうか、……ん。全然、問題ないじゃねぇか。
嫌だと言われたわけでもない。今後の付き合いの為に濁すようなことを言う奴でもない。本当にその気がないならきっぱり突っぱねるだろう。脈、あるんじゃねぇのか。なぁ。おい、やばい。
「構わないぜ。今日はもう、寝るか」
「……あぁ」
無理やりにでも、今後俺の方へ傾けてやりゃいいんだ。
口が勝手ににやけた笑みを浮かべそうになるのを、必死に耐える。
頬が筋肉痛になりそうだ。
ソーディアンが完成し、ダイクロフトへの総攻撃、最終決戦まで残り僅かとなった。まさか、こんな大きな戦争に巻き込まれることになるとは、旅に出たときには露程も思わなかった。
今のところ、エルレインからの歴史介入は防げていると言っていいだろう。アトワイトさんも無事に助け出すことが出来たのだ。ジューダスの精神世界と同じように、無茶やらかしえ何とか犠牲を出すことなく救出が叶った。
「準備はいつも以上に万全にしておくんだ」
「うん!」
与えられたラディスロウの一室でジューダスは地図を広げ何か考えながらもカイルの装備に目を向けている。行き当たりばったりの俺達を補うようにジューダスはいつも一人考えてくれている。今回はいつもより念入りに熟考しているようだ。
しばらくして、ジューダスはカイルとリアラ、ナナリーに武器の修繕に行かせた。カイルらが部屋を出て行くのを見送ることもなく、ジューダスはすぐにダイクロフト内部の地図に目を向けている。
自動で閉まるドアの音を聞いてから、地図の前の椅子に座った。
「随分考え込んでんな」
「馬鹿と違って考えなければならないことは多くてな」
ジロリと仮面のしたから綺麗な紫紺の瞳がこちらを向いた。
「あーあー!賢いジューダスちゃんにはほんと助けられてますよーだ!」
ジューダスは鼻を鳴らし、また地図へと目を向ける。
「戦争だからな。それも、今回は最大規模だ」
「……そうだな」
今回は救出して逃げるわけではない、どちらかが降伏するまで戦うのだ。最終決戦。歴史に残る大きな戦争だ。ジューダスの表情が硬くなるのも仕方がないだろう。
俺も思わず地図に目線を落とした。作戦は既に何度も何度もジューダスに反復して教えられているからこの俺ですら覚えている。今回ばかりはカイルにもジューダスは厳しく覚えさせていた。
「ロニ、お前は……」
「ん?」
落としていた視線を上げる。ジューダスは目が合うなり瞳を揺らがせ目を伏せた。
「どうした?」
再度促すが、沈黙が長く続いた後、「いや」と呟かれて再びジューダスは地図に目を落とした。こうやって一人で抱え込むのはコイツの悪い癖だ。
「ジューダス、何を言おうとした?本当はそれを言うために俺を残したんじゃねぇのか?」
「……」
「言えよ。一人で抱え込むなって」
「……」
やがて逸らされたジューダスの瞳が戻ってくる。眉が僅かに寄せられているも、瞳は異様に冷たかった。何か、とてつもない覚悟を感じさせられる。
「人を殺す覚悟はあるか?」
ジューダスの言葉に、俺は息を呑んだ。
これは、そう。戦争だ。人と人とが戦う戦争だ。生物兵器としてモンスターが多数敵勢力となっているが、兵士と一切戦わないというわけでもない。俺も、心の片隅でその現実と向き合っているつもりだったが、改めて口に出されると恐ろしいものだった。
「覚悟をしていても、そのときがくれば躊躇いが出る。それが原因でこちらが死ぬこともある」
「……あぁ」
「当然、覚悟をしていなければ余計とだ」
「そうだな」
ジューダスは覚悟が出来ているのだ。俺よりも年下の、カイルと同い年である少年だというのに。戦争一歩手前の騒乱を生きたからだろうか。
ジューダスの瞳が伏せられた。
「何が起こるかわからない。今までの戦い以上にだ。……僕達の中の誰かが命を落としても、何もおかしくはないんだ」
「……」
そんなこたぁない、と楽観的に言い切ることは出来なかった。この場でジューダスが言いたいのはそういう話ではない。だからカイル達の居ない場で俺に躊躇いながらも告げているのだろう。
「何があっても冷静さを失わないことが大切になる。覚悟を持つことが、それに繋がる」
「あぁ、そうだな」
ジューダスは一人でその覚悟をし、カイル達を守ることを考えていたのだろう。ベルクラント開発チームの救出からかなり気を張っているのが見て取れた。仲間を守るためなら自分の手を汚すことも辞さない覚悟を持ち続けていたんだ。
ただ、今回ばかりは一人で守りきれるかわからない状況に、俺を、頼ってくれたのだ。
「大丈夫だ、ジューダス」
あのジューダスが、俺を頼ったのだ。こんなもん、覚悟してみせるしかねぇだろ。出来なくても、無理やりやってやる。
「俺はカイルも、ナナリーもリアラもハロルドも、お前も、守ってみせる」
表面上は物怖じせず微笑んで見せた。ジューダスは少しだけ目を瞠り、その後肩の力を抜くように息を吐いた。それが、あいつの抱えていた荷物を少し分けてもてたかのようで、嬉しい。
「どこから来るんだ、その自信は……」
ジューダスは呆れたように微笑んだ。
「僕はお前に守られる必要はない。お前より対人経験は豊富なはずだ」
「おーおー、頼もしいこった!じゃあ、あれか?背中を預けあうってことでよ!……と、背中を合わすには背が足りネェか?」
ベチ、とジューダスの手元にあったペンが俺の手の甲へとぶち当たる。「いてぇ!」と叫びながらも俺は声を上げて笑った。
「ジューダス、俺やっぱお前のこと好きだわ」
脈絡のない俺の言葉に、ジューダスは目を丸めた。分かってる。唐突なのは分かってる。でも真っ直ぐそのまま思ったことを言っただけだ。
瞬きの回数があからさまに増え、居た堪れないようにジューダスはそっぽを向いた。その姿に俺はにやにやしてしまう。
「絶対生きて戻ってこようぜ」
「……当然だ」
天地戦争は歴史通りに終戦した。俺たちは誰一人として欠けることはなかった。
しかし、地上軍の兵士たちの犠牲は数知れない。大きな争いの恐ろしさは空から降る外郭の記憶によって知っているつもりではあるが、それでも改めて刻み付けられた。
やりきれない思いが未だ残る中、俺たちはラディスロウの一室に休ませてもらっていた。
直ぐにまた、時間を越えてエルレインの歴史改変を防ぎにいかなければいけない。次は、神の眼の騒乱の時代だ。
バルバトスの言ったことを信じるならば、神の眼の騒乱の最終決戦を終えた後、あいつは現れる。
しかし、十八年前か。ジューダスは……どう思うのだろう。自分が死んだ後の戦いを。自分を犠牲にして先へ進んだものたちの敗北の瞬間を。……四英雄の、姿を。

Comment