【TOD2】 dive 続き – 15 –

diveTOD2
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拍手ありがとうございます!
第六階層はちょっと滾りがたりませんね><崩壊している世界なので仕方ないか!
diveもかなり進んできましたね><あと少しだ!><
今日久々にPSPのD2で二戦目バルバトスに挑みました。
ハードで。
5回死んだ。畜生!!!!さすがバル先生。
なんかどんどん左に押し込められると困っちゃいますよね。ジューダス使ってるから悪いんだろうね。カイル君にくうはぜっぷーしてもらえばいいのにね。
しょっぱなハロルドのスペクタクルズにカウンターもらったのは笑いました。
とりあえず麻痺がきつかったので、最後にはコンボしている間にリキュールボトル前衛二人に使い、後衛のTP切らさないようにグミ使ってたら何とか勝てました。最後かなり左に詰めてこられてたんで危なかったですがヒィヒィ
二週目グミ嫌い取るときは難易度イージーにします><;
グレードが無事+だったのは嬉しいもんでした!



今度の記憶には俺の知らない人物が出てきた。
俺は随分と立派な庭で一人剣を振るっていた。体が軽やかに動き視界がぶれることなく一点に集中している。あいつが剣を振るっているときはこんな感じなのか。すげぇ。
「リオン、精が出るな」
「フィンレイ様」
フィンレイ……聞いたことのある名前だな。どこで聞いたんだっけか。
現れた男は背が高く、服の上からでも鍛え上げられただろう体つきなのが分かる。その場に居るだけで背筋が伸びるような、そんな軍属の上官のような雰囲気の人だ。
というか、振り向いた先にどう見ても城と見える立派な建物の柱が見えた。こりゃ、セインガルドの剣士としてリオンが王宮にいたときの記憶かもしれない。ちょくちょく見かけたジューダスの上品な所作は王宮で過ごしていた時間から来ているのか。
「リオン、お前は一人で戦うことばかりを想定していないか」
「僕は晶術を使います。むしろ周囲に味方が多ければ力を発揮できません」
「それは正しい。実際、お前は単独で動いてもらうことが多いだろう。だが、もう少し周囲の者達を頼るといい。周囲の人間を理解し、また理解してもらう努力をしろ。心を開け」
フィンレイと呼ばれた男は目を細めた。纏う雰囲気から威圧感があるが、存外優しく穏やかな目をするもんだ。
「きっとお前が生きていく上で、とても大切になる」
「……はい」
少しの間を置いて小さく返事が返される。
一人で抱え込む性質は昔から変わらないんだな。
「それはそうと、リオン。前の大会の、あの決勝戦は見事だった。体格差を逆手にとった戦法、私の教えをよく生かしていたな」
突如、嬉しいという感情が胸に湧き上がった。
「だが、荒いところもあった。お前はまだまだ伸びる。久々に試合をするか」
「はい!ありがとうございます」
リオンはこのフィンレイという人物から剣術を習っていたのか。
厳しそうではあるが、こいつのことをよく理解してくれていると思う。リオンもまた、目の前の男に心を開いているようにも思えた。
……ガラス球に記憶として残っているのは、大切な記憶だからだ。
次の記憶では再びスタンさんが目の前に居た。また街中での出来事のようだ。
「リオン、今までありがとな!リオンがいてくれなかったら、きっと神の眼は取り戻せなかったよ」
スタンさんは顔を綻ばせてそう言った。
スタンさんの台詞から考えるに、神の眼を一度奪い返してソーディアンマスター達が各々の帰るべき場所へと解散する場面だろうか。
「……別に、これが僕に与えられた仕事だっただけだ」
「すっげぇ助かったしさ、俺、リオンと旅が出来てよかったよ」
ギャアォ、と化け物の大きな鳴き声があがった。視界が移動する。そこに巨大な竜の頭が見えたから驚いたが、それが飛行竜であると気づき納得が行った。スタンさんはこれに乗って故郷に帰るのだろう。
「元気でな、リオン。また会おう」
「……また?」
「うん。なんだよ、会ってくれないつもりなのか?」
スタンさんは少し唇を尖らして拗ねて見せた。
「……勘違いするなと、言っただろう。僕とお前の立場が」
「同じだと思うなって?でも俺の罪はもう免除だろ?」
「……」
「へっへっへ!」
してやったり、といった顔でスタンさんは笑った。
そういえば、最初は遺跡を荒らしてしまったことから罪人扱いだったとかいう話を笑い話のように聞かされた覚えがある。
かの四英雄が罪人だったなんて、とにわかに信じられなかったが、本当のようだ。
「同じソーディアンマスターだしさ、一緒に旅した仲間じゃないか」
別れの握手を求めているのだろう。スタンさんが右手を差し出す。だが俺の体は一向にその手に応えようとはしなかった。暫くしてスタンさんは諦めて苦笑を浮かべて右手を下ろした。
「じゃあな、リオン!俺、とりあえず故郷のリーネに戻ってるからさ。また何かあったら来いよ!」
そう言いながら飛行竜へと向かう。右手を振りながら、スタンさんは飛行竜へと乗り込んだ。
俺はそれをずっと眺めていた。飛行竜へと乗り込む姿から、飛行竜が空高く飛び、視界から見えなくなってしまうまで。
ずっと見ていた。
このあたりで見つけたガラス球は以上だろうか。もしかしたらまだ瓦礫に隠れてあるかもしれないが、とりあえず目に付く場所にあったものは全て見た。
大切に保管されていただろうガラス球。その保管場所もろとも崩れて壊れたこの世界。
虚しさが込み上げてくる。少なくともリオンはスタンさん達とは敵対して別れたのだ。
今度は瓦礫を掻き分けてガラス球を捜してみようか、そう思って当たりを見回したとき、見慣れた剣がこちらに向かってくるのを見つけた。
「シャルティエ!」
「よかった。やっと見つけた」
シャルティエが俺の直ぐ近くで動きを止める。
「ロニ、こっちについてきて。この辺は不安定なんだ。危ないよ」
「あ?お、おう」
急かされるままに俺はシャルティエの後をついていく。
それにしてもこいつは今までどこにいたのだろうか。この世界全てを見回してもいなかったというのに。シャルティエも俺を探していたようだから行き違いになっていたのか?こんな狭い世界で?それにしても、不安定って、なんなんだ。
「なぁ、ここは一体どうなってるんだ?何でこんな崩壊しちまってるんだ?あいつに何かあったのか?」
シャルティエの速度にあわせて足を速めながら俺は質問を矢継ぎ早に飛ばした。シャルティエは速度を緩めることなく答える。
「ここは残骸なんだよ」
「残骸?」
「昔はコスモスフィアの世界の一部だったんだけれど、崩壊したんだ。第三階層でインの世界が切り離されたのを君は見たでしょう?インの世界は切り離されても遠くに浮かんで残っているけれど、この世界はめちゃくちゃに壊れて墜落したんだ」
崩壊。墜落。めちゃくちゃに、壊れたって……精神世界の一部が壊れるって、どうなるんだ。なんで、そんなことが……もしかして俺が何かしちまったのか、まさかインの世界が切り離されたとき?
「何でだ!?それって、大丈夫なのかよ!?いつ、そんなことが……」
「崩壊したのは坊ちゃんがまだリオンと呼ばれているときだよ。君のせいじゃない」
俺の不安を正確に読み取ったシャルティエからのフォローでひとまず落ち着く。俺はシャルティエの後を追いながら崩壊した世界を見て顔を顰める。
スタンさん達との記憶を大事に保管していた世界が崩落したんだ。
「……この世界にジューダスはいるのか?俺がいけるところは全部行ったぞ」
今シャルティエが向かっているところは俺も既に行った場所だ。この先は確か行き止まりだったはずだ。だが、シャルティエは迷いなく浮遊していく。
やがて世界の端である崖へと到達した。
「ここから飛び降りて」
「……おいおい、先が何も見えねぇぞ」
なんて恐ろしいことを言うんだ、こいつは。
「大丈夫。暗くて見えないだけでちゃんと地面があるから」
「本当だろうな?嘘吐いてたら祟るからな!」
「嫌なら現実世界に戻る?」
ぐっ、腹立つなぁこいつ!
俺は黙って覚悟を決めると崖から飛び降りた。
落下距離は、三メートルぐらいだろうか?思ったより直ぐに地表があったので上手く着地が出来ず足に痺れが走る。
飛び降りるまでは不思議と暗かったが、この場に足を着いてからは周りの景色を確認することができた。だが、相変わらず風景は先ほどまでの崩壊した世界と代わり映えがない。
辺りを見回していると、ふと一つ光の柱を見つけた。あれは、パラダイムシフトの光?でも、今まで見たものと比べかなり弱々しい。何より、俺はこの世界に来てから何かしただろうか。今までそれなりに何かしら行動を起こした結果パラダイムシフトが発生していたはずだが……。
シャルティエはあの光の柱に対して何を言うでもなく、ただその光に向かって進んだ。俺は慌てて後を追った。
暫くして、光の近くに真っ赤な鎖の存在があることに気づく。崩壊した壁によって視界が遮られている為全貌はわからないが、ある一部分にのみ集中して鎖があるようだ。
シャルティエを追って視界を遮っていた壁を通り越したとき、赤い鎖の先にいた人物に俺は叫んだ。
「ジューダス!?」
赤い鎖に体中を縛られ横たわった状態で宙吊りにされているジューダスがそこにはいた。ぐったりと力なく投げ出された四肢、閉ざされた瞳、真っ白な顔、体中に切り傷が見られた。
俺は鎖にしがみ付き、ジューダスの顔を覗き込む。その頭に仮面はなく、衣装もいつもの漆黒のものではなく、エルレインの夢の世界で見たものになっていた。
「おい、ジューダス!しっかりしろ!!ジューダス!くっそ、なんだこの鎖!!」
赤い鎖はいままで見てきた脆く錆び付き風化したものではない。血の色を連想させる赤はそのままに、強固な作りとなったそれはどれだけ力を入れてもジューダスの体が揺れるだけで千切れる様子が全くない。
「ジューダス!」
「ロニ……残念ながらその坊ちゃんは目覚めないよ」
シャルティエがジューダスの顔の直ぐ近くまで移動し、コアクリスタルを弱々しく光らせて言った。
「……死んでる、のか?」
「生きてはいるよ」
「なぁ、どうすれば助けられる!?この赤い鎖はどうすれば壊せるんだ!」
シャルティエは長い沈黙の後、すぅ、とジューダスの傍を離れた。
「ロニ、坊ちゃんの思い出に触れていたね」
「あのガラス球のことか?」
「そう。この階層の坊ちゃんは、とても大切にしていた」
そうだろうな。俺にもそれはわかる。だというのに、そんな仲間を思うジューダスの世界を崩壊させた奴が居る。胸を焼く怒りが込み上げてくる。一体なんでこの世界はこんなことになったんだ。
俺のせいではない、ダイブが原因でないとするならば、現実世界で起きたことが原因でこうなったはずだ。ジューダスに……神の眼の騒乱の時に、一体リオンに何があったんだ。
「とても大切にしている、その思いを君に見てもらえただけで、それだけでこの坊ちゃんは救われたんだろうね。だからパラダイムシフトが起きているんだ」
シャルティエの言葉に俺は光の柱へと眼を向けた。その光は赤い鎖に捕らわれたジューダスの直ぐ後ろにある。
やや弱った光に照らされたジューダスの表情は、悲しげに見えた。
「坊ちゃんを赤い鎖で縛った者は、次の階層に居る」
「なら、俺はすぐ行く!そしてそいつをぶん殴ってやる!」
「……その前に、ロニ……君に見せなければならない……坊ちゃんの代わりに、僕が案内するよ。来て」
「あ?」
随分、緊張を感じるような暗い声色でシャルティエは言った。
俺の声にシャルティエは反応を見せず、再び浮遊しながら移動を開始する。俺は黙って追った。移動距離は先ほどよりも短かった。
シャルティエが案内した先。目の前に広がった光景に、一瞬視界がぐらついた。
「スタンさん……」
この薄暗い世界でも目立つ金髪が、地面に散らばっている。スタンさんは力なくそこに倒れていた。
「スタンさん!」
シャルティエの横を駆け抜け、スタンさんに走り寄る。
絶句した。その顔色は生きているものではなかった。口の端から血が垂れている。その血は乾いて固まっているようだ。よく見れば、周囲がどす黒い血の跡もある。
孤児院で倒れたスタンさんの姿がフラッシュバックする。頭をがんがんと叩かれているような気持ち悪さの中、途方もない怒りと憎しみが沸いて出た。
「なんだ、なんだこれ!!誰だ!!誰がこんなこと!!!」
周囲を見回せば、スタンさんだけじゃない。ルーティさんも、フィリアさんも、ウッドロウ王も倒れている。あの記憶の中で見たフィンレイと呼ばれている男も倒れていた。
なんて非道な。一体誰が、こんなことを。この世界を壊して、この人たちを殺したのは一体誰だ!?
「シャルティエ!!教えてくれ!許さねぇ……誰がこんなこと!」
「……」
「誰だ!!」
「坊ちゃんだよ」
「あぁ!?」
「坊ちゃんだよ」
二度目の言葉に漸く理解し、同時に思考が停止した。
倒れているスタンさんへと自然と目が向かった。鎧を避けて腹を貫かれたのだろう痛々しい姿が目の前にある。
「……」
ジューダスが、殺した?信じられない。そんな馬鹿な。
シャルティエに否定の言葉を求めて視線を向ける。だがシャルティエは沈痛な声で話を続けた。
「第六階層の、あの赤い鎖に繋がれて眠っている坊ちゃんは、スタン達と過ごす日々をとても大切にしていた。でも、それを許さないもう一人の坊ちゃんがこの階層に現れ、スタン達を殺したんだよ。抗う第六階層の坊ちゃんを拘束して、目の前で殺した」
それを許さない、もう一人のジューダス……?
「それから、この階層を破壊しつくした。そうしてこの階層は崩落したんだ」
「……スタンさん達を殺して、この世界を壊した……?……もう一人の、ジューダスが?……もう一人のジューダス?……なんだよ、それもう一人のジューダスって……」
「この階層外の坊ちゃんだよ。違う階層の坊ちゃん。この階層の坊ちゃんはスタン達を裏切りたくなかった。でも、相反する想いを持った坊ちゃんの方が、強かったんだ。その坊ちゃんにとって、この階層は邪魔だった」
相反する想い?スタンさん達を裏切りたいって想いがあったってことか?その想いを持ったジューダスが、存在する?
「その坊ちゃんは、次の階層にいる。第七階層の坊ちゃんが、この第六階層を壊した本人だ」
第七階層のジューダス……。それが、スタンさん達を裏切った理由そのものなのだろうか。
第七階層のジューダスに会えば、第七階層に行けば、謎が、あのジューダスが裏切り者として名を馳せることになった謎が解けるのか。
分からない問題への解答だけをただ求め始めていた俺に、シャルティエがぴしゃりと言い放った。
「ロニ、ダイブは、ここまでにしよう」
「……何を、今更」
「第六階層まで来たんだ。十分坊ちゃんのことは理解してくれたと僕は思う。だから、ここまでにしないか」
「おいおい、第七階層に何があるか、そこまで明かしておいて今更なんだよ」
「第七階層は、坊ちゃんがリオン・マグナスとして生きてきた世界だ」
「それが何だってんだ」
「危険なんだよ。リオンとして生きる坊ちゃんの世界に他人が入り込むのは」
他人?なんだよそれ。危険って、何で。リオンって一体何なんだ。
リオンは、歴史に名を残す裏切り者だ。だが、その一方で四英雄と共に旅をし、絆を深めてもいた。ガラス球に残るリオンとしての記憶。大切に宝箱にしまってあっただろう思い出。
「でも、あのガラス球を……スタンさんたちを大切にしていたのも、リオンなんだろ」
「……そうだね。でも第六階層のリオンと、第七階層のリオンは大きく違う。正反対と言ってもいい。君達の知る坊ちゃんとは全く違う。今までのようには行かない」
解せない。俺には理解できない。この第六階層まで俺の中のジューダスという人物像は変わらずぶれなかった。なんだかんだで、ずっと仲間を想っている。そんな奴だ。それが、第七階層になって突然全く違うなんて言われても理解できるわけがない。
「僕は心の護だけれど、残念ながらこの階層以降は坊ちゃんも君も守りきれる自信がない。心の護の干渉には限界がある。それほど、深層心理と呼ばれる第六階層以降のダイブは危険なんだよ。……この先に進めば、君は坊ちゃんに殺されるかもしれない。逆に、君が坊ちゃんを殺すかもしれない」
「殺すって、んな……」
「そこにいるスタンをよく見るんだ。そのスタンを殺したのは間違いなく第七階層の坊ちゃんなんだよ。君とて例外ではない」
「……」
促されるまま、俺はスタンさんへと目を向ける。
深い腹の傷。これをジューダスがつけたなんて、全く想像できない。
「君は坊ちゃんの優しさを感じ取ってくれた。その坊ちゃんの優しさは確かに本物だ。でも、坊ちゃんの心を形成しているのは優しさだけじゃない。坊ちゃんは時に……冷酷なんだよ」
冷酷……確かに現実主義者であるジューダスは時に厳しい選択に晒されれば、何かを犠牲に進むことを厭わないところがある。第五階層でリアラに攻撃をしたときのように。……そういう、ことなのだろうか。
だが、それでも第五階層のジューダスは、なんだかんだ言っても本気で攻撃をしてなんかいなかった。
「次の世界は四英雄を裏切ったリオン・マグナスの世界。君達の知る坊ちゃんは居ない」
「……なんだよ、二重人格とかそういうわけじゃねぇんだろ?わかんねぇ。ずっと考えてた……でも俺にはそれが信じられねぇ」
「そうだろうね。君は坊ちゃんが抱いていた二面性を知らない。でも、そこに死体となっている者達は、間違いなく坊ちゃんが殺した。その事実から目を逸らしてはいけない」
再びスタンさんへと視線を落とす。
俺には、理解しがたい。だが実際に第五階層で同じことが起こっていたかもしれない。あの時はなんだかんだで何とかなったけれど、もしどうすることもできなかったら……こうなるっていうのか。
だが、リアラのときはまだ何となく理由がわかるが、一体スタンさん達を、あの思い出の世界を崩壊させるほどの想いっていうのは、何なんだ。
「ロニ。もし君が第七階層で殺されれば、君は精神の死を遂げる。そうなったとき、きっと現実世界の坊ちゃんは罪の意識に苛まれるよ」
「……」
「反対に、君が第七階層の坊ちゃんを受け入れがたくて殺したとき、坊ちゃんは二度と目覚めなくなるだろう」
「俺は……」
「ロニ。そのリスクを推してまでダイブする意味はあるの?」
「……」
知りたい。何が理由で、どんな想いがあって、この尊い階層を崩壊させたのか。何が理由で四英雄を裏切ったのか。だが、その理由を探るのには、命を張らなければならない。ジューダスと、本気で戦わないといけなくなるのだという。
俺が死ねば、ジューダスのことだ、シャルティエの言う通り、絶対罪の意識に苛まれる。一方で、もし本気でジューダスが俺を殺しにかかったとして、それを止めるのに俺はどこまで手加減ができるだろうか。……ジューダスが本気だった場合、きっと手加減なんてできやしない。下手をすれば……。
何故だ。何で第七階層のジューダスが俺を殺しにくることが前提になっているんだ。他人だから?なんでだ。
それを知ることも、第七階層に行かなければ適わないのだろう。
「心の護として、僕は君をここで止めたい。……だけど同時に、君が坊ちゃんの全てを受け入れてくれることに期待もしている……」
「シャルティエ……」
「でもそれが、どれだけ無謀なことなのかも僕はわかっているんだ」
止める一方で、シャルティエだって本当は、この第六階層のジューダスを鎖から解き放ちたいんだ。こいつがジューダスのことを心から思っているのは、間違いないのだから。
「だから、ロニ。もし第七階層へ進むというのなら、何が何でも絶対、坊ちゃんの全てを受け入れるのだと、どんなことがあっても、一生坊ちゃんを大切にするんだと、そう誓ってから来て」
シャルティエからの思わぬ言葉に俺は眼を瞠った。
「君の一生だけじゃない、坊ちゃんの一生をも賭けることになるんだ。その覚悟を持ってから、来て」
シャルティエは俺に託そうとしてくれている。ジューダスのことを、本気で。これ以上進むにせよ、進まないにせよ、進んだ結果がどうなったにせよ、全て俺の選択に託すと。
俺は未だに、第七階層のジューダスの危険性を鵜呑みに出来ていない。だが、誰よりもこの世界のジューダスのことを知っているはずのシャルティエがそう言っているんだ。
俺だけじゃない、ジューダスの一生すら大きく動くことになる。
これ以上進まなければ、互いの命が危険に晒されることはない。だが、進まないとこの階層のジューダスはずっと雁字搦めだ。
「……わかった……少し、考えてくる」
簡単に出せる答えじゃない。俺だけで考えていい問題でもない。時間をかけて考えなければ。
シャルティエは小さく「うん」と言った。
「それじゃ、とりあえずパラダイムシフトを。その後どうするかは、現実世界で考えて」
「あぁ……しかし、パラダイムシフトはどうするんだ?あの赤い鎖は解けないんだろ?ジューダスを光の中に連れていけねぇ」
言っている最中、シャルティエのコアクリスタルが光、空から何か光る物がゆっくり降りてきた。それは俺の胸の前辺りにまでゆっくり降りてくる。俺はとっさにそれに手を伸ばした。同時に光が消え、俺の手のひらに何かが落ちる。
「これは……」
あのガラス球だった。
「坊ちゃんの記憶。これも坊ちゃん自身だから、それを持ってパラダイムシフトの光の柱へ入って。それで完了するはずだから」
「そうか」
シャルティエに言われるがまま、俺は弱々しい光を放つパラダイムシフトへと足を向ける。
通り過ぎたジューダスの悲しげな表情に目が行く。大切にしていたものをめちゃくちゃに壊されたその痛みは、どれだけのものだったろうか。自分の精神世界の一部を自分で壊すというのは、どれほどの思いによるものなのだろうか。
「じゃあね、ロニ」
パラダイムシフトの光まで後一歩というところで、シャルティエが小さく別れを告げた。俺は「……あぁ」とだけ返し、光の中へと入った。

すみませんまた集中力きれてまs
第六階層でした。パロ元は1~3までシリーズ出ているのですが、2と3はヒロインをどれか一人選ぶためにコスモスフィアでこれ以上入るのなら結婚するつもりで!(そこまでは言わないけど)って感じに心を決めやがれよ!ってイベントがあるんです。それ意識してみましtぶひひ
はて、恒例の設定行きます。ちなみに第六階層以降の階層設定ネタバレが自重されてないので、内緒のクソみたいな小説でもネタバレを気にしてくださる方がいらっしゃいましたら回避してください><
神の眼の騒乱時代にスタン達に心を開いていた人格のリオンが居た階層って設定です。
スタン達やフィンレイと過ごした日々もまた、掛け替えのないものだった。それを大切に宝物にしていた坊ちゃんです。
マリアン至上主義であり、その為にヒューゴの言われるまま冷酷になりきる第七階層のリオンと大きく三回衝突しています。
フィンレイ毒殺時、二度目の神の眼を奪う時、そしてスタン達を足止めするために戦闘したとき。それ以外でも小さい衝突は当然ずっとあったのですけれど、大きなのはここですね。
残念ながらその力の差は圧倒的でした。当然、全部第六階層のリオンが負けています。
崩壊前はインとヨウの世界で、インに暮らしていたリオンがヨウへと赴いては思い出としてガラス球を持って返って家に大事に保管していた。そんなのほほんとした温かい世界がありました。まぁ第六階層なんでのほほんと言うと御幣がありますが……
あんまり深く設定はしていませんが、そんな穏やかな思いの裏にはヒューゴへの憎しみの思いとかも同時に強く抱いていたと思います。あとは、インの世界に居る劣等感とか、スパイとしての罪悪感とか、ルーティへの妬みとか色々暗いものも同時に持ってたんじゃないかなぁ。それがあったからこそ、第七階層のリオンに負けたんでしょうね。もし当時の彼にダイブして当時の第六階層をクリアしてくれる存在がいたならば、彼は第七階層に勝って、現実では誰かに助けを求めていたかもしれませんね。
(内緒の妄想小説のフィンレイに助けを求めたverはそれといえます。現実世界から第六階層をクリアしたフィンレイ様。でも現実には勝てなかったYO。多分あの場合、あの時点で第六階層崩壊してスタンたちには心開かないかもしれません。完全トラウマ化)
ヨウの世界にはフィンレイとかスタンとかルーティとかが生活していました。第二階層~第五階層と同じような感じで。
ただ、第七階層のリオンと衝突の末、フィンレイが殺され、その後スタンとルーティも殺され、自身も身動きを封じられ、階層自体が墜落します。
スタン達を殺す覚悟、その為にいらない思い出を切り捨てたかったが故の精神世界の変化ってことで。
でもガラス球は完全に割れることなく残っていますし、第六階層のリオンは身動きを封じられていますが生きています。完全に喪失した世界ではないんです。
思い出すのに痛みを伴うながらも、大切な記憶として残っている。そんな感じを再現できてたらなーって思いつつ^p^
ちなみにこの階層が崩壊したままなのは、リオン死亡という節目があるからです。リオンとジューダスは大きく隔てられ、この階層はリオンとしての過去の回想という面が強いです。
この階層が現実バージョンに変化していないのは、リオンとジューダスを別ものとして考える人格の存在が邪魔しているっていう設定です。
決してリオンとしての過去をロニに見せるためだけに作ったとかそういうわけじゃないんだk そういうわけです。

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