ハートが夢見る医者 – 2

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珀鉛病を治すための医者探しは、ローにとって、とても辛いものだった。

病院とは、ローにとっては家も同然だった場所。真っ白で清潔すぎる部屋も、薬品の匂いも、慣れ親しんだもの。忙しなく患者のために動く医師も、優しく声をかけてくる看護師も、失った世界を思い出すものだった。

あの頃に戻れたならばと、叶うはずのない願望が、決して叶わないとわかっていながらも芽生えてしまう。そしてそれが、肌を見られることをきっかけに粉々に打ち砕かれるのだ。

――皆殺しにされたはずだろう! 何故生きているんだ!?

驚愕に表情を歪ませて、声高に医者は言う。今すぐに出て行けと。病気の哀れな子供だと思って接していた優しい医者や看護師が、その表情を突如変えるのだ。

その瞳にわずかな罪悪感が滲むのを見たこともある。それでも、この場から消えてくれと、そう懇願するように誰もが睨み付けてくる。

そんな目を見ると、どうしようもなく、ローの胸は苦しくなる。喉の奥がきゅっと締め付けられ、息が苦しくなる。悲しくて、悔しくて、こんな世界は壊れてしまえばいいと、必死に世界を呪った。

だが、なにもかも壊したいと願いながらも、ローは病院や医者からはただただ逃げることしかできなかった。

心のどこかで、彼らの行っていることは間違いではないと、仕方のないことなのだと、そう理解していた。珀鉛病は伝染しない病気だ。だが、もし伝染する病気だったのならば、彼らの行動は……仕方のないことではないか。

彼らも必死なのだ。弱った患者を抱えている。家族が、友人が、近くに暮らしている。その者達を守るという結果が、ローをこの場から消去するということだった。ただ、それだけなのだ。

その非情な現実と、ローはとても向き合えなかった。

彼らにホワイトモンスターと呼ばれ、家族や友人たちと同じように殺されることなど、到底受け入れられない。誤った情報に踊らされ、大切な人を殺された憎しみに苛まれる。でも、彼らを敵とみなし、医者と呼ばれる者たちに銃を向けるには、ローにとって彼らは近すぎた。

「お前ら! それでも医者か!!」

そんな複雑な心境から、逃げることしかできないローとは対照的に、コラソンは一切の迷いなく医者を殴り飛ばした。お前たちは間違っていると、病院が煙を吹くほど暴れまわった。初めてそんなコラソンの姿を見たとき、ローは目を丸めた。何て無茶苦茶なことを言うのだろうと。そして、いつもと少し違う涙を滲ませた。

世界中の誰もが、ローすらもが、これは仕方のないことだと、そう諦めたことを、コラソンだけは違うと怒ってくれたのだ。ローはモンスターではないと、人なのだと、だから医者として治療してやるべきなのだと、この北の海でコラソンだけが主張したのだ。

殴られた医者は狂人を見るような目をコラソンに向け、必死に電伝虫を取ってどこかへ通報しようとする。それを見て更に怒るコラソンの腕を、ローは強く引っ張った。

「もういいよ! コラソン!」

コラソンが自分の為に怒ってくれているのはわかる。だが、やはり医師たちの判断は正しい。

もう自分は人にはなれない。モンスターはモンスターらしく、世界を呪って壊して、そうやって苦しみを紛らわせながら生きるしかない。だからもう、無理にあの世界に戻らせようとするのはやめてくれと、そう思った。

むしろこうやって、元の世界に接すれば接するほど、自分が世界から弾き飛ばされたことを自覚してしまって辛い。今まで普通に享受し、幸福に暮らしてきた愛おしい世界には戻れないことを見せつけられて辛い。哀れで惨めな自分の姿に気づいてしまうのが辛いのだ。

それでも、コラソンは怒り続けてくれた。コラソンだけはローを、世界を呪う異端児でもなく、恐ろしい伝染病患者としてでもなく、ただ病気に苦しむ哀れな子供と思って優しく接してくれるのだ。

それは、ローの心を救った。

熱が出たら優しく額に手を当てられ、その眠りを守ってもらえる。これ以上悪化しないようにと心配してもらえる。その命が健やかに育つようにと愛を注がれる。たった数年前には、当たり前のようにあった世界。今はもう、決して受けられないと思ったそれを、コラソンは与えた。

だから、ローは数年前の、ありのままの自分を取り戻し始めていた。彼の隣に居続けることで、いつしかローは世界を呪う気持ちから解き放たれていた。

「もう、病院はいいよ。おれだって……嫌なだけだし……病院の人らも、怖がらせちまうだけじゃねェか」

病院から追い出され、逃げ出した先で、度々ローはそう訴えた。珀鉛病を持った人間に突然侵入されて、今頃殺菌や後始末に大変だろうなと、ローは思う。彼らに理解を得るのは不可能なのだ。世界政府が珀鉛病を伝染病だと吹聴する以上、どれだけ訴えかけて病院を探し続けても双方傷つくだけだ。

ローはもう、世界を呪わなければ保てなくなるような激情を持ってはいなかった。むしろ、自分はもういいやと。そう思っていた。だって隣にはこうして、どれだけ人々に口汚く罵られ追い出されたとしても、ずっと一緒にいてくれる人がいるから。

だからもう、この人さえ傍に居てくれれば、このまま病気に蝕まれ死んでいってもいいと思えていた。もとより治ると思っていない体だ。それをわざわざ周りに騒がれてまで生き長らえたいとは思わない。そう思うほどにローは何度も世界に弾き飛ばされる日々に疲れていた。

「馬鹿言ってんじゃねぇ!」

それでも、コラソンは怒る。どれだけローが自身を恐れる医者たちに理解を示しても、ロー自身が彼らに怒ることに疲れ、諦めてしまっても、コラソンは彼らを許そうとはしなかった。諦めてはくれなかった。

「おれはわからねェ、わかりたくもねェ! あんなのは医者じゃねェ! ロー、ちゃんとした医者は、絶対どこかにいるはずだ。お前をちゃんと治してくれる医者が! だから、諦めるな!」

ひでェ夢物語だな、と思った。

だが、彼がそうやって怒ってくれるからこそ、ローの苦しみは和らげられた。

胸にじんわりとした温かさが染みて、この凍えるような冷たい世界でも、ありのままの自分でいられるのだ。

 

 

優しく、頰に何かがあたる。

頑張れ。そう、声をかけられた気がした。

多くの人に死を望まれた。

それでも、どこかに、こうして手を伸ばしてくれる人がいる。

その手の温かさを、感じた。

 

 

話し声が聞こえる。

遠くから聞こえるようだったそれが、徐々に近くなっていく。それに連れ、ローの意識は鮮明になっていった。

体が重く、鈍い痛みが続いている。頭に靄がかかったかのように意識がくらくらする。熱のせいだろう。

近くに人の気配がある。だが、不思議とローは何も警戒することなく現状を受け入れていた。遠い昔、熱を出して寝込んでいたときに、父と母がすぐ近くで会話していたような、そんな安堵感があった。

「ナミの様子はどうだ?」

「熱も下がったし、大丈夫だと思うわ。引き続き私たちでしっかり診てるから、安心して。チョッパー」

「あぁ、ごめんな。任せっきりにして。ロビンはあれから体調は悪くないか?」

「私はもう全然平気よ。チョッパーの薬は本当に良く効くわ」

ぼんやりと聞いていた会話。それが記憶を揺さぶり、現実へと意識が浮上していく。

あぁ、そうだった、とローは思い出す。ここは麦わらの一味の船の中で、おれは、敵の能力で珀鉛病を再発症したのだと。

ローは重い瞼を上げた。滲む視界の先。すぐそこに、こちらに背を向けるチョッパーと、その隣にロビンがいた。部屋は薄暗く、少しだけ埃っぽい。チョッパーの前にはローテーブルが設置されており、そこには薬品が所狭しと並べられている。その端に、ロビンは持っていたトレイからティーカップを置きながら言う。

「一人で心細くない?」

「おれは大丈夫だ! ロビンもこうやって見に来てくれるしな!」

「ふふ、頼もしいのね」

穏やかに会話する二人の姿を、まだ完全に覚醒しきっていないローはただ茫然と見る。

ふと、顔を上げたロビンの視線がローへ向かい、目が合った。

「あら」

ロビンが目を見開く。それから、ぼんやりとした、鋭さを宿さぬあどけないローの顔を見て、眉を寄せてくすっと笑った。

「ごめんなさい、起こしちゃったわね」

「えっ!?」

チョッパーがぶんっと振り向く。そのまま慌てて体をこちらへ向け、乗り出すように寄ってくる小さなトナカイに、ローは少し目を丸めた。

「トラ男! 気づいたのか! おれがわかるか!?」

困惑した様子のローは瞬きだけを繰り返している。ローは返答しなかったが、その琥珀の目にしっかり自身を映すのを見て、チョッパーはほっと胸を撫で下ろした。

「あぁ、良かった……トラ男、ずっと意識がなかったから、おれ、心配で……」

チョッパーの後ろで、ロビンもまたローを覗き込み、その表情に安堵を浮かべている。

そういえば、とローは思い返す。夢うつつに自身を治療した覚えがある。そのときも、誰かが必死に声をかけてくれていた気がする。長く痛みに苛まれていた覚えはあるが、意識が飛び飛びになって夢と現実の境が曖昧だ。だが、一人で全ての治療を終えることが適わなかったことは明白。

ローは随分と世話になったらしいと悟り、現状の理解が追いつかず、唖然とした。

ただ瞬きを繰り返すローの姿を見ていたロビンが、ふと視線を虚空へやって呟く。

「あ、起きたみたい」

その言葉に、チョッパーがロビンへと振り向く。自然とローもロビンを見上げようとし、ふと額に何かが乗っていることに気づく。重い腕を動かせば、塗れたタオルがずり落ちてきた。

「一度ナミを見てくるわね。トラ男君が目を覚ましたことも伝えておくわ。何か必要なものは?」

ロビンとチョッパーが会話を続ける中、ローはタオルを手にした自分の真っ白な手を見る。珀鉛病特有の肌の色は、やはり抜けていない。それを確認し、疑問と困惑が強くなる。

この肌の色を見ても尚、変わらぬ表情を見せていたチョッパーとロビン。

(珀鉛病のことを、知らないのか……?)

再び、ローは二人へと視線を向ける。

丁度会話を終えたのか、ロビンは微笑んで頷くと、ふわっと花びらを散らして消えた。その花びらが床に落ちて消えていく様を目で追いながら、ローは先の戦闘で真っ先に倒れた人物のことを思い出す。

「……トニー屋……」

酷く掠れた声が出て、ローは顔を顰めた。

「あ、ごめん! ちょっと待っててな」

チョッパーがすぐに吸い飲みを手にしてローの口元へと運ぶ。ローは体を起こそうとしたが、頭を上げただけで目が回った。

「だめだよ、無理に動いちゃ」

しょんぼりとした顔でそう窘められ、ローは諦めて小さく口を開いた。ゆっくりと吸い飲みが傾けられ、少量の水が入り込む。口を湿らせる程度に留め、ローは手で制そうと身じろぐ。すぐに意図を察したチョッパーは吸い飲みを傾けるのをやめた。

ローは一つ息を吐いてからチョッパーを見上げる。

「トニー屋、お前……おれに、付きっ切りになっているのか……」

先ほどのロビンとチョッパーの会話を反芻し、その結論に至る。ようやく回り始めた頭が状況を理解し始めた。

「トラ男は何も気にすんな! 今は自分の体のことだけ考えるんだ」

間髪いれずに告げられるチョッパーの言葉を、ローは聞き流して確認を続ける。

「ナミ屋も、具合、悪いんだろ」

「ロビンたちが診てくれてる。何かあったらそのときは、おれも行くし」

チョッパーはあわあわしながら言う。ローに負い目を感じさせたくないのだろう。だから心配せずに今は休めという言葉が後に続くのがわかった。

だが、ローはその言葉の本質とは別の情報へ集中する。その違和感に、僅かに瞳を振るわせた。

チョッパーは、ナミを診に行けていないのだ。彼女の容態が悪化しない限り、ロビンにずっと任せきりにするつもりでいる。確かにローは重体に見えただろうが、容態が落ち着いてる間に診に行く暇はあるはずなのに。

薄っすらと記憶にある防護服。僅かに残る悪夢の記憶。わざわざこの場に分身で現れていたロビン。それらの情報を繋ぎ合わせ、ローはまさか、と思いながらチョッパーに聞く。もう、確信に近い。だというのに、信じられない思いで。

「……トニー屋は、珀鉛病のこと、知っているのか」

チョッパーは一瞬言葉を詰まらせた。どう答えるべきか迷うチョッパーの表情を、ローは静かに見る。

「……うん、治療法の見つかってない危険な病気は、ちゃんと記憶してる」

「……。」

帽子から飛び出た耳がしゅんと垂れる。悲しげに床へ視線を落とすチョッパーの姿。そこにローを恐れる素振りはなかった。ふと、彼の頬が少し腫れていることにも気づいた。

ローは自分の予測が当たっていることを知り、目を瞬かせる。一拍おいて、体から力が抜けた。

思わず、呆れた。想像を遥かに超えた、彼らのお人よしっぷりに。

ふっと息を漏らしたローの口元は綻んでいた。

「トニー屋」

「ん?」

視線を下げていたチョッパーが、名を呼ばれてローを見る。

チョッパーの表情から、珀鉛病を発症した人々の末路を知っているだろうことも推察できた。知っていて、ローの過去を悲しんで見せている表情なのだとわかった。

ローは穏かに言う。

「珀鉛病は、伝染しねェ」

「…………えっ……?」

ローとは対照的に表情を強張らせてチョッパーは硬直する。だが、ローはチョッパーがどんな反応を示したとて、一切動揺する必要はなかった。ただ淡々と、穏やかな心持ちで伝える。

「だから……伝染を気にして、ここに篭る必要はねェよ」

「……。」

「信用ならねェか?」

黙り込んでしまったチョッパーに、ローは静かに笑う。それは嫌味な笑いなどではなく、変わらず穏やかなものだ。ローはチョッパーに一切の警戒を持っていない。持つ必要がなかった。

「いや、……そんなんじゃ、……」

ローの心情を知らないチョッパーだけが慌てて首を振り、それでもローから告げられた真実の重みを受け止めきれずに言葉を震わせている。

「ナミ屋のこと、気になるんだろ。問題ねぇ。行ってこい」

「…………トラ男……」

「万が一感染しても、ちゃんと責任とって治してやるよ」

昔、珀鉛病は伝染病ではないと、必死に訴えたことがあった。本当に、必死に。怯えと焦燥に体を緊張させて訴えた。でも、その言葉は病に怯える者たちに届くことはなかった。当然だ。彼らからすれば、命惜しさの狂言にしか聞こえなかっただろう。

自分の言葉がこの世界ではあまりに無価値なものだと思い知らされた。だから、それから一切伝えることをやめた。そんな時間があるのならば、その場をすぐに逃げ出すべきだったから。そうやって生きてきた。告げられない言葉を胸の中で叫びながら。

そうやって殺されてきた言葉を、こんなに穏やかに言える日が来るとは。

あの時は、何とか信じてもらおうと必死だった。だが、今はもう、信じてもらえなくてもいいとさえ思える。例え信じてもらえなくとも、たとえ本当に伝染病だったとしても、チョッパーはローが数え切れないほど見てきた表情を向けることなく、ローを着替えさせ、毛布をかけ、点滴を準備し、すぐ隣で看病していたのだから。

「…………そうじゃ、なくて……」

どこまでも穏やかな心情のローと対照的に、チョッパーは瞳を震わせ首を小さく振る。

「おれも、なんかおかしいって、調べてて、思ったんだ。これ、ウイルスとか、細菌とかじゃないって……でも、それって……」

「トニー屋」

チョッパーの目にはどんどんと涙が溜まっていく。どこまでも優しい小さな医者の頭を、ローは白に侵食された手を伸ばし、そっと触れる。避けられることなく、なんら気にする様子もなくその手を受け入れ涙を溜めているチョッパーの様子にローは目を細め、帽子の上からゆっくりと頭を撫でる。

その感触にチョッパーは涙が零れそうになり、そうなる前に必死に腕で拭った。チョッパーにはローがさらっと言ってのけた一言が、とても受け入れきれなかった。

だって、珀鉛病は伝染するから、自分たちの命を脅かされるから、伝染を広げないために……。そんな言い訳があったとしてもチョッパーには白い町の悲劇は受け入れがたかったのだ。それが、その病気が、伝染しない。

だったら、白い町の人々は、一体、何のために殺されたというのだ。

「……うっ……うぅううう……っ!!」

あまりの事実に、チョッパーは唸る。必死に奥歯をかみ締め、叫びだしてしまいそうな気持ちを必死に押し留める。肩を震わせ、激情に耐える。

チョッパーの目に映るローの表情は穏やかだ。でも、その裏に諦めと悲しみが滲んでいるのがチョッパーにはわかった。そして、喜びが混じっているのもわかった。チョッパーがローを迫害しなかったから。そのことに安堵している痛々しさが、苦しみが、チョッパーには痛いほどわかった。

震えるチョッパーの頭を、白い手が優しく撫で続ける。体が辛いのだろう。ちょっとした会話でも息切れしつつあるローが、それでも穏やかに微笑み、言う。

「伝染するって思いながらも、近づくような馬鹿は、お前が初めてだよ」

初めて見るローの表情に、チョッパーはついにボロボロと涙をこぼした。本当は耐えたかったのだが、無理だった。どれだけ泣いたって足りないだろうローが泣きもせずにチョッパーをあやすなんて、ダメだと思った。本当は、反対でないといけないのだと。だが、止められなかった。

ローは頭を撫でていた手を、チョッパーの頬へと移す。少しだけ腫れていた頬を、そっと撫でる。

「悪かった」

ローの記憶に薄っすらと残る防護服の者。何故か印象に残っているチョッパーの人型の顔。あれが夢の中の出来事ではなかったと悟り、ローは眉を寄せる。そして、チョッパーが何を思って防護服を着ずにここに居るのかを理解し、破顔する。

「ありがとう」

「うっ……うぅうううう!!」

チョッパーはただただ呻るように泣いた。ローの一挙一動が、全て過去の傷を物語っているようで、悲しくて悲しくて仕方なかった。ローがこうも穏やかに微笑む姿を、優しく語りかける姿を、チョッパーは初めて見た。だが、今までその片鱗は見てきた。この姿こそが、彼の本質なのだとチョッパーは断言できる。その本質を隠していたのが、この悲しい過去の傷によって生まれた瘡蓋なのだと、わかったのだ。

「ほら、一度ナミ屋を、見に行ってやれ、気になってんだろ」

幼子をあやすような、あまやかな声。苦笑交じりに告げられる言葉に、チョッパーはこくんと頷き、目を擦る。それでも、勝手に次から次へと涙は零れた。

「う、ん……すぐ、戻ってくるからな……!」

それだけ言って、タタタとかけていく優しい医者を、ローは胸に宿る温もりを感じながら見送った。

遠い昔に感じたのと、同じ胸の温もり。

愚かで愛おしい。恩人に抱いたのと同じ感想をそっと抱く。

かの恩人に無理やり付き合わされて探し続けた医者の姿が、確かにここにあった。

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Comment

  1. 彩雅 より:

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    • 内緒 より:

      彩雅さんこんにちはー! 性癖完全一致ありがとうございます!(大声) こんな偏狭の地まで起こしいただけて凄く嬉しいです! 妄想途中の拙い駄文にまで目を通していただけて嬉し恥ずかしです/// 彩雅さんの妄想の糧となれたようで、よかったです~!

      ハートが夢見る医者は、2のラストのあの部分を書きたくて書いたようなもので、一番の見せ場ともいえるような部分でしたから、そうやって文字から映像を想像して読んで頂けるの、すごく嬉しいです! 私もローの表情を色々頭に思い描きながら書いていたものですからっ! 彩雅さんが思い描いておられるものと一致しておりとても嬉しいです///

      ルフィ先輩からしたら、諦めが混じるその笑みにはもやっとくるでしょうねw もっと胸張って笑えるようにしてやる! って暴れだしてくれそうです……っ! ルフィぱいせんマジぱいせん……っ!

      あぁ~~そう、そうなんです。愚かで愛おしいは、まさしくそういう意図を込めたもので、的確に読み解いて頂けて本当に嬉しいです! ローからしたら、コラさんやチョッパーの行動は危険で、愚かに見えるんですが、でもそんな彼らだからこそ、ローは命を救われてきて、そんな彼らの愚かさが、ローにとっては愛おしくて仕方ないだろうなと……っ!
      タイトルつけるの超絶苦手人間なんで、う~んう~んって唸りながらつけたタイトルの意図も汲み取って頂けて、もう大の字でとろけてますw

      この後に関しては、8割方ご想像通りな感じになっているのでちょっと爆笑しちゃいましたw まぁ、妄想途中の方で元ネタあるので、そちらをご覧になっていらしたらほぼほぼどうなるかはわかっちゃったかもしれませんね>w< ロー君妄想して楽しんで頂けて幸いです~~!

      長文めちゃくちゃ喜び転がる人間なので、本当に嬉しいです! ありがとうございますっ! またとんでもない妄想思いついては書き散らしたりすると思うので是非お付き合いいただければとっ! 宜しければ是非是非、彩雅さんのロー君の妄想も聞かせてください~~! 大好きなんです妄想語り/////
      こちらこそ、たくさんのご感想をありがとうございます! 本当に本当に嬉しいです!

  2. 内緒 より:

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