エルレインさんの嫌がらせによってみんなでリオンの一生を見学することになった話
割られた天秤 – プロローグ
少年は必死に走っていた。まだ6歳程の小さな少年はただ我武者羅に走っていた。これから日が落ち暗くなっていく時刻に、人通りの少ない町外れの道を町側へ背をむけ一身に。その道の向こうに少年の求めるものも、少年を迎えてくれるものも […]
割られた天秤 – 1
「う……うぅ、ん………んぅっ!」 ロニはゆっくり体を起こした。 何度も経験した時空移動だが、このような緊急事態の時の移動は衝撃が激しい。 時空が歪んでいる状態で移動したのだから、仕方が無いのかもしれないが […]
割られた天秤 – 2
ハロルドとシャルティエのおかげで、恐らくジューダスと思われる人物と話す機会を得ることができた。話す場所については、彼がこの庭でいいと言い、庭の木陰に設置されているベンチのほうへと向かい、座った。 「あの…… […]
割られた天秤 – 3
光により真っ白になった視界が再び戻った時、そこは少し前に訪れた庭だった。 思わず皆窓より見えぬようにと腰をかがめる。 「おいおい……いきなり人様のお庭に侵入ってのは……やばいんじゃねぇ?」 「ご、ごめんなさ […]
割られた天秤 – 4
カイルが気が付いた時、そこは先程まで見ていたあのヒューゴ邸の中と思われる場所だった。ゆっくりあたりを見回すと彼の仲間達が同じようにその場に立っており、そして、その表情は暗い。 恐らくカイルと同じく、エミリオの幸せがある歴 […]
割られた天秤 – 5
突然少年の部屋にやってきた女性に、カイル達も息を呑んだ。 「……え?どういうこと……?」 カイルが思わず視線をやるのは、ベッドの上にある枕。 正確には少年が隠した、その枕の下に在る写真。 &n […]
割られた天秤 – 6
少年は少し俯き加減に、いつも静かなヒューゴの私室へと繋がる廊下を歩いていた。 恐らく、考えているのはマリアンとフィンレイの言葉。 頼っていいのだという、彼らの言葉に対して、どう行動していいのか。 「素直に頼 […]
割られた天秤 – 7
あれから数日、少年は城で暇が出来れば人気の無い中庭へと向かい、ただ景色を見ている。しかし、その瞳にそれらは映っていない。 フィンレイの死は大きく取り上げられ、多くの者が嘆き悲しんだ。 そんな中、毒殺の犯人と […]
割られた天秤 – 8
「……ジューダス、父さん達…殺しちゃうのかな」 リオンの背を追い、牢屋へと続く階段を下りる中、カイルはぽつりと呟く。 それにハロルドは面白くなさそうに答えた。 「殺せなかったんでしょ。四英雄は […]
割られた天秤 – 9
旅は順調に進んでいた。 スタン達からしたら、グレバムに逃げられているのだからそうとは言えないかもしれないが、あれから新たな仲間としてフィリアとそのソーディアンクレメンテが加わり、グレバムを追っている。 そん […]
割られた天秤 – 10
ハイデルベルグからダリルシェイドへと向う飛行竜。 その一室で、カイル達は悲痛に顔を歪め、立っていた。 可哀想なくらいに、震えている少年の前に、成す術もなく、ただ立ち尽くしていた。 (殺せなかった……殺せなか […]
割られた天秤 – 11
暴れたため、そこかしこが傷だらけになった部屋に、ぽつりとリオンだけが取り残される。 その少年もまた、部屋と同じように傷だらけで 『坊ちゃん……痛みませんか……?』 「………大丈夫だ」 痛まない […]
割られた天秤 – 12
スタンは中々攻めに入らない。ただシャルティエをディムロスで受け止めるだけだ。 ルーティは先ほどの会話で知った真実により、戦えるような状況ではないらしい。それをフィリアが支えている。ウッドロウもまた、戦いの中に入ってこない […]
割られた天秤 – 13
気付けば、真っ白な空間に立っていた。 仲間達も一緒だ。リアラとナナリーの頬には涙の後が残っている。 この空間の中心へと視線をやれば、エルレインが不適な笑みを浮かべてこちらを見ていた。 「さぁ、 […]